アナウンサーが教える“オンライン見映え”のコツ
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フリーアナウンサーの柿崎元子による、メディアとコミュニケーションを中心とするコラム「メディアリテラシー」。今回は流行のオンラインの会議について---
【オンライン飲み会の登場】
「乾杯!」と自宅でパソコンのモニターを前に、ビールを注いだグラスを掲げる。このような光景を話題にする人々が増えました。いわゆるオンライン飲み会です。
4月に全国で非常事態宣言が発出され、私たちは外出を自粛し、密閉、密集、密接の3密にならないように生活しなければならなくなりました。こうしたなか、突然「Zoom」「Teams」「Hangouts」などのオンライン会議のツールが注目され始めました。
IT知識があまり高くない私は、無料通話のSkypeさえも必要性を感じていませんでした。それが立て続けにZoom飲み会、Zoomセミナー、Zoom会議と3回も体験することになったのです。
ウィキペディアによると、Zoomは2011年にアメリカに誕生した企業で、ナスダック市場にも上場しています。Teamsはマイクロソフトのオンライン会議システム、HangoutsはGoogleが提供するシステムです。
【見映えがいまいち】
“外出しなくてもパソコンやスマホで一度に多くの人とつながり、リアルの世界のように会話ができる”……これはまさに求められているものでした。というのは、新年度がスタートしたからです。
学校に通っている子供たちや学生は、家から出ずに授業を受けなければなりません。オンライン会議システムは、突如出て来たニーズにぴったりはまったシステムでした。
あまりに急速だったために安全面などの問題点も見えて来たようですが、GW明けから本格的にオンデマンド型の授業が始まるということで、私も大急ぎでキャッチアップしました。ところで、すでにオンライン飲み会をやってみた、簡単なセミナーに参加してみた人は、こんなことを思いませんでしたか?
「見映えがいまいち」「部屋がちらかっている」「自分がいけてない」
そこで今回は、「ちょっと気を付ける見映えのコツ」と題してお話します。
【無防備にカメラの前に座らないで】
まず、スマホを使うか、それともパソコンか……という問題です。映りに関してはスマホの解像度がかなり高いと感じました。ただ、サイズがしっくり来ません。縦なのか横なのかで違いもありそうですし、両側に黒の帯がでてしまうようなので、気持ちの悪い方はパソコンがよいでしょう。
さて、見映えで大切なポイントは次の4つです。
(1)PC・スマホの位置
(2)明かり
(3)背景
(4)あなた自身
順番に解説して行きます。まずは「PC・スマホの位置」ですが、PC内臓のカメラの配置は、距離と高さに気を遣う必要があります。無防備にパソコンやスマホの前に座ってしまうのはNGです。
目線と同じ位置にカメラのレンズを持って来てください。パソコンの下に本や辞書を置いて本体を上げるか、椅子を低くすることをお勧めします。決して下から見上げるサイズにはしないようにしましょう。二重顎に映るだけでなく、参加者からは偉そうに見えます。
そして本体を60センチ以上自分から離し、胸から上が映る距離に設定しましょう。免許申請の写真や履歴書のイメージ。これでアップは避けられます。
【バーチャル背景で安心】
次に「明るさ」の調整です。部屋が暗いとカメラ映りが悪いので、明るい部屋がベストです。窓を背にするのではなく、窓に向かうと光が自分の顔にあたり、ライトの役目を果たします。
夜の場合は、ライトのすぐ下にいると顔に影ができてしまいますので、ライトに向かうように陣取りましょう。レフ版の代わりに白の模造紙を壁に貼り、壁に向かって座る方法もほんの少し効果があります。
3つめの「背景」については、バーチャル(仮想)にするのが流行りのようです。いろいろな壁紙があるので「バーチャル背景」と検索してみてください。ディズニーやゲームのポケモン、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の部屋もポップですし、ニッポン放送内のスタジオも楽しいと思います。
1990年代に『進め!電波少年』というバラエティ番組がありました。この番組ではクロマキーという画像合成の技術が使われていて、司会者は緑の服を着て出演し、背景に画像を投影させて、顔だけが浮いた風船のようにあちこちに漂っていました。オンライン会議のシステムでは、緑の布を背景にすれば好きな映像を簡単に投影できるようなので、お試しください。
ただし、緑色は私たちの肌色と真逆の色に分類されているため、顔色が悪く見えます。映りを気にする場合はむしろ白い壁がお勧めです。クリーム色でも構いません。もし余裕があれば、観葉植物や花があるとアクセントになります。
加えて、白い背景は着るものを選びません。どんなものを着ていても無難に仕上げてくれますので、シンプルな白めの場所を背景にしましょう。
洋服で1つ気にかけたいのは、リラックスしすぎないことです。本当にいつも着ているものを着てはいけません。だらしなく見え、生活感が出てしまいます。さすがにスーツを着る必要はありませんが、襟があるもの、ハリのある生地の洋服がよいでしょう。
【いつもの2倍盛りで】
最後に、何よりこれが重要かもしれません。あなた自身が全てを普段より大げさに表現するようにしましょう。
オンラインでは肌感や空気感が伝わりません。小さい箱のなかでは、表情がほぼ見えないと言っても過言ではないでしょう。ですから、笑顔は2倍で、頷きも「やりすぎかな」と思うぐらい盛っても全く違和感がありません。反応することは大事なコミュニケーションのポイントなのです。
そして普段よりも大きめの声を出し、話すときは音程を意識しましょう。ドレミファソラシドの音程を全て使うつもりで、「すごい」=ド・ミ・ドではなく、ド・ソ・ドの音程です。いや、ド・ド(1オクターブ高い)・ドでもいいと思います。今回ご紹介した、よいと思う価値観はすぐに変わって行くかもしれません。また研究してみます。
松山市でビールの醸造販売を手掛ける「DD4D BREWING」は、オンライン飲み会の参加者に事前にビールを届け、オンラインで一緒に味わってもらう飲み会を企画しました。みんなで同じビールを飲んで、味や香りを共有できるなんてすばらしいアイデアです。これはリアルの代替手段ではなく、新しい営業ツールとも言えるかもしれません。
新型コロナウイルスをきっかけに、次の展開を考えることは希望が持てます。頑張りましょう。(了)
連載情報
柿崎元子のメディアリテラシー
1万人にインタビューした話し方のプロがコミュニケーションのポイントを発信
著者:柿崎元子フリーアナウンサー
テレビ東京、NHKでキャスターを務めたあと、通信社ブルームバーグで企業経営者を中心にのべ1万人にインタビューした実績を持つ。また30年のアナウンサーの経験から、人によって話し方の苦手意識にはある種の法則があることを発見し、伝え方に悩む人向けにパーソナルレッスンやコンサルティングを行なっている。ニッポン放送では週1のニュースデスクを担当。明治学院大学社会学部講師、東京工芸大学芸術学部講師。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修士
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