「水府提灯」の奥深さ~インテリア用に海外での需要も

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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

「鈴木茂兵衛商店」の水府提灯

提灯の生産地として有名な、茨城県水戸市。江戸時代からの長い歴史を持つ水戸の提灯は「水府(すいふ)提灯」と呼ばれ、最近はインテリアやアート作品としても注目されています。

きょうご紹介するのは、創業150年の老舗で昔ながらの製法を受け継ぎ、40年以上も提灯作りを続けている職人さんのストーリーです。提灯作りの魅力と、定年後、再び現場に戻った理由とは……?

提灯づくりの道40年以上、山下義弘さん

江戸時代、水戸藩に仕える下級武士たちが、生活を支えるために提灯作りを始めたのが発祥と言われる「水府提灯」。提灯はまだ電気がなかった当時、庶民の日常生活に欠かせないものでした。提灯作りはやがて水戸藩の奨励産業となり、水府提灯は江戸の街でも広く使われるようになりました。

現在も水戸で、水府提灯の製造を続けている老舗が、慶応元年創業の「鈴木茂兵衛(もへえ)商店」。ここで江戸時代から伝わる製法を受け継ぎ、毎日提灯を作り続けているのが、この道40年以上の山下義弘さん・65歳です。

当初は東京の印刷会社に就職したという山下さん

「私は、まっすぐこの道に入ったんじゃないんですよ」と言う山下さん。茨城の高校を卒業後、東京の印刷会社に就職しました。

3年ほど経ったある日、隅田川沿いにあった工場が群馬に移転することになり、山下さんは「東京に居られないなら茨城に帰ろう」と、会社を辞め実家へ。

しばらく家でぶらぶらしていたという山下さんですが、そこへやって来たのが、鈴木茂兵衛商店の先代社長でした。山下さんの実家は、提灯の取っ手の部分を製造して鈴木茂兵衛商店に収めており、その関係で先代社長はよく山下さんの家に出入りしていたのです。

「鈴木茂兵衛商店」外観

「山下くん、遊んでいるんだったらどうだろう? うちに来て提灯を作ってみないか?」

提灯の「ちょ」の字も知らなかった山下さんですが、いつまでも遊んでいるわけにはいかないと思い、鈴木茂兵衛商店に入社。まずは社長が紹介してくれた職人さんのところに1週間住み込んで、提灯作りの基本工程を学ぶと、その後は実家の離れを作業場にして、注文が来た提灯をどんどん作って行きました。

「この世界は基礎を覚えたら、あとは数をこなして、体で提灯作りを覚えて行くんです」

「一本掛け」の提灯は職人の腕の見せどころだという

昔ながらの「一本掛け」の製法で作る提灯も、水戸名物の1つ。通常の提灯は、竹ひごを長く螺旋状に巻き上げて外枠を作って行きますが、「一本掛け」の提灯は、輪にした竹ひごを1つ1つ糸でしっかりと結んで行くので、とても頑丈な構造になっています。

「その代わり手間暇がかかりますから、そんなにたくさんは作れません。提灯職人にとって、一本掛けは腕の見せどころなんです」

素材の1つ1つが大切になる提灯作り

提灯作りの世界も高齢化が進み、一本掛けの提灯が作れる職人さんも、わずかになっています。山下さんもその1人。いい提灯を作るには、技術は勿論ですが、いい素材を選ぶ眼力も必要だそうです。

「竹ひご、糸、表に張る和紙…提灯はすべて自然のものを使っていますから、素材の品質が均一じゃないと、仕上がりが凸凹してしまうんです。そこがいちばん難しいですね」

退職後も社長から再度声をかけられ復帰へ

実は山下さん、60歳のときに定年を迎え、いったん退職。かねてから興味のあった蕎麦打ちを学んで、お店を出そうと準備中でした。しかし退職して3年後、現在の社長が山下さんの家を訪ねて来ました。

「会社に戻って来てくれないか? 一本掛けのいい提灯を作れるのは、あなたしかいない」…山下さんは言います。「嬉しかったですね。いまはパートという形ですが、すぐに復帰を決めました」

定年退職した後も、蕎麦打ち修業のかたわら、休みの日に提灯作りを続けていたと言う山下さん。ブランクはほとんど感じなかったそうで、いまも難易度の高い一本掛けの提灯を製作しています。

丸みのあるフォルムが可愛らしい「とり」提灯

お盆やお祭りでの需要は減っていますが、鈴木茂兵衛商店では、有名デザイナーと組んでアート風の提灯を作るなど、インテリア用の照明として世界にPR。海外からも注文が来るようになりました。山下さんが最近作った大きな一本掛けの提灯は、ニューヨークの和食店に飾られています。

「伝統を守るには、10代~20代の若い人たちが入って来ないといけない。手が動く限り、新しいことにも取り組んで、提灯の世界をもっと発展させて行きたいですね」

「提灯の世界をもっと発展させたい」と語った山下さん

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

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