山田孝之、変幻自在のカメレオン俳優までの道程

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第805回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

その演技の幅広さから、カメレオン俳優とも呼ばれている山田孝之。

1999年に俳優デビューし、「WATER BOYS」(2003年)でドラマ初主演。映画初主演作『電車男』(2005年)は、社会現象にもなりました。最近では、Netflixで配信された「全裸監督」での怪演が記憶に新しい方も多いかもしれませんね。

その一方で『デイアンドナイト』でプロデューサー業に徹するなど、“わが道”を突き進む稀有な存在として注目を集めています。

そこで今回は、山田孝之の出演作と共に、現在に至るまでの道程を辿って行きます。

山田孝之、変幻自在のカメレオン俳優までの道程

※写真はAmazonより

純愛系から極悪非道なクズ役まで、その変貌に驚愕!

闇金融の世界をリアルに描いた真鍋昌平の同名人気漫画を実写化した『闇金ウシジマくん』シリーズ。

2010年にスタートしたTVシリーズを経て、2012年に劇場版Part1、2014年には続編となる劇場版Part2が公開。その後、2016年にPart3とザ・ファイナルが2ヵ月連続で劇場公開され、人気を博しました。

デビュー当時は、正統派の若手イケメン俳優として青春ドラマの主人公を演じ、キラキラと輝いていた山田孝之。いえいえ、もちろん現在も正統派のイケメンで、キラキラとしたスターオーラの持ち主なのですが…。『クローズZERO』のあたりからでしょうか、アクの強い個性的な役どころやワイルドなキャラクターを積極的に演じるように。

なかでも『闇金ウシジマくん』シリーズでは、冷静沈着で物怖じしない、裏社会の修羅場を乗り越えて来た生粋のアウトロー・丑嶋馨を精密に演じ、まさにハマり役となりました。

山田孝之、変幻自在のカメレオン俳優までの道程

※写真はAmazonより

同世代の“若手イケメン俳優”とは明らかに一線を画した存在として異彩を放ち始めた山田孝之。その時期の出演作のなかで外せないのが、『ミロクローゼ』です。

出演者のすべてがマネキン人形のブラックコメディ・ホームドラマ「オー!マイキー」で一世を風靡した石橋義正監督が手がけた、三部構成のラブファンタジー。

主演の山田孝之は、金髪おかっぱ頭の外国人、片目の浪人、愛の伝道師という3役を熱演。それぞれに強烈なキャラクターを振り切って演じきっており、その表現力の高さには、ただただ圧倒されるばかりです。

本作は、2011年の「ニューヨーク・アジア映画祭」オープニングで 上映され、山田孝之がライジング・スター賞を日本人として初受賞したことでも話題となりました。

山田孝之、変幻自在のカメレオン俳優までの道程

※写真はAmazonより

「山田さん、仕事選んで下さい(笑)」と、SNSなどでファンからの愛あるツッコミ(?!)が話題になることからわかるように、多くの人が山田孝之のユニークな仕事ぶりに魅了されています。

ディープな山田孝之ウォッチャーも、テレビドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」を観たときには、度肝を抜かれたのではないでしょうか。

本作は、清野とおるの「ウヒョッ!東京都北区赤羽」に感銘を受けた山田孝之が赤羽で過ごした2014年の夏の記録を、ドキュメンタリー風ドラマ(モキュメンタリー)にしたもの。メガホンを取った山下敦弘監督いわく「山田孝之の崩壊と再生を描く映像作品」なのだとか。

その言葉に象徴されるように、短パンにTシャツ姿で無精ヒゲを生やした彼が赤羽の人々と交流する様子は、良く言えば“自分探し”、言葉を選ばず言わせてもらえば「山田さん、どうかしちゃった?!」という印象。

