フロリダ州、ペンシルベニア州が最大の注目州~米大統領選 首都ワシントンからレポート

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月4日放送)に東京外国語大学教授で国際政治学者の篠田英朗が出演。投票が開始されたアメリカ大統領選の現在の状況について、産経新聞ワシントン支局長・黒瀬悦成を電話ゲストに迎えて解説した。

フロリダ州、ペンシルベニア州が最大の注目州~米大統領選 首都ワシントンからレポート

11月1日、米大統領選が大詰めを迎え、フロリダ州で演説する共和党のトランプ大統領(左)とペンシルベニア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカ大統領選投票開始~首都ワシントンは厳戒態勢

アメリカ大統領選挙の投票が現地時間の11月3日の朝から始まった。共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領の争いに対し、全米各地では、それぞれの候補の支持者同士の衝突や選挙後の混乱など、不測の事態に備えて厳戒態勢となっている。

飯田)世界中が注目するアメリカ大統領選挙ですが、その後も含めて注目されています。

篠田)この選挙の混乱、緊張を、超大国アメリカが乗り切れるかという性格を帯びている選挙だと思います。

飯田)アメリカ社会の強度が問われているのですね?

篠田)おっしゃる通りです。私の専門は、アフリカにおける紛争問題や平和構築についてです。10月末にコートジボワールで大統領選挙がありましたが、以前から内戦があり、選挙の度に揉めています。アフリカの大統領選挙はだいたいそうですが、いまも難民が出ています。これはアフリカの話ですが、アメリカでは起こらないという保証はありません。同じような視点でアメリカの大統領選挙を見ると、どちらが勝つかということよりも、不測の事態のときにどういう治安行動を起こしたらいいのかということがあるのではないでしょうか。国連の職員に対しても、不要な外出は控えるということが治安上の意味から起きています。

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2020米大統領選 バージニア州の投票所で、投票受け付けに向けた準備を進める関係者ら=2020年11月3日 写真提供:産経新聞社

静かな雰囲気のなかでの投票

飯田)現地ではどういう状況なのか、産経新聞ワシントン支局長の黒瀬悦成さんに電話をつないで様子を伺いたいと思います。黒瀬さん、おはようございます。いまのワシントンの雰囲気はいかがですか?

黒瀬)間もなく投票が終わるのですが、投票所の周辺は、有権者の人が集まっている以外は静かです。ホワイトハウスの前に「ブラック・ライヴズ・マター」を訴える人たちが集まっていますが、いまのところは平和的なデモを展開しています。

飯田)一部には投票箱を放火するなど、過激なところが報じられることもありますが、いまのところ現地は落ち着いているということですか?

黒瀬)そこまで激しく投票行動を妨害するという話は聞いていません。一方で、開票作業のなかで不正がないかということをトランプ陣営も、バイデン陣営も心配しています。トランプ陣営は3日の記者会見で、弁護士を中心に5万人ほどを投票所に派遣して、身分証明書を持った有権者が投票するかどうかを確認するボランティア活動をしています。

飯田)激戦州と呼ばれるところを中心に派遣する形になるのですか?

黒瀬)そうですね。激戦州を中心に、特に郵便投票が多いところが注目されています。

フロリダ州、ペンシルベニア州が最大の注目州~米大統領選 首都ワシントンからレポート

22日、米テネシー州ナッシュビルで、大統領選討論会の会場近くで気勢を上げるトランプ大統領の支持者ら=2020年10月22日 写真提供:産経新聞社

フロリダ州、ペンシルベニア州が最大の注目州

飯田)全米50州あるなかで、注目しておくべき州はどこですか?

黒瀬)前回、トランプさんが勝った州が6つあります。それを激戦州と呼びますが、そのなかでも、南部のフロリダ州と東部のペンシルベニア州が最大の注目州です。共和党の大統領が、フロリダ州を落として勝ったことは、1924年以来ありません。トランプさんにとってフロリダ州を確保するのは必須条件になっています。一方、ペンシルベニア州はトランプさんにとっても、バイデンさんにとっても鍵を握る場所です。バイデンさんの生まれ故郷でもあります。

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15日、米ノースカロライナ州で、期日前投票の列に並ぶ有権者(ロイター=共同)=2020年10月15日 写真提供:共同通信社

選挙結果が長引くほど、争乱を煽る人たちに隙を与えてしまう

篠田)混乱の可能性なども出ていましたが、日本でも、郵便投票をめぐるいろいろな論争が報じられているところです。郵便投票が争点になる可能性については、どのようにご覧になっていらっしゃいますか?

黒瀬)郵便投票を問題視しているのはトランプさんの方で、「不正の温床になる」と主張しています。実際にこれから不正の証拠があるのか、どのような形で訴訟が起きるのかということも注目されるところです。混乱ということで心配されるのは、選挙結果が長引けば長引くほど、争乱を煽り立てる人たちに隙を与えるのではないか、そこで社会不安が広がって行くのではないかということです。

飯田)ブラック・ライヴズ・マターの運動が激しくなったときに、連邦の職員が現場に派遣されたということがありましたが、今回も、そういうある意味での実力行使は可能性として考えられるのでしょうか?

黒瀬)あくまで過程の話なので何とも言えません。争乱が起きるとすれば、ブラック・ライヴズ・マターの「黒人差別をなくす」という主張に名を借りて、トランプさんを攻撃しようとか、社会を揺るがしてやろうと目論む左派的な勢力が、今回を機会に騒ぎを起こすかどうかです。

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米大統領選挙=2020年10月31日 AFP=時事 写真提供:時事通信(Photos by JIM WATSON and MANDEL NGAN / AFP)

相手が勝った場合、どこまでその権威を受け入れることができるか

飯田)いまのところは静かだけれども、これからどうなるのか。

篠田)いまは固唾を飲んで様子を伺っているところでしょうか。いろいろな動きが起こり得るのですが、直近の混乱を乗り切れるのか、混乱が多少は発生するけれど管理できるのか、その場合、訴訟まで行くのかどうか。アメリカの大統領選挙は、行政府のなかに大きな人的変化をもたらす特殊な選挙なので、11月初旬に選挙結果が確定しても、政権移行は非常に忙しいです。1ヵ月も争乱が起きるとなると、特にバイデン政権ができる場合には、相当の機能不全が懸念されます。その間、諸国が隙をついて何らかの攻撃に出て来たときに、超大国アメリカが、その外国勢力に対する対応ができないとなると、アメリカ政府は威信を落とすことになります。長期的には、お互い対抗勢力が勝った場合に、その権威を受け入れるかどうかです。形式的には受け入れるとしても、心情的にどこまで受け入れるかどうかは悲観的にならざるを得ません。国民は統一できない前提のなかで、マネジメントして行かなければなりません。新しい大統領が、その課題にどうやって立ち向かうかどうかが問われるところだと思います。

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