尾﨑治夫東京都医師会会長~現場は闘える道具がないままに闘っている
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月3日放送)に慶応義塾大学教授の松井孝治が出演。東京都医師会会長、尾﨑治夫を電話ゲストに招き、新型コロナウイルスに関する医療現場の状況について解説した。
緊急事態宣言が出た場合、東京都は外出自粛指示に変更へ
小池都知事)これについては指示という形になります。自粛には変わりはないのですけれども、国と共に自粛するという形になることによって、みなさんの危機意識・ご協力の意識を高めていただければと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大により国が緊急事態宣言を出した場合について、東京都の小池都知事は2日、「外出自粛要請から指示という形になる。国と共に外出自粛ということで、ご協力の意識を高めてもらえれば。週末、夜の外出をお控えいただきたく、ぜひ協力を」と呼びかけた。
飯田)新型コロナも含めて、特別措置法では総理が政府として緊急事態宣言を出した後に、外出自粛の要請が都道府県知事の権限でできるということですが、指示をして行動を縛るというのは、法の規定としてはなかったと思うのですが。
松井)強制力はありません。ですから緊急事態になったとしても、フランスなどは罰則で担保していますが、日本の場合はそれができないので、協力待ちという状況には変わりません。
政府に強制力はなく、あくまで国民からの「協力待ち」
飯田)最初に新型インフルエンザ等対策特別措置法がありました。当時、松井さんは政府のなかにいたそうですが、権利をどうするかということで相当揉めたのですか?
松井)日本の政府は官僚主導などと言われていて、私も役人でしたが、政府の力が強いように思われています。でも実は、強制力という意味ではあまり強くないのです。昔、成田空港で闘争があったときに、ピケを張られてなかなか排除できないということがありました。日本社会は空気を読む力が強いのですが、本当に強制力があるかというとそうではなく、指示を出したときに「当然協力していただけますよね、日本人なのだから」という、協力待ちというところがあるのです。
飯田)そのあたりの空気の調整も含めて、都知事はこういう発言をしたのかも知れませんね。
松井)そうだと思います。
飯田)ではその医療現場がどうなっているのか、東京都医師会会長の尾﨑治夫さんにつないで、お話を伺いたいと思います。尾﨑会長、おはようございます。
尾﨑)おはようございます。
飯田)この週末はお天気もよさそうなのですが、この間の連休のようになってしまってはいけないわけですか?
尾﨑)まったくいけないと思います。かなり厳しいです。
飯田)感染者は2日、都内で97人と発表されましたが、医療現場はベッド数も含めて逼迫しているような状況でしょうか?
違う病気の疑いで運ばれた人が新型コロナ感染者でスタッフに感染
尾﨑)そうですね。例えば、名前は言えませんが中央区にある有名な病院や、新宿区にある有名な病院などの感染者を受けているところでは、いまが限界だということです。これ以上は無理なので、東京都医師会として対策を練って欲しいという連絡をいただいています。ご存知のように、慶応大学病院や永寿総合病院は院内感染で機能不全になっていますが、同様の病院が今後は続出すると思います。いままではコロナの疑いの人を振り分けて、その人をコロナ専門のところが見ていたわけですが、現実には、一般の二次救急病院にコロナだとわからない形で、例えば心不全ではないかといって運ばれて来た人が、実はコロナに感染していた。そうやって病院のなかで、スタッフに感染することもあるわけです。
飯田)脚本家の宮藤官九郎さんが、まさにそうでしたよね。腎盂炎で運ばれて、検査したらコロナだったということが判明した。こういう例が出て来ているわけですね。
尾﨑)そうですね。ご本人はそういった自覚がまったくないまま、いつの間にか感染しているという状態があるのと、そういう方は自覚がないですから、いろいろなところに移動します。そういう病院に、別の体調不良で来る人が増えているわけです。大変な事態になっているなというのが、私の正直な印象です。
飯田)体調不良で来る患者さんは、普段のかかりつけのお医者さんに来るから、東京都医師会の会員の方々がいちばん矢面に立つというわけですよね。
尾﨑)そうですね。いままでは、不安な方は相談センターにという話でしたが、かかりつけ医や我々のような組織が相談に乗ってあげて、しっかり対応するということも必要です。また、今後の問題として重症例が増えているので、その人たちをきちんと見られる体制を再度立て直す必要があります。
飯田)軽症の方はホテルに収容するということが、新聞に掲載されています。具体的に1000室くらいを用意という報道もありますが、東京都医師会としては、こういう作戦も練っているのですか?
尾﨑)そうですね。そういう体制をつくるために、東京都と毎日綿密に連絡を取り合っています。医師会の方で、その運営をしています。ホテルを確保してもらっているのですが、そこに軽症者の方や症状がない方を移した場合、その方たちを診るシステムをどうつくるかということを、東京都と相談しているところです。
医師のマスクやガウンが足りない現状~今後はオンライン診療なども
松井)尾﨑先生のお話を伺っていて気になるのは、診察・治療行為をされるお医者さんが、防護できる状態なのかということです。実際に慶応義塾大学の品川の病院でも、総合病院との関係で院内感染した医療従事者が出ていますが、一般のかかりつけ医の方々が、疾病の感染予防を充分できているのかどうか。あるいは日経新聞に出ていますが、従来は認められなかったオンライン診療が今回、部分的に解禁されるという話があります。その辺りも含めて我々が信頼し、治療していただくお医者さんの感染防止がどこまでできているのか、教えていただけますでしょうか。
尾﨑)どうすれば感染を防げるかということについては、医師ですし、普段から感染症専門の先生以外の人もかなり勉強していますので、それはできていると思います。しかし実際には、マスクやガウンなどの防護具が足りない状態になって来ています。戦争に例えれば、闘える道具がないまま闘ってくれというようなことを、国に言われているわけです。それは非常に困ります。今後はオンラインや電話という、直接触れない形で診療して行くことが感染予防につながりますから、例えば慢性の病気で通われている患者さんで、安定しているからお薬だけ欲しいとか、そういう対応もしなくてはいけません。コロナの疑いがある人についても、若い方だとパソコンなりスマホなりを自由に使える方は多いですから、そういう方はオンライン診療をしてもらうということも考えて行きたいと思っています。
飯田)いまのスキームだと、初診からオンラインは難しいということになっていますが、その辺も一部は考えなければならないフェーズになりますか?
尾﨑)疑いのある人は初診だけ来いということになれば、そのときにまた感染の機会ができるわけです。ですから初診も含めてオンラインでやって、画像を見ながら、情報も問いながら診察をして、これはおかしいと思ったときにきちんと診る。あるいは、いろいろなところに相談するという方が現実的かもしれません。
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