面倒な下処理ナシ!? “仕組み”で作る最短最強の「魚料理」を紹介
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元漁師・元官僚で魚食普及人の上田勝彦さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送・毎週月曜・金曜 朝5時25分頃)に出演。“魚料理は面倒くさい”というイメージを覆す、家庭で簡単においしく魚を食べる方法を紹介した。
上田さんは、陸上にはない世界、水の中の生き物に惹かれて長崎大学水産学部に入学。在学中は漁師として活動し、周囲の漁師たちの後押しもあり、国家公務員試験を受けて91年には水産庁へ入庁。資源開発センターなどで公務に従事したのち、2015年退職。退職後は圧倒的な知識で魚の魅力を伝える「魚の伝道師」として活動を展開。3月には「情熱大陸」(TBS系)でその奮闘を特集された。
■魚の臭みは「水」で流して取る!?
上柳:上田さんは『ウエカツの目からウロコの魚料理』という本を出されていますが、魚料理のレシピ本ではなく、魚料理を“仕組み”で捉えてもらうための本だと。
上田さん:1レシピの暗記は、1料理しか生まないんです。でも、仕組みを1つ理解すると10も20も料理を生みます。この本を書くにあたっていろいろと検証したら、理にかなっていないことが昔から行われていたんです。例えば、多くの方が『うま味が逃げてしまうから、魚は水で洗ってはいけません』と教えますが……
上柳:スーパーで買ってきた魚の柵なんかは、流水で3秒パッと水で流して、その水分をササっと取るだけで魚の臭みが取れる――と、上田さんの本には繰り返し書いてありましたね。
上田さん:流水3秒、そして素早く拭く!
上柳:その拭くものも、キッチンペーパーに限らず、水分をよく吸い取るような布でOKと。
上田さん:そうですね、布なら何回も使えますから、キッチンペーパーではなくていいんですよ。魚を水で洗って、うま味が逃げるのか? という話に疑問で、水を入れたボールに魚の切り身を入れて、1時間後に飲んでみても、出汁は絶対に出ないんですよ。実は水が魚の細胞に入っていくので、だから料理したら水っぽくなるわけです。
上柳:魚を水洗いすると、水っぽくはなるけど、うま味が逃げているわけではないんですね。
上田さん:そう! もし、水っぽくなったら塩をひと掴みかけて、3秒洗えば元に戻ります。
上柳:魚が生臭いな~と感じたら、水で3秒洗い流し、それでもダメなら塩をかけて3秒、それでもダメだったらお酒を3秒浸すと。
■カルパッチョの作り方を仕組みで覚える
上田さん:カルパッチョって、理にかなっているんですよね。(1)「塩」でガツンと締めて、雑菌の原因である水分を脱水します。(2)切った魚に、殺菌作用のある「柑橘の酸」をかける。(3)合わせる「野菜」や「ハーブ類」は解毒作用がある。(4)「黒コショウ」も解毒作用があるから振る。(5)仕上げにオリーブオイルをかける。オリーブオイルはコーティングしてくれるわけです。
上柳:オリーブオイルって、コーティングの役だったんですねえ。
上田さん:だからカルパッチョは、3段4段とロックがかかっている料理なんです。
上柳:なるほど。工程には意味があって、それをちゃんと理解していればいろんな料理に応用できるいうことですね。
上田さん:レシピを暗記する方が楽かもしれませんが、仕組みをじっくり理解した方が息の長い料理ができるし、人にも教えやすくなりますよ。
■最短最強の魚料理
上田さん:料理には五法あって、生、煮る、焼く、蒸す、揚げるといった5つの調理法があります。この中で、水で煮ることを茹でると言いますが、「“ゆで魚”を食べたことはありますか?」と聞くと、意外となかったりする。
上柳:ゆで魚かぁ……。
上田さん:「湯煮」という料理があって、切り身魚にうす塩をして、沸騰したお湯にお酒をちょっと垂らしたところに入れ、1分~2分茹でる。これは、その魚の個性がよくわかるし、どの味付けでも食べられる。
上柳:「湯煮」、初めて聞きました。
上田さん:これは北海道の網走地方の郷土料理からエッセンスをもらったものです。湯煮はどんな魚を使ってもよくて、イワシ、タラ、マグロも全部、この湯煮のトンネルを通すと、ちゃんとをおいしくなって出来上がります! さらに、好きな味付けもできるから、食べ飽きないですよ。
上柳:煮るときに気を付けることはありますか?
上田さん:沸騰したお湯の中に入れた後、“再沸騰させない”ことです。グラグラ煮ると出汁が出ちゃうんです。魚を入れた後は沸騰しないように火加減の調節をして、1~2分茹でてください。
■「湯煮」の味付け
上柳:とにかく、魚を入れた後は沸騰させない。煮た後はどうするんですか?
上田さん:和洋中、いかようにでも!「和」ならネギを刻んでポン酢をかける。唐辛子をかけてもいい。
上柳:う~ん!
上田さん:「洋」は例えばタラを湯煮したら、温かいうちにサッとバターを塗って塩か醤油をたらして、最後にハーブをちぎって入れて、コショウをふったらOK。
上柳:うまそうですねー!
上田さん:「中」だったら、ニンニク、生姜、ネギ、シソを刻んでボールに入れて、そこに醤油と酒、豆板醤、ゴマ油を入れて……それっぽくすればいいんです。
上柳:ほお~! 湯煮なら、調味料で和洋中、いかにしても魚がおいしく食べられるのですね。
上田さん:これは僕が伝えている料理の中でも、最短最強の料理!
日本は島国で、東西南北あらゆる種類の魚を食べられ、世界的にみても奇跡のように恵まれた漁場がある。そんな所で暮らしながら、魚を食べないというのはひどく勿体ないことではないだろうか。「何でこのタイミングで塩をふるのか?」「酒は何のために入れるのか?」そういった仕組みを少し押さえるだけで、料理上級者の素材だと思っていた魚を、簡単においしく調理できるかもしれない。
上田勝彦さんと、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHPから、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/