厳しい経営続く日産 期間限定のパビリオンで見た新型車
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「報道部畑中デスクの独り言」(第201回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、厳しい経営のなか発表された日産自動車の新車「アリア」について---
来年(2021年)3月期通期決算の見通しが6700億円の最終赤字となった日産自動車は、今年3月期決算の6712億円に続く、2年連続の巨額赤字です。
いわゆる「ゴーン体制」の拡大路線のしわ寄せによる競争力低下に、新型コロナウイルスの影響が追い打ちをかけた形となりました。
「非常に厳しい内容だが想定していた」
日産の内田誠社長は今回の決算見通しについて、厳しいながらも淡々とした表情で分析しました。
その上で、「新車における売上・利益を出して行くことが重要」と述べ、固定費の削減の他、新型車の投入によって業績回復を目指す考えを示しました。やはり、魅力的なクルマがカギを握ります。
その新型車ですが……6月に発表された「キックス」に続き、7月15日にはSUV(スポーツ多目的車)の「アリア」の発表会がありました。
ワールド・プレミア=世界初披露となった舞台は、横浜市の日産本社から数分の場所にある期間限定のスペース「ニッサン パビリオン」。オンラインによる発表会となりました。
内田社長は「日産車の魅力がすべて詰まっている。私たちの決意が表れている」と自信を見せました。
電気自動車は、ギアを介して回転を上げて行くエンジンと違い、アクセルオンで一気に加速できるのが魅力。0~100km加速は5.1秒で、フェアレディZに匹敵するそうです。
2つのモーターを使った4輪駆動システムは、これまで培った電動化技術と、GT-Rの4輪駆動制御技術の融合。バッテリーも薄型となり、水で冷やす温度調整機能も採用したということです。これによって、充電性能も向上しました。
日産自慢の運転支援技術「プロパイロット2.0」も最新のもの。新たに日本の準天頂衛星「みちびき」を活用したシステムになっているそうです。アマゾン・アレクサも導入。家の照明やエアコンをクルマから操作でき、地図情報も無線で更新できるということです。
「CASE」と呼ばれる自動車の次世代技術のうち、C=コネクテッド、A=自動運転技術、E=電動化を詰め込んだ車両に、技術者の鼻息も荒い発表会となりました(もう1つのSはシェアリング)。
発表会では変更された日産のロゴマークも披露されました。「至誠天日を貫く」……円の中央を横一線が走るデザインはもちろん踏襲しながら、平面的でシンプルなものに。NISSANの文字がやや横長になったのは、レトロな感じもします。「しなやかなロゴ」とは、内田社長の言です。
そのオンライン発表会が開かれた「ニッサン パビリオン」は、期間限定で8月1日にオープン。なかではアリアの体験乗車などもできます。消毒や検温に留意しながら、人々の列ができていました。
後席から見たアリア、ダッシュボードには約12インチの大型ディスプレイが、中央から運転席側に並べて配置。中央の画面は手でスワイプすることにより、運転席側へと瞬時に移動できます。
寸法は全長4595mm、全幅1850mm、全高1655mm、いわゆる「Cセグメント」に属しますが、最大20インチのタイヤやデザインの影響からか、やや大きな印象をもちました。
1850mmという幅は、日本の道路事情に合うのか(同じCセグメントのエクストレイルは、全長4690mm、全幅1820mm、全高1730mm)。また、実質購入価格は約500万円から……これだけの内容でこの価格は大いに戦略的ですが、技術のショールーム的な位置づけにもみえるクルマ、果たしてどれだけの量販を見込んでいるのか……その戦略も気になるところです。
発表会では「新たな時代の電気自動車のフロントランナー。日産の描く未来そのもの」と締めた内田社長。未来感いっぱいの新型車ではありますが、発売は来年の中頃。やや肩透かしを食らった感もあります。
どんな乗り味でしょうか。1年後(コロナ後と言ってもいいかもしれません)の自動車市場がどうなっているのか、そして日産自身がどうなっているのか……モヤモヤした気分のなか、日産の今後を見守ることになります。(了)