ブラックホールの知られざる姿を捉えた映画が公開!
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第604回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、4月19日から公開の『ハイ・ライフ』を掘り起こします。
乗組員は全員囚人!? 賛否両論のSFスリラー
近未来。はるか彼方、太陽系外に広がる漆黒の宇宙を、宇宙船“7”は突き進んでいた。乗組員は、生まれたばかりの娘ウィローと暮らすモンテや彼の幼馴染の少女ボイジーら9人。彼らは元死刑囚で、極刑の免除と引き換えに、同乗する女性科学者ディブスが指揮する“ある実験”に参加していた。地球を離れてから3年以上の月日が経ち、乗組員たちの精神状態は、いよいよ限界に達しようとしていた。やがて彼らの船は、目的地であるブラックホールに近づき…。
『ショコラ』『パリ、18区、夜。』など、女性監督ならではの感性で時代を切り開いて来たフランスの巨匠クレール・ドゥニ監督が発表した『ハイ・ライフ』。ドゥニ監督にとって初めて挑むSF作品で、初の英語による長編映画。
2018年トロント国際映画祭GALA部門で本作がプレミア上映されると、大絶賛とブーイングが同時に巻き起こり、会場は騒然とした空気に包まれました。「ショッキングな問題作」と評される一方、その作品性で“賛否両論”を集め、映画祭で上映されたラインナップのなかで、一、二を争う脚光を浴びた衝撃作です。
宇宙船という密室のなかで、嫉妬、怒り、欲望といった様々な人間模様がサスペンスフルに描かれている本作において、重要なキーワードとなるのが、ブラックホール。
劇中では、1969年にイギリス人宇宙物理学者ロジャー・ペンローズにより提唱された思考実験で、自転するブラックホールからエネルギーを取り出す“ペンローズ過程”を実現しようと、時間と空間が消滅すると言われているブラックホールへの接近を試みるクルーたちの姿が描かれています。
本作では、クレール・ドゥニ監督と現代アーティストのオラファー・エリアソン、そしてブラックホールのスペシャリストである天体物理学者オーレリアン・バローの参加により、ブラックホールが見事に映像化されているのです。
つい先日、国立天文台などの国際研究チームがブラックホールの撮影に初めて成功し、その姿がお披露目されたことが記憶に新しいだけに、劇中でブラックホールがどのように映像化されているのかも気になるところ。
映画ならではのアプローチにより描写された宇宙の神秘と“現実”が絶妙にリンクしたこのタイミングだからこそ、是非ともご覧いただきたい作品です。
ハイ・ライフ
2019年4月19日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国順次公開
監督:クレール・ドゥニ
出演:ロバート・パティンソン、ジュリエット・ビノシュ、ミア・ゴス、アンドレ・ベンジャミン ほか
©2018 PANDORA FILM - ALCATRAZ FILMS
公式サイト http://www.transformer.co.jp/m/highlife/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/