緊急事態宣言延長~政府は犯した過ちを自覚しているのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月1日放送)に元航空自衛官・評論家の潮匡人が出演。政府が方針決定した緊急事態宣言延長について解説した。
緊急事態宣言、5月末まで全国で延長へ
安倍総理大臣は4月30日午後、自民党の二階幹事長らと総理官邸で会談し、5月6日に期限が切れる新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を延長する方針を伝えた。政府は5月4日の対策本部で延長を決定する見通しだ。延長幅は5月末までの25日間、対象地域は全都道府県とする方向で最終調整をしている。
飯田)昨夜(4月30日)、安倍総理は総理官邸で記者団に対し、こう表明をしています。
安倍総理)5月7日から、かつての日常に戻ることは困難と考えます。ある程度の持久戦は覚悟しなければならない、率直にそう申し上げなければならないと思います。
飯田)政府は専門家会議をきょう開いて、そのなかでいまの状況や医療体制、接触機会8割削減の達成状況、感染状況などの見解を公表するということです。緊急事態宣言が延長されると、いろいろなところに影響が出ますね。
政府は対応が遅かった上に、見通しが甘く間違った判断をした
潮)残念ながら、予想通りの展開になってしまったと思います。総理は持久戦を覚悟するとおっしゃっているわけですけれども、これを戦争に例えるなら、短期決戦で勝利を収めるという展開でなければならなかったわけです。しかし、私は1月から申し上げているのですが、政府の対応は一貫してトゥー・リトル・トゥー・レイトであった。そしてずるずると緊急事態宣言の発令になり、その段階でも5月6日までと政府としておっしゃったにもかかわらず、延期されることになってしまった。どんなに好意的に見ても、5月6日までという見通しは甘かった。その時点の判断に誤りがあったことは間違いないわけですから、昨日(4月30日)のニュースを聞いて、どれだけ多くの人が絶望感に打ちひしがれたのでしょう。それについて政府はどこまで想像ができているのか、私は怪しいなと思います。
もっと強力な措置をして今度こそ短期決戦を目指すべき
飯田)一方で、商売されている方はいっぱいいらっしゃって、甚大な影響が出る。補正は成立しましたけれども、自粛を要請するならば補償もきちんとしろという声は、いろいろなところから出ています。この準備ができていたのかというところは問われるべきですよね。
潮)まったくできていなかったのだろうと思いますし、政府は一貫して、休業の補償は法的にもできないのだと。あくまで協力金であり、そういう位置づけだとおっしゃっているわけですけれども、実務を担う自治体の現場はそんなことを言っていられないということで、それぞれ財力に応じて給付金などが検討され、あるいは一部で支給されています。この現状を見ると、もはや地域間の格差が東京を頂点にものすごく広がっている。今後は地域ごとの実情に合わせて議論しなくてはならないものを、このまま全国一律、または一括でずるずると宣言を延長するのは、政府の政策として根本的に間違っているのではないかと思います。
飯田)緊急事態宣言そのものの法律的な効力については、だいぶ議論されていましたけれども、そもそも要請であって、強制は基本的にできないというのが今回の立て付けです。要請であるから補償もしないというロジックになっていますけれども、いい加減こういうところを変えて行かないと、全部が空気のなかで行動するというような、日本的と言ったら日本的かも知れませんが、これを続けていていいのですかね。
潮)振り返ると、中国の武漢が閉鎖されたのが1月23日でした。そこから2ヵ月~3ヵ月は十分な時間があったわけです。ところが日本政府のやったことは、野党と一緒になってではありますけれども、新型インフルエンザを想定した法律の適用を、解釈上できないと見解を表明しました。今回の事態を加えるという形で、いまの法律を使っているわけですけれども、もともとは民主党政権下にできた法律なので、あまり私権の制限には踏み込んでいないという問題がいろいろ指摘されています。本来なら私権を尊ぶべき保守の陣営が、私権制限にもっと踏み込むべきだと言い、野党側が正反対のことを言うという奇妙な現象が起きているわけです。隣の台湾の例を見ても、政府がより強力な措置を取ることは立憲主義に反することではないので、緊急事態宣言を続けるならもっと強力な措置にして、今度こそ短期決戦を目指して欲しいと思います。
飯田)私権の制限は各国やっていて、適切だったかどうかは後でもう1回検証するという仕組みが整えられている国が多いです。日本として、そこを取り入れることはできないのかと思うのですけれど。
潮)そうなのです。日本の大きな間違いは、平時の論理や発想でこの3ヵ月を過ごしてしまった。他の国は最初から有事の論理で危機管理をしている。だから初動に全力を投入して、欧米などでは一部制限を緩和させているわけです。それが本来のあり方だと思います。これが最後のチャンスだと思いますので、今度こそより強力な措置で短期決戦を目指していただきたい。こんな弱い武器で持久戦を覚悟と言われても、あなたたちと一緒に闘いたくないと率直に思います。
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