米政府の財政出動が日本の株価を下落させるのはなぜか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月1日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカ議会下院が200兆円規模のコロナ救済法案を可決したニュースについて解説した。
アメリカ議会下院、200兆円規模のコロナ救済法案可決
アメリカ議会下院は2月27日、新型コロナウイルスに対応した200兆円規模の経済対策法案を賛成多数で可決し、バイデン新政権が最優先課題と位置づける法案の成立に向け、大きく前進した。法案は今後上院で審議が行われ、3月14日までの成立を目指している。
飯田)アメリカは相当な規模を「ドン」と打ちますね。
須田)バイデンさんにとって、最優先課題は「コロナをどう収束させるのか」ということです。異例の数の大統領令を出しましたけれど、コロナ対応が多いのです。「公衆の面前ではマスクをつけるようにしましょう」という当たり前のようなところもあるわけですが、これは肝いりというところで、議会に指示をして法案を成立させようということなのでしょう。上院も民主党が実質的な過半数を持っていますから、これはスムーズに通るだろうと思います。
飯田)そうですね。
200兆円規模の財政出動によって起きた株価下落~東京の株価も下落
須田)しかし、リスクが大きく顕在化して来たということでもあります。どういうリスクかと言うと、長期金利の上昇です。200兆円規模の財政出動、実質的には1.9兆ドルと言われているのですが、これを赤字国債で引き受けるということなので、そうすると国際価格は下落するのではないかということを受けて、長期金利が上昇する。長期金利の上昇によって、資金が債券マーケットに移り、それによって株価下落ということで、これが直撃する形で、先週末の日本の株価も下落したということなのです。
飯田)2月26日の日経平均株価の終値が2万8966円1銭で、前の日と比べて1202円26銭の下落と。東京の市場も大きく下がりました。
須田)なぜ東京の市場も下がるのかと、いまの説明だけでは理解していただけないと思うのですが、現物株の市場というのは、先物に引っ張られているのです。先物に関して言うと、欧米のヘッジファンドがとにかく激しく売り買いをしている状況です。なかでもシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)というものがありますが、ここは市場規模が世界でトップ3に入るような大きなマーケットです。そこでこれまでずっと「買い」を入れて来たために上昇して来たと。なぜ先物なのかと言うと、買いやすく売りやすいのです。少々買ってみたところで値段は上がらないし、少々売ってみたところで値段は下がらないという状況があり、買いを入れて来た。ここが主導して大きく株価を下げているのです。
CO2排出量削減に2兆ドル~これだけ赤字国債が出て来たら、長期金利が上昇するだろう
須田)そういった点で言うと、アメリカの長期金利の上昇とワンセットだと考えてもらっていいのです。ただ、先ほど申し上げた1.9兆ドル規模のという以外に、バイデンさんの選挙公約のなかで、「自分の4年間の任期中に、CO2の排出量削減に2兆ドルを使います」という公約があります。通常予算以外に2兆ドルですから、200兆円です。単年度で考えれば、50兆円です。ただこれは早急に結果を出すために、前倒しで出して行きます。これも考えると、一方で2兆ドル、一方で1.9兆ドルとなります。「これだけ赤字国債が出て来たら、長期金利が上昇するだろう」という連想ゲームがすぐに働きますよね。
飯田)なるほど。
インフレ率の上限が限界に近づきつつあるか
須田)そういう点で言うと、アメリカの財政出動が日本の株価にも大きく影響を与えている。アメリカの国債利回り、ないしは長期金利がどう動いて行くのか。ここを注目していただきたい。自国通貨建ての国債というのは、確かにクラッシュすることはないのだけれども、いちばん大きなリスクというのは、コインの裏表ですけれども、「長期金利の上昇とインフレ」です。物価の上昇は抑えることはできませんからね。当然、耐えられるだけの長期金利の利回りとインフレ率というのが上限になって来ます。そろそろ、もしかすると限界に近づきつつあるのかなと。「近づきました」という断定はできませんが、それは今後の市場次第なのかなと思います。
飯田)アメリカにおいては、インフレ率が日本よりはかなり高めというか、「2%を少し超えても、緩和的な政策は続ける」と言っていましたけれども、その辺が「天井に近づいて来たか」という指摘が出始めましたものね。
須田)ただ、過去のアメリカの国債利回りは通常4%くらいで回っているのです。いまは大混乱のコロナ対策やリーマンショック後と同様の状況に入っていますけれども、一般的に4%くらいで回るのです。ただ、そこに近づくに従って、フリーハンドでの金融緩和ができなくなる。やはりブレーキをかける、国債買入額を下げる、出口戦略というところは、その「ターニングポイントは一体いつになるのか」というところが大きな注目かなと思います。
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