【ペットと一緒に vol.211】by 臼井京音
埼玉県で5頭のチワワをはじめ、2羽のウサギ、10匹のハムスター、アキクサインコと暮らす、内藤さん夫妻。それぞれ性格が違い、育て方に苦労した時期もあったと言います。
今回は、そのにぎやかなペットライフを紹介します。
ウサギから始まったペットとの生活
迷子犬の大福くんを発見して飼い主の新井さんに連絡をした、内藤さん夫妻。その娘の理紗さんは動物病院で15年間、動物看護師として働いているそうです。
当時中学生だった理紗さんの希望もあり、内藤さん夫妻が初めてペットとして迎えたのは、ウサギでした。それ以降、20年近くウサギと暮らし続けていると言います。
「ウサギは感情表現が少ないなどと、よく言われます。でも、一緒に暮らしてみるとそんなことはありません。うれしそうな表情をして喜ぶし、悲しいと涙を流して泣くんですよ。そして、慣れれば自分から寄って来て甘えるような仕草もします。感情がよく伝わって来て、とてもかわいいですね」と、妻の三恵子さんは微笑みます。
ウサギと仲よくできるチワワ?
内藤さん家族は、10年ほど前に念願の犬も迎えました。
「ウサギや鳥やハムスターなど、動物に囲まれて育った娘がすでに動物看護師になっていたので、どの犬種が飼いやすいかを相談しました。すると、チワワを薦められました。小型犬でも骨折などのケガが少なくて、力が弱い女性でも制御が効くので、しっかりトレーニングすればいいコに育つだろうと。こうして、ブリーダーさん経由で“めい”がやって来ました」
ドッグトレーニングに関する知識も持つ娘さんの努力の甲斐もあり、めいちゃんは内藤さん夫妻ともすぐに信頼関係を築いたそうです。
その約1年後、内藤さん家族は違うブリーダーのもとから“るな”ちゃんを迎えました。
「真っ白で豊かな被毛に魅了されました。るなは、警戒吠えや要求吠えなど、まったくしないんです。クンクンと意思表示をする程度しか鳴きません。最初の何年か、ワンッという吠え声を聞かなかったんですよ」とのこと。
その後、娘さんは結婚してめいちゃんを連れて引っ越しましたが、内藤さん夫妻のもとにはレッド&ホワイトの毛色のまなちゃん(現在7歳)、同じくクリーム色のちまちゃん(現在4歳)が仲間入り。内藤家はさらににぎやかになりました。
「4頭のチワワのなかで、ちまだけは他の動物に対しても寛大で愛情深いんです。なめてあげたりと、ウサギやアキクサインコの世話を焼きたがるのですが、インコのるびはちまから逃げています(笑)」
半年かけて抱っこ散歩と社会化
他の動物たちとも仲よくできるちまちゃんですが、三恵子さんは育てるのにとても苦労したと言います。
「娘の結婚など家庭環境の変化がある時期に迎えたので、子犬の割に留守番時間が長くなってしまったせいもあるのでしょう。ちまは社会経験をあまり積めないまま、1歳に。もともと怖がりな性格だったのかも知れませんが、警戒吠えをしたり、ブルブル震えて散歩中に立ち止まってしまったり……。このままでは、怖いものが多すぎてかわいそうな犬生になってしまうと思いました」
そこで三恵子さんは毎日、ちまちゃんだけを抱っこして散歩に出て、車を見せたり、にぎやかな通りを歩いたりしました。ちまちゃんにとって恐怖を感じる対象が少ない公園では、リードをつけて歩かせたそうです。
「これを半年間、続けました。すると次第に、他の人や犬やものに警戒して吠えることも減り、外でもしっぽが上がるようになりましたね」
こうして、ちまちゃんは遅ればせながらの社会化を終えました。いまでは、先住犬たちと同様に余裕のある表情で散歩を楽しんでいるそうです。
末っ子は、子犬の学校へ
約1年前に、5頭目のチワワのねねちゃんが家族の一員に加わりました。
「ちまの社会化で苦心した経験があるので、ねねは、週1回のペースで犬の学校に通わせました」
ねねちゃんは、その子犬の幼稚園のような施設で、他の犬との遊びや、ドッグトレーナーによるトレーニングなどを楽しく行ったそうです。その成果があり、しっかりと社会性を身に付けられ、自分の振舞いにも自信を持てるおおらかな成犬になったそうです。
現在、5頭となったチワワたち。夫婦2人で行けないとき、夫の和高さんはリード引きで5頭一緒に、あるいは数頭ずつ2回に分けて散歩をしているとか。
「私がひとりのときは、みんな一緒にドッグカートに入れて公園まで向かいます。途中、さすがに5頭もチワワが固まっていると目を引くのか、『わぁ~! こんなにたくさん』とか、『かわいい!』と声をかけられることも多いですね」(三恵子さん)
散歩から帰って来ても、ウサギやアキクサインコのるびちゃんもいて、内藤家はいつもにぎやか。
「全身が深いピンク色をしているアキクサインコは、インコのなかでもおとなしい性格で知られているんですよ。夕方になると元気が出て来ますが、昼間は枝に止まってボーっとしています(笑)。部屋に放してもバタバタと飛び回らず、トコトコと歩く方が好きみたい」
そんなるびちゃんに、理紗さんは輪投げを教えたとか。
「くちばしで輪っかを咥えて、ポールに入れたり出したりするだけなんですけれどね(笑)。一生懸命やっている姿は、見ていて飽きません。みんな個性的で、本当にかわいいです」
隣家に暮らす理紗さんの家庭では、最近はジャンボ錦華鳥の繁殖販売やパンダマウスの繁殖も行っているそうです。めいちゃんとねねちゃんは夜間だけ理紗さんのもとで過ごしているので、いまでもお互いに行き来が盛んで、動物たちの話題が絶えないと言います。
迷子になった大福くんの飼い主である新井さんが言うように、確かに大福くんは内藤家のなごやかな雰囲気に誘われて、庭先までやって来たのかも知れません。
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。