しかし、観るほどに没入感を覚えてしまうのは、やはり俳優・山田孝之の存在感と魅力があってこそですね。

山田孝之、変幻自在のカメレオン俳優までの道程

※映画『ステップ』より

さて、山田孝之の映画最新作は、重松清の同名小説を映画化した『ステップ』。

30歳の若さで妻に先立たれた男性とその娘・美紀が、彼らを取り巻く人々との交流のなかで成長して行く姿を描いた、ハートウォーミングストーリーです。

山田孝之が演じたのは、妻亡きあと、男手ひとつで娘を育てる主人公・健一。本作では実年齢とも重なる等身大の男性、しかも、初のシングルファザー役に挑戦。

エキセントリックな役柄のイメージが浸透しているなか、こうした繊細なキャラクターを細やかに演じられるのも、役者としての懐の深さゆえでしょう。

 

<作品情報>

■闇金ウシジマくん(2012年、2014年、2016年)
企画・プロデュース・監督:山口雅俊
原作:真鍋昌平(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
脚本:福間正浩、山口雅俊
主題歌:Superfly(ワーナーミュージック・ジャパン)
出演:
<Part1>
山田孝之、大島優子、林遣都、崎本大海、やべきょうすけ、片瀬那奈、岡田義徳、ムロツヨシ、鈴之助、イケメンゴレンジャイ、金田明夫、希崎ジェシカ、内田春菊、市原隼人、黒沢あすか、新井浩文
<Part2>
山田孝之、綾野剛、菅田将暉、木南晴夏、門脇麦、窪田正孝、高橋メアリージュン、中尾明慶、窪田正孝、希崎ジェシカ、バカリズム、大久保佳代子、キムラ緑子、マキタスポーツ、本仮屋ユイカ、光石研、柳楽優弥、崎本大海、やべきょうすけ
<Part3>
山田孝之、綾野剛、本郷奏多、白石麻衣、筧美和子、最上もが、マキタスポーツ、山田裕貴、前野朋哉、矢野聖人、児嶋一哉(アンジャッシュ)、さくらゆら、岸井ゆきの、水澤紳吾、山下容莉枝、大杉漣、藤森慎吾(オリエンタルラジオ)、浜野謙太、高橋メアリージュン、崎本大海、やべきょうすけ
<ザ・ファイナル>
山田孝之、綾野剛、永山絢斗、真飛聖、間宮祥太朗、YOUNG DAIS、最上もが、真野恵里菜、太賀、狩野見恭兵、湊莉久、天使もえ、マキタスポーツ、玉城ティナ、六角精児、モロ師岡、安藤政信、八嶋智人、高橋メアリージュン、崎本大海、やべきょうすけ

■ミロクローゼ(2012年)
監督・脚本・美術・編集・音楽:石橋義正
音楽:久保田修、生駒祐子、清水恒輔、
主題歌:ONE OK ROCK 「LOST AND FOUND」(A-Sketch)
出演:山田孝之、マイコ、石橋杏奈、原田美枝子、奥田瑛ニ、鈴木清順、佐藤めぐみ、岩佐真悠子、椿かおり、武藤敬司

■山田孝之の東京都北区赤羽(2015年)
Blu-ray&DVD発売中 デジタル配信中
監督:松江哲明、山下敦弘
原作:清野とおる「東京都北区赤羽」「ウヒョッ! 東京都北区赤羽」(原案)【双葉社】
脚本:竹村武司(構成)
オープニングテーマ:スチャダラパー「中庸平凡パンチ」
エンディングテーマ:山田孝之「TOKYO NORTH SIDE」
出演:山田孝之、綾野剛、大根仁、やべきょうすけ、吉井和哉、清野とおる、赤羽の住人たち(「ちから」のマスターと悦子ママ、ジョージさん、赤澤さん、マカロニのマスター、赤羽の母、鷹匠の大和田さん、斉藤さん)

■ステップ
近日公開
監督・脚本・編集:飯塚健
原作:重松清「ステップ」(中公文庫)
音楽:海田庄吾
主題歌:秦基博「在る」(AUGUSTA RECORDS/UNIVERSAL MUSIC LLC)
出演:山田孝之、田中里念、白鳥玉季、中野翠咲、伊藤沙莉、川栄李奈、岩松了、日高七海、角田晃広、片岡礼子、広末涼子、余貴美子、國村隼
(C)2020映画「ステップ」製作委員会
公式サイト https://step-movie.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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