【ライター望月の駅弁膝栗毛】
国鉄時代の昭和56(1981)年から、東京~伊豆急下田・修善寺間の特急「踊り子」や、東海道本線(東京口)の普通列車・通勤ライナーとして活躍してきた185系電車。
いよいよ3月のダイヤ改正で、定期列車からの引退が発表されています。
白地にグリーンストライプのカラーリングは、国鉄の特急列車としては斬新で、1980年代の幕開けと共に、“新しい時代”の到来を感じさせられたものです。
(参考)JR東日本東京支社・横浜支社ニュースリリース、2020年11月17日分
185系電車「踊り子」の引退に合わせて、さまざまな記念グッズが登場しています。
駅弁では伊東駅の「祇園」が、定番の「幕の内弁当」(840円)を今年(2021年)1月15日から、オリジナルの“ありがとう185系記念掛け紙”で販売中。
伊東市内のみかん園が広がる高台から眺めた、伊豆急行線を走るグリーンストライプの185系電車が描かれており、まさにメモリアルな駅弁となっています。
さらにこちらの掛け紙、グリーンストライプの185系電車だけでなく、東北・上越新幹線の大宮開業時に運行された“新幹線リレー号”塗色のまま、「踊り子」号にやって来た車両、平成11(1999)年からの湘南色ブロック塗装、平成7(1995)年から、主に群馬を拠点に活躍した上毛三山をイメージしたカラーリングの車両も描かれています。
東日本エリア最後の国鉄形・185系電車への愛が、たっぷりと感じられる掛け紙です。
(参考)JR東日本ホームページほか
185系電車は、首都圏の“温泉送迎列車”と“通勤ライナー”の2つの顔がある車両。
「踊り子」は伊豆・箱根の温泉へ、「新特急谷川(のちに水上)」、「新特急草津(のちに草津)」は群馬の温泉へ、「新特急なすの」(当時)は栃木の温泉へ。
それぞれ乗り換えなしのアクセスを担った一方、朝夕の通勤時間帯は、当初は普通列車、のちに「湘南ライナー」をはじめとした通勤ライナーとしての活躍も目立ちました。
そのなかで「踊り子」は、伊東線・伊豆急行線直通の伊豆急下田行と共に、東海道本線の三島から伊豆箱根鉄道・駿豆線に入る修善寺行が運行されるのも特徴です。
途中の熱海で、伊豆急下田(伊東)発着・グリーン車連結の10両(7両)編成と、修善寺発着の5両編成が分割・併合しており、推理小説のトリックに使われたこともありました。
後継のE257系電車になっても、この風景はまだまだ見られますね。
「踊り子」は、車窓の海が楽しい列車としてもおなじみです。
東海道本線・小田原~熱海間、伊東線、伊豆急行線・伊豆大川~今井浜海岸付近では、随所でA席の窓から相模湾や初島、伊豆大島などの島々を望むことができます。
上州の山から下りてきた185系電車も、2010年代からは「踊り子」として活躍をはじめ、東伊豆の海岸線を走る風景が見られました。
【おしながき】
・ご飯
・鶏の唐揚げ
・サワラの天ぷら
・玉子焼き
・かまぼこ
・肉団子
・筍煮
・煮豆
・香の物
そんな185系電車が描かれた掛け紙を外すと、昔ながらの経木の折にぎっしり詰まった白いご飯と、名物・鶏のからあげがドーンと目立つ、いつもの幕の内が登場します。
185系電車が登場したころは、経木の折の駅弁は当たり前だったはずですが、いまでは、窓の開く車両や、伊東駅・祇園売店で販売されるポリ茶瓶のお茶同様、希少な存在。
祇園(0557-37-3366)に予約の際は、「記念掛け紙」の旨を伝えて下さいとのことです。
例年、フジサンケイレディスクラシックも開催されている川奈ホテルのゴルフコースを横に見ながら、最後の活躍を続けている「踊り子」号の185系電車。
40年にわたって続いてきたこの風景も、まもなく見納めです。
最後の1年は、窓が開くことが、乗客の大きな安心感にもつながりました。
あと1ヵ月、できるだけ静かな日常のまま、いつも通りの安全な運行を願いたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/