新型コロナウイルス対策で求められる“新しい取材様式”の模索

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「報道部畑中デスクの独り言」(第192回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、新型コロナウイルス対策で変化する取材環境について---

経団連・中西宏明会長の「ぶら下がり取材」 従来は各社のマイクを束ねて行っていた(2020年1月28日撮影)

新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が、5月25日に全面的に解除されました。4月7日の宣言発表から1ヵ月半あまりでの解除。この日の夕方、「次なるステージに力強い一歩を踏み出す」と述べた安倍総理大臣には、長いトンネルを抜けた“つかの間の落ち着き”が感じられました。

ただ、諮問委員会に出席した専門家からは「次のステップに入りましょうということ」(川崎市健康安全研究所・岡部信彦所長)という声がありました。数々の“条件”が付与された宣言解除と言えましょう。

その条件とは「新しい生活様式」を定着させながら、段階的に活動を再開させて行くということ。おおよそ3週間ごとに地域の感染状況の評価という“メンテナンス”を行いながら、外出自粛やイベント開催制限の要請などを段階的に緩和して行くということになります。

一方、全世界の国・地域を対象にした入国規制については、段階的緩和は検討されているものの、6月以降も継続される方針が示されています。渡航中止勧告の対象は111ヵ国に上っています。今後、秋から冬となる南半球での感染も懸念され、世界全体ではまだまだ気を抜けない状況です。

また、先に観光庁が発表した4月の訪日外国人旅行者は2900人、去年(2019年)の4月から何と99.9%の減少でした。インバウンド需要を見込んだ「観光立国」の戦略は根本から見直す必要があるでしょう。これは来年(2021年)に延期された東京オリンピック・パラリンピックにも大きくかかわって来ます。

経団連・中西宏明会長 3密を避けるため、「規制線」を張っての「ぶら下がり」となる(2020年5月22日撮影)

安倍総理は会見でコロナ対策の補正予算は第一次、第二次を含め事業規模が200兆円を超える見通しを示しました。足元について給付金、助成金など一刻も早い金銭的支援が必要なのは言うまでもありません。

同時に、国内だけでなく世界的にヒトとモノの停滞が当面続くなか、新たな産業構造を創りだして行くことも課題となります。経団連の中西宏明会長は記者会見で「新たな需要をつくり出すため、ビジネスモデルを変えて行かなくてはいけない」と述べました。緊急事態宣言は全面解除となりましたが、今後、政府だけでなく私たち国民も知恵を出して行かなくてはなりません。

ところで、新型コロナウイルスの感染拡大は私どもメディアの取材環境も大きく変化させました。記者会見場は会見室から一回り大きな講堂やホールに。記者は1社1人というような人数制限をしているところもあります。オンラインやインターネットによる記者会見も増えて来ました。そして、これまた変わったのが「ぶら下がり」と呼ばれる取材です。

ラジオ局は「音が命」、取材では少しでも良い音で収録できるようさまざまな工夫をしていますが、そのなかでスマートフォンに使用する「自撮り棒」を活用していることは以前、小欄でもお伝えしました。

伸ばせば1m以上にもなるこの棒にICレコーダーとガンマイクを取り付け、遠方の音を収録するのですが、このアイテムがここへ来て思わぬ大活躍をしています。

「ぶら下がり取材」では「自撮り棒」が活躍している(写真中央の棒)(取材対象者は川崎市健康安全研究所・岡部信彦所長 2020年5月4日撮影)

ちなみに「ぶら下がり」と言われるのは、取材対象者が歩いている最中に、記者(主にペン記者)があたかも対象者の腕に「ぶら下がっている」ように見えるためです(もちろん、実際にはぶら下がってはいませんが)。

ただ、カメラやマイクを伴う場合、対象者は通常、立ち止まって記者の質問に答えます。記者が対象者を囲む形になるので「囲み」とも呼ばれます。なお、対象者が取材を受けたくないときは、記者やカメラ、マイクが追いかける形になるため、混乱もまれに起きてしまいます。

「ぶら下がり」は対象者を囲むため、当然、現場は「3密」になります。これを避けるために記者は2m程度の距離を置きます。ではマイクは…通常は記者が対象者を中心に広がって各社がマイクを向けるか、束ねた各社のマイクを代表の記者が持つ形をとるのですが、いずれにしても3密は避けられません。

そこで、ブームスタンドにマイクを設置したり、対象者に声が聞きやすいように別途スピーカーを用意したりしています。そして収録時にはガンマイクも使用しますが、その際に、この自撮り棒が大いに役に立っているというわけです。

緊急事態宣言は解除されたものの、3密を避けるための取り組みは今後も続きます。「新しい生活様式」が提唱されていますが、メディアも「新しい取材様式」としてさまざまな工夫を凝らして行くことになるでしょう。

以前お伝えした通り、取材は「フェイス・トゥ・フェイス」「現場第一」が基本。これを押さえた上で、感染防止の危機意識を保ち、取材にあたって行きたいと思います。(了)

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