ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月10日放送)に拓殖大学教授・ジャーナリストの富坂聰が出演。新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案の閣議決定について解説した。
新型コロナウイルス特措法案を閣議決定
政府は10日の閣議で、更なる新型コロナウイルスの感染拡大に備え、緊急事態宣言を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案を決定した。既に与野党で合意していることから13日に成立する見通し。
森田耕次解説委員)10日も新たに回転寿司チェーン「スシロー」兵庫県丹波市の店舗のアルバイト従業員が新型コロナウイルスに感染していたことがわかりました。この従業員は30代の男性で、2月16日に大阪市内でのライブイベントに参加していました。男性が勤務していた丹波市の「スシロー氷上店」は店舗の消毒作業を実施し、一時的に店舗を休業しています。また兵庫県尼崎市は、伊丹市のデイケア施設に勤務する尼崎市内の50代男性介護士と、施設を利用している80代の男性が感染したことを発表しました。新潟市は、市内在住の男性3人が新型コロナウイルスに感染したことを明らかにしました。兵庫県姫路市でも新たに男女2人が感染。兵庫県内の感染確認は合わせて18人で、更に増えているという状況です。姫路市で感染が確認されたのは、8日感染が発表された女性看護師が勤務する病院の同僚の女性看護師と60代の男性の入院患者ということで、院内感染ではないかとみられています。こうしたなか、政府は10日の閣議で更なる新型コロナウイルスの感染拡大に備え、緊急事態宣言を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案を決定しまして、これを国会に提出しました。自民、立憲民主両党の合意によって、改正案は13日に成立する見通しです。2013年に施行された新型インフル特措法の適用対象に新型コロナウイルス感染症を追加するということで、感染が全国的かつ急速に蔓延した場合には、総理大臣が緊急事態宣言を行います。国民生活や経済に甚大な被害を及ぼすという判断をしたということのようですね。
富坂)よく言われることですが、強い権限があるので、報告でいいのか、きちんと事前承認を取るのかということが焦点になっています。
森田)野党側は国会の事前承認を要求しているようですね。
もっと新型コロナウイルス対策を議論すべき
富坂)こういう問題に対して政局にしてしまうということがコンセンサスでなければ問題はないと思います。気になっているのは、コロナウイルスの対策会議が少ないと思うのです。中国のテレビを見ていると、毎日どこかでトップが会議をして何かを発信しています。中国の場合、トップは習近平氏だけではありません。7人の政治局常務委員がいて、それぞれに持ち場があって、全部が会議をしています。我々が息苦しくなるくらいに情報が降ってくるので、消化するのが大変なくらいなのですよ。深いところまで指示して対応しているので、それからすると専門家会議というのも頻度が低いと思います。
森田)9日には開かれたようですが、毎日開いているわけではないですね。
富坂)中国は間違いなくやっています。中国は苦しんだ分だけ得ているノウハウがあるので、そこを見て日本のシステムを変えていくのは大事だと思います。武漢が落ち着いてきて、李克強氏も入り口に行って、落ち着いてきたタイミングで国家主席も行きました。だいたいの災害対応はそういう風になっています。武漢の空港を管理している企業集団があるのですが、10日から通常勤務をするようです。16日から短い航空路線を運行する努力をするという通知も出されました。また、14あった臨時病院の数を13減らして、いまは1つだけです。いまは指定病院だけで回せるようになっているので、ずいぶんと状況は改善しているのですよね。報道も面白いので、隠蔽したことなどが晒されるのですが、具体的に何をどういう風にやったのかということがまったく出てこないので、ちゃんと見ておく必要があると思います。
森田)メールもいただいていまして、所沢市の“レオのたてがみ”さん54歳の男性の方から「中国の研究チームが、「武漢市の閉鎖が5日間前倒しなら感染者は3分の1に抑えられていた。逆に、5日間遅れていたら感染者は3倍に増えて30万人以上が感染した可能性があった」と発表しています。富坂さんは医療の専門家ではないでしょうが、武漢市封鎖の判断についてどう思われますか?」といただいています。
富坂)こういう報告はいっぱいあって、確かにそうだと思います。ただ、政治的に武漢規模の都市を封鎖する勇気はなかなか持てないと思います。だから、早いか遅いかは別として、よく封鎖したと思います。移動の自由を制限するのはできると思いますが、完全な封鎖ですから。前代未聞のことをやったわけで、ご指摘の通り何日か早くすることはできたでしょう。ただ、このときは病気そのものがあまりわかっていなかったので、そういう意味ではこんなものだと思います。ただ、海鮮市場は1月1日に閉めているので、あれは早かったと思います。
森田)武漢は大きな街で、ハブ空港だと言われていました。空港が少しでも再開すると、経済的にもいい状況になる可能性はありますね。
富坂)メニューを区切って、ここの段階でこれをやるというものを持っています。国情が違うのでなかなか参考にできないことはありますが、症状によって隔離を分けたり、体育館などは全部臨時病院にしたりしたのですよ。今回は使わなくてよくなったので、それを全部閉めています。そういったやり方は参考になるのではないかと見ています。
外出自粛の可能性はあるのか~判断は難しい
森田)特措法についてもメールをいただいていまして、荒川区の“けんた”さん51歳の方から「この特措法に「都道府県知事による外出自粛要請」というものがあります。この場合の外出自粛は、どの範囲を指すのでしょうか。仮に、買い物などの外出自粛となった場合、それを察知して事前に食料の買い占めが起こるのではないでしょうか。ただでさえマスクやトイレットペーパーの買い占めが大きな問題になっているなか、食料買い占めになったらそれこそパニック状態になるのではないでしょうか」といただきました。
富坂)やってみないとわからないということですが、でも要請は要請ですからね。中国では出歩いたら刑事罰ですから。
森田)そこが違うところではあります。
富坂)それでも出る人はいるし、マスクをしないで喧嘩する人はいるので、それだけきついことをやってもなかなか統制が取れないというところです。
森田)日本の場合には緊急事態宣言が可能だとは言っても、なかなか出すタイミングは難しいのかもしれませんね。
富坂)地域や国の体力をなくしてしまうと、立ち直るときが大変です。コロナウイルスの対策は出口まで含めてやらなければいけないので、経済と社会生活をめちゃくちゃにして退治しました、ではだめなのです。シャットアウトは1つの解なのですが、体力を奪ってしまうようなシャットアウトまではできないので、政治決断は大変だと思っています。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。