黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に横浜創英中学校・高等学校 校長の工藤勇一が出演。コロナ禍で新たに校長として就任した横浜創英中学校・高等学校で行った迅速なコロナ対策について語った。
黒木)毎日さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺う「あさナビ」。今週のゲストは横浜創英中学校・高等学校 校長の工藤勇一さんです。
工藤)よろしくお願いします。
黒木)工藤さんは昨年(2020年)の3月まで、東京の千代田区立麹町中学校の校長を務められていて、宿題の廃止や中間・期末テストの廃止、クラス担任の廃止など、これまで当たり前になっていたことを覆すような学校改革を実施されました。そして昨年の4月からは、横浜創英中学校・高等学校の校長に就任されたということですけれども、新型コロナウイルスの学校への影響はいかがでしたか?
工藤)いまは通常に近い学校生活を送っていますけれども、4月当初は休校状態で、入学式も卒業式も中止になりました。最初の段階は非常に大変でした。
黒木)しかし、春の早い段階でオンライン化を始められたと伺いました。
工藤)そうですね。実はうちの学校は情報通信技術(ICT)が苦手でした。新校舎も建築中だったのでWi-Fiも飛んでいないという環境でした。これを今回、一気に進めることができました。5月の頭からは完全に別カリキュラムをつくり、午前4時間、午後2時間をオンラインでやりました。
黒木)授業が進められたということですか?
工藤)そうですね。教科によって違いますけれども、基本的に遅れはほとんどありませんでした。むしろ進んだ教科もあったと思います。
黒木)ご家庭ごとの環境も整えなければいけませんよね。
工藤)整えられたかと言うと疑問がありますが、できるものをみんなで持ち寄りました。それはご家庭もそうですし教員もそうです。あらゆる手を尽くして、可能なことをやりました。4月1日、私が横浜創英に就任したその日に教員を集めてもらいました。総勢120人ほどの教員がいますが、正規の職員を中心とした80人弱を集め、ブレインストーミングをして、これから起こり得ることについて課題を書き出す作業をしました。そこで「オンラインしかない」ということになりました。オンラインを実現するために特別チームをつくり、ZoomやYouTubeの限定動画配信など、無料でできるすべてのものを洗い出しました。4月8日には全教員が集まり、パソコンを持っていない人やスマホを持っていない教員は買いに行き、その端末を持ち寄り、Zoomをつなぐことから始めました。その1週間後には各家庭に教員が戻り、そこから授業の配信ができるようにしました。その間、わずか2週間くらいでした。
黒木)とてもスピーディーですね。
工藤)生徒たちには、この状況を伝えるためにYouTube動画で学校の様子を配信しました。どうしても、子供たちや保護者は「学校は何をしてくれるのか」と待ちの姿勢になります。待ってしまうと、情報が来ないと不満になります。そこで学校が困っていることも含めさらけ出す、そんな動画配信を4月だけでも十数本つくりました。それからすべての学年にメール相談と電話相談の窓口を立て、各家庭1軒1軒から情報を集めて、それに対して我々がどのように支援できるかということをやりました。ものすごい盛り上がりでした。教員は活気があって、異様な雰囲気でした。このことは私たちにとって大きな自信になりました。保護者の方や子どもたちからも、応援メッセージやお電話をいただき、なかには手伝いに来てくれる方もいました。
工藤勇一(くどう・ゆういち)/横浜創英中学・高等学校校長
■1960年・山形県鶴岡市生まれ。
■1984年から山形県で数学の中学教諭を5年務め、東京都台東区の中学校に赴任。
■その後、東京都や目黒区の教育委員会、新宿区教育委員会・教育指導課長などを経て、2014年に千代田区立麹町中学校の校長に就任。宿題・定期テスト・学級担任制など、これまで日本の学校教育で当たり前に行われて来たことを次々と廃止し、生徒が自律的に学習や活動に取り組む学校づくりを実施。
■麹町中学校で校長を6年間務めたのち、内閣官房教育再生実行会議委員や経済産業省「EdTech」委員などの公職も務める。
■2020年4月からは横浜創英中学校・高等学校の校長に就任。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