【ライター望月の駅弁膝栗毛】
主に新大阪~白浜・新宮間を走る特急「くろしお」号。
「くろしお」は、3つのタイプの車両で運行されています。
なかでも目立つのは、太平洋のイルカをイメージしたという283系電車の先頭車。
かつての愛称から“オーシャンアロー車両”と案内されるカーブに強い振り子式の車両で、パノラマ型グリーン車となった先頭車からは、運転席越しに前面展望が楽しめます。
(参考)JR西日本ホームページほか
「くろしお」は、新大阪では東海道・山陽新幹線と接続し、大阪環状線をぐるりと回って、天王寺から阪和線、和歌山からは紀勢本線に直通して白浜・新宮方面を目指します。
朝夕は和歌山・海南発着の列車もあり、阪和線の通勤ライナー代わりにもなっています。
平成24(2012)年からは、快適な車内空間を重視して作られた287系電車も登場。
グリーン車全席と普通車の車端部の座席には、電源用コンセントも設置されています。
「くろしお」号の旅で楽しみたい駅弁と言えば、明治31(1898)年創業で和歌山駅弁を手掛ける「和歌山水了軒」が、創業時から製造を続ける伝統の「小鯛雀寿し」(1080円)。
紀州五十五万石のシンボル・和歌山城に、鯛の絵が描かれた包装が特徴です。
和歌山水了軒によると、小鯛雀寿しの“雀”とは以前、尾のついた一匹の小鯛を使ってシャリにクルッと巻くようにつくっていた寿司が「雀」のように見えたことに由来すると言います。
【おしながき】
・小鯛寿司(6個)
・ガリ
流れの速い紀淡海峡で獲れた身の締まった小鯛を使ってつくられるという「小鯛雀寿し」。
酢の香りに誘われていただけば、鯛のほのかな甘みとうま味が美味しく感じられます。
和歌山水了軒によると、「醤油が入ってない!」と問い合わせをいただくことがあるそう。
でも、なれ寿し以来の寿し文化の伝統に基づいて、味酢を使うことで味付けしているので、「何もつけずに、そのままでいただいて……」と、その都度、案内しているそうです。
関西と関東の食文化の違いを気軽に体感できるのも、駅弁ならではの魅力ですよね!
和歌山水了軒の駅弁は、和歌山駅改札口脇の売店(ランチスタイル)の他、駅近くの本社社屋、さらに阪和自動車道・紀ノ川サービスエリア(上り線)で販売されています。
週末の夕方、南紀で遊んだ人たちの旅の思い出をたっぷり乗せて、「しらさぎ」から移って来た289系電車の「くろしお」が終着・新大阪を目指します。
伝統の駅弁と共に、いろいろな車両を楽しめるのも、「くろしお」の旅です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/