“トカゲのしっぽ切り”中国政府への不信感~習近平指導部、新型肺炎対応の誤り認める

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月4日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。新型肺炎の感染拡大について解説した。

急ピッチで建設された武漢火神山医院が2日、解放軍医療チームに正式に引き渡された。病院は3日から患者の診療を始める。習近平(しゅう・きんぺい)中国共産党中央委員会総書記の委託を受けた孫春蘭(そん・しゅんらん)中国共産党中央政治局委員・国務院副総理の率いる中央指導小組が病院の施設や設備などを視察した。(武漢=新華社記者/陳曄華)=2020(令和2)年2月2日<新華社/共同通信イメージズ> 写真提供:共同通信社

新型肺炎、中国の死者490人~感染者は2万人超え

新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった人の数は4日、65人増えて490人になったと中国当局が発表した(※放送後の発表数値)。また、中国本土での感染者は2万人を超える事態となっている。

森田)肺炎を引き起こす新型コロナウイルスに感染した人の数は、中国本土で2万人を超えました。香港では肺炎にかかっていた39歳の男性が死亡し、中国本土以外で死者が確認されたのはフィリピンに次いで2人目、香港では初の死者となりました。中国の武漢市周辺では、感染が確認された人や感染疑いの人を一部病院に収容できていない状況が続いているようです。中国共産党の習近平主席ら共産党の最高指導部は3日、会議で「一連の対応で至らない部分が明るみに出た」と認めました。こうした姿勢は異例で、初動対応の遅れに対する社会の強い不満を無視できなくなった形です。

中国・北京で建国70周年記念軍事パレードに参加する(前列左から)習近平国家主席、江沢民元国家主席、李克強首相(中国・北京)=2019年10月1日 写真提供:時事通信

中国国内の現状~政府に不満を募らせる民衆

野村)政府に対する不信感がよりいっそう不安を掻き立てているところはあると思います。習近平国家主席の発表自体は、裏読みする必要があると思います。というのも、結果的には現場の人が悪かったという話になっているのですよ。つまり、中国政府そのものが全体として悪かったというよりは、初動が悪かったと言っているのです。要するに、現場の対応が悪かったと。結局は、中国政府中枢というより現場のトカゲのしっぽ切りにつなげようとしているという見立てもあるのです。情報開示のような、本当の意味で政府そのものがしっかり取り組んでいかなければならないことについては、反省しているのかどうかわからない部分があります。

森田)地方政府に責任を押しつけるようなところがあるのかもしれませんね。

野村)事態は相当厳しいので、誰かが責任を取らないといまの状況は克服できないというところまできていると思います。

森田)武漢市以外にも温州市で2日から8日までの間、市民の外出は生活必需品などを買う場合に限って2日1回まで、1世帯につき1人までというような移動制限もしている状況です。温州市というのは商人の街で、武漢市と往来する市民が多いらしいのですが、どんどん不自由なところも増えてきているようです。

野村)結果的に、いまの状況は武漢を中心としてどんどん感染が広がっていき、医療従事者の数が足りない状況になっています。そして、肺炎にかかった人たちが放置されていたり、対処療法が十分に行われていなかったりということが生じて、死者の数がどんどん増えます。今回は新型ですから、特効薬がありません。そうすると、自分の体に抗体ができるまでの間安静にしてもらったり、点滴の対処療法のようなもので封じ込めていく作業が必要になります。これは患者さん1人1人の様子を見ながら丁寧にやっていかなければいけません。ところが、手が回らないということが死者の数が増えている原因だと思うのです。

Wikipedia「ダイヤモンドプリンセス (客船)」より

横浜沖のクルーズ船内で検疫実施~感染経路はわからず

森田)横浜の大黒ふ頭沖に3日夜から停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内では、乗客、乗員3,700人を対象とした大規模な検疫作業が続けられています。検査結果が判明して全員の検疫が終わるのは4日中ということで、それまでは全員が船内待機するということです(※編集部注:5日朝までに31人の結果が判明、うち10人のウイルス感染が確認された)。厚生労働省によりますと、船内に残っている乗客や乗員については原則として14日間、客室などで待機してもらう方針だということです。これについて加藤厚生労働大臣は、閣議後の記者会見で次のように述べています。

 

加藤厚生労働大臣)当該の臨船検疫には時間を要しております。乗員、乗客を含めて3,700人ということです。現在もその対応が続いていると承知しております。乗員、乗客の健康状態の確認を最優先で取り組みにいきたいと思っております。できる限りスピード感を持って、丁寧にやらなければいけません。

 

森田)これは乗客だった香港人の80歳男性が、クルーズ船から下船した後の香港で感染が確認されたために検疫作業を行っているということですが、このクルーズ船は当初5日以降に横浜港を出港するとしていたのですが、運営会社は検疫に時間を要していて、クルーズ船の運航中止を判断したということです。

野村)クルーズの人気があるのは、ご高齢の方でもいろいろな場所へ移動していけますよね。自分で荷物を降ろさずに、ホテルにいながら観光できる形になるのです。普通の鉄道や飛行機だと、降りてからホテルまで荷物を運ばなければいけません。次のところへ移動するにも荷物を運ばなければいけないのですよね。どうしてもクルーズ船の場合にはご高齢の方が多いのですよ。そうなると、重症化する可能性のある方がそこにおられたということなので、丁寧な対応がよりいっそう求められるということはあると思うのです。私も仕事で「飛鳥」という船に乗ったことがあるのですが、ここでご高齢の方同士が仲良くなるのですよね。お食事の際にお隣になられた方に声をかけたりして、次はあのイベントへ一緒に行きましょう、という形でどんどん仲良くなっていくのが楽しみの1つです。そうすると、接触度が高くなりますから、しっかりと検疫していただかなければいけないという気がします。

森田)それから、厚生労働省はこれまでに武漢市からの渡航歴のある方を検査の対象にしていたのですが、これを湖北省全体に広げて滞在歴も拡大しています。安倍総理大臣は、4日の衆議院予算委員会で今後の中国での患者の動向次第では、湖北省に滞在歴のある外国人の入国拒否の対象地域を拡大することも検討する考えを示しています。

野村)アメリカなどの国は、中国へ渡航歴のある外国人は入れないというようにしていますよね。湖北省だけでいいのかという問題は指摘されています。今回の国の対応はかなり法律に比べるとやや踏み込んだ対応をしていることは確かなのですが、やはり状況に合わせて対応を広げていかなければいけないと思います。

森田)全日空は2月10日から3月29日まで成田~北京路線を運休します。日本航空も2月17日から3月28日まで成田~北京を結ぶ路線などを運休することを発表しています。どんどん渡航してくる人が減っていく状況ですね。

野村)日本経済に与える影響もあると思うのですが、クルーズ船で香港に行ってから感染の判明した方は中国への渡航歴があると言われていますが、必ずしも武漢へ行ったということは確認されていません。そうすると、いったいどこで感染したのか。日本国内で感染した可能性もあります。そこも含めて慎重に感染経路を解明していくことを最優先にして欲しいです。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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