緊急事態宣言延長、“道徳心”が問われる期間に

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「報道部畑中デスクの独り言」(第232回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、1ヵ月延長が決定した緊急事態宣言について---

画像を見る(全3枚) 2021年2月2日、会見を行う菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202102/02kaiken.html)

新型コロナウイルス感染拡大により11の都府県に出されていた緊急事態宣言は、栃木県を除き、2月7日の期限が1ヵ月延長されることになりました。ただ、状況が改善すれば、都市圏単位で期限前の解除も検討するということです。

「国民にもうひと踏ん張りしていただいて、何としても感染の減少傾向を確かなものにしなければならない」

菅義偉総理大臣は2月2日夜の記者会見で、国民に改めて協力を求めました。そして、「国民の皆さんの不安を少しでも解消するために、あらゆる方策を尽くし、私のすべての力を注いで取り組んで行く」と決意を示しました。

1月7日の会見では「1ヵ月後には必ず事態を改善させる」と述べていた総理、「すべての地域で緊急事態宣言を終えることができず、誠に申し訳なく思っている」と述べました。

菅総理の会見では今回初めて、プロンプター(原稿映写機)が使われました。会見でもそのことを問われ、総理は「国民の皆さんにきちんと情報発信し、説明責任を果たしたいと思って(記者会見に)臨んでいた。プロンプターについてもそうした観点からの一助になればといういろいろな方の考えがあったので、今回初めて使った。機会に応じて活用して行きたい」と答えましたが、皮肉にもこの回答は手もとの“想定問答原稿”に目を落としながらのものでした。

私もラジオ記者席から見ていましたが、プロンプターを使用したのは質疑応答の前までだったようです。ただ、これまでの会見よりも声が前に出ていたと感じました。

改訂された基本的対処方針では、飲食店の午後8時までの営業時間短縮要請、不要不急の外出の自粛要請、イベント制限などの措置が継続されました。一方、ワクチン接種については、当初2月下旬としたところ、有効性、安全性を確認した上で2月中旬に前倒しする考えを示されました。

2021年2月2日、会見を行う菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202102/02kaiken.html)

宣言発令中の約1ヵ月を振り返ると、さまざまなことがありました。飲食店の夜間時短要請を受け、一部に夕食の時間帯ではなく、ランチタイムの会食に切り替える動きがあったと言います。西村康稔経済再生担当大臣は「お昼ならみんなとご飯を食べていいということではない、できる限りテレワークをしていただいて、おうちで食事していただきたい」と述べました。

その後、会話をせずに食事をする「黙食」という言葉も生まれました。一方、発令期間中に、国会議員が東京・銀座のクラブなどを訪問していた事実が発覚し、議員辞職や離党に追い込まれました。これについて菅総理は会見で「あってはならないことだ。素直におわび申し上げる」と陳謝しました。

いくつかのエピソードが思い出されます。1つは新型コロナウイルスで亡くなった志村けんさんが、松田聖子さんと展開していた「父娘コント」のひとコマ。こんなやりとりだったと記憶しています。

娘)私、彼と結婚したいんです。

父)絶対それは許さんぞ!

娘)どうしてなの?

父)お前はまだ若いんだ。結婚するには早すぎるんだよ。

娘)私は彼を愛しています。いますぐにでも結婚したいんです。

父)まだ早すぎるってんだよ!

娘)……わかりました。

父)わかればいいんだよ。

娘)……来週にします。

父)(飲んでいたお茶を吹き出す)(観客爆笑)

私も当時これを見て、吹き出してしまいましたが、このコントと今回の「昼ならいいだろ」という理屈は同じ発想と言えます。しかし、これはコントだから成り立つこと、世の中には「厳密に言えば間違ってはいないけれど、何か変、おかしい」という現象がたくさんあります。そのズレがあるからこそ、時に笑いになり、コントになります。

しかし、その“おかしいこと”がコントではなく、大手を振ってまかり通るとすれば、それは道徳心の劣化と言えるのではないでしょうか。

2021年2月2日、会見を行う菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202102/02kaiken.html)

菅総理は会見で「これまでの対策により、国民の皆さんの協力により、はっきりとした効果が見られ始めている」と述べ、時短要請などによる効果を強調しました。

これらについては疑問視する声はあるものの、時短要請の真意は「ウイルスを少しでも拡散させない」ことであるのは自明です。愚かな理屈を基に行動に走るのはほんの一握りで、多くの国民、飲食店は犠牲を強いられながらも耐え、さまざまな工夫を施しています。

もう1つ思い出したのが以前、東京都内の小学校で取材した道徳の授業。そのときの教師、加藤宣行さん(筑波大学附属小学校教諭)の言葉です。

「自分のことだけしか見えないのは狭い世界、これを“私徳”と言う。みんなのことを考えているのは広い世界、これを“公徳”と言う」

「自分のよき心が決めるのだ。きまりがあるから守るのではない。自他ともにこうした方がいいと思えることがきまりになっている。極端な話、みんなが守れるのなら、それはきまりにしなくてもいいわけだ」

この言葉を緊急事態宣言下のなか、いま一度かみしめたいと思います。件の国会議員はまさに「私徳」と「公徳」の区別がつかず、「自分のよき心で決められなかった人」たちと言えるでしょう。

延長された1ヵ月は私たちが宣言の真意を理解して行動できるか、道徳心が問われる期間だと改めて思います。(了)


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