須田慎一郎が斬る今回の参院選~組織票の限界を見た
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月22日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。今回の参議院選挙で、これまでの選挙とは違う側面が出て来たことについて解説した。
今回の参院選をどう見るか
今回の参議院選挙で自民公明両党、それに日本維新の会の改憲勢力は国会発議に必要な3分の2以上の議席を3年ぶりに失った。一方、投票率は過去2番目に低い48.80%。れいわ新選組やNHKから国民を守る党、いわゆるN国党は初めて当選者を出し、政党要件を満たしたということも報じられている。この選挙結果、リスナーはどう見るのか? 意見を広く紹介して行く。
組織的な運営が機能しなくなっている
飯田)いろいろな論点がありましたが、愛知県知多郡からいただきました“ことゆうパパ”さん、35歳の方です。「参院選、与党勝ち切れずという印象です。東北で弱かったですね。しかし野党も国民民主党の比例代表の礒崎氏が当選しましたが、自動車総連の推薦で当確がこんなに遅れるとは。国民の弱さと労連の弱さ、両方が見えた結果だと思いました」。
須田)労組、組織票は1つの大きな塊だったはずなのですが、なかでもいちばん組織数のある自動車総連に限界が見えて来たのかなと思います。あるいは労働組合の締め付け、組織的な運営が機能しなくなっていて、組合員ではあるけれども違った人に投票しているケースが出ているのか。この辺は、労組も全部チェックした方がいいかもしれません。
飯田)愛知にお住まいということで、当然トヨタ自動車という大きな会社がある。その労組という身近なところから“ことゆうパパ”さんもメールをくださったと思うのですが、取材してみると「選挙のときに頼りになるのは、日教組と自治労だけなのだ」と、企業系は締め付けの部分が難しく、全員が全員というわけには行かないところがあるようです。
須田)今回の参議院選挙で大きな特徴の1つを挙げるとすると、もともと参議院は衆議院と違って、かつては組織票の勝負だったのですよ。ところがそれが通用しなくなって来ている。それがはっきりとしたのが、今回の選挙だったのではないでしょうか。もう1つは、先ほども取り上げた武見敬三さん。本来なら医師会がバックについているのですから、もっと票を上積みしてもよかったはずなのですが、今回はギリギリ。このあたりも組織力の弱さが見えて来たのかなと思います。
飯田)たびたび引き合いに出されますが、広島で落選した溝手顕正さん。県連を挙げてのバックアップということで言うと、組織は締め付けるわけですよね。
須田)今回は党本部から、横から手を突っ込まれたので少し違うのですが、広島の件で言うと与党側の驕りがあった。あまりにも野党が弱いから、自民党のなかで内ゲバが始まってしまったのかな。前回の統一地方選挙も含めて、選挙区内での与党側の驕りが目についたなと思います。
政治的恩恵を失った東北の自民党離れ
飯田)与党が1人区で負けた東北、こちらは岩手の“べがった”さんからメールをいただいています。「自公の与党が勝ったけれど、東北は野党が4つ取れたのはどうしてなのでしょうか。あと、選挙特番で宮城の石垣のりこさんの紹介で、FM仙台と紹介していましたが、地元では『Date fm』と呼ばれているので違和感を感じました」。
社名はFM仙台ですけれど、呼称としてDate fmと。例としてはTOKYO FMと言っているけれども、TFMと呼ばれているのと同じようなものだそうです。
須田)先ほどの組織票のようですが、農協はかつては自民党の集票マシーンでした。その農協自体が、必ずしも自民党を推しているわけではないというところになって来たのかなと思います。
飯田)個別で農家に対して所得補償を旧民主党が主張し、それを原動力にして政権交代まで行ったとも言われています。あのぐらいから変わって来たのでしょうか?
須田)そうですね、あれが大きなターニングポイントとなりました。東北の農家には、米価が所得収入に直結するのです。これをかつての自民党は右肩上がりで上げて来た。昔はベトコン議員というような、米価を上げることだけを使命とした国会議員がいたのです。でもいまやそんな時代ではなく、マーケットメカニズムによって決まるような形で、政治的な恩恵はない。殆どが米作農家ですから、その収入が増えて行かない、むしろ減って行く。さらには後継者難ということで、農家農民の自民党離れというものも1つ伺えるのではないでしょうか。
飯田)比例代表はまさに組織票だと先ほどおっしゃいましたけれど、野党は労組がバックで、一方で自民党は特にそうですが、各業界団体がバックにいる。農政連が推している候補で、確か山田俊男さんがそうだと思うのですが、今回は21万6623票。いちばん取った郵政から出ている柘植芳文さんが60万あまりを取っているわけで、そう考えると農政連の力も落ちて来ているのかなと思いますが。
須田)どんどん落ちていますよね。ですから農協改革に乗り出して反発も受けた。その一方で、農協自体の力も落ちているところが大きくあるのではないですか。農協の力とは何かと言うと、地元に対する影響力です。そういう点で落ちて来たのかなと思います。
飯田)結局その意味では、いままでだったらメスを入れようとすると「選挙で落ちるかもしれない」と思っていたのが、それほどの抵抗もないから「やれる!」ということになって来ているのでしょうか?
衰えが見えるのは公明党もしかり
須田)比例区だけの問題ではないのです。特に参議院の選挙区における候補者は、後援会組織や支援団体を持っているわけではありませんから、衆議院の議員とは若干色合いが違います。そうすると、組織の票が底だまりからどんどん上積みされて行って、浮動票を幾分取り入れて当選というパターンを描きます。でもいまは、底だまりの部分が消えてなくなっている状況です。東北の1人区で勝ち切ることができないのは、そこに理由があるのです。
これは衆議院選挙にも影響して来ます。衆議院議員だって自前の後援会組織はあっても、一方で決め手にはならないものの、組織票をドンドン積み上げるという選挙戦をやるわけですから。今回の組織の力の衰えというものは、衆議院選挙にも大きな影を落とすことになるのではないでしょうか。
飯田)衆議院選挙の場合、1~2万票の差が大きく左右する。そうするとますます公明党頼りとなる。今回、公明党は議席を伸ばす一方で、自民党は議席を減らした。これは公明党の発言力がますます強くなるということでしょうか?
須田)ただ公明党も支援団体の高齢化によって、なかなか選挙戦が、かつてのような一枚岩でワークしているわけではありません。後援会組織である創価学会、これがF戦略をとって、一枚岩となって圧倒的に応援して行くというやり方をとっていたものが、ここ最近衰えているかなという感じがします。
飯田)今回は重点にした兵庫が、最後の最後に取りました。まだ組織が動いている部分があるけれども、小選挙区の衆議院選挙では一部の有力議員でも落としたと。神奈川などでも例がありました。
須田)兵庫は大阪と並んで常勝関西と言われているところですから、もっと楽々と当選しなければダメですよ。そういう意味では、兵庫は神戸市役所の前にデカい創価学会の建物がありますから、それだけ大きな力を持っていたはずなのですよ。それがあのタイミングでの当選ですから、私は非常に強い違和感を覚えました。
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