現場の医師が考える最良の「接種体制」とは……新型コロナワクチン
公開: 更新:
東京都医師会副会長で感染症を担当する「角田外科消化器科医院」院長の角田徹氏が2月9日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。新型コロナウイルスワクチンの接種計画について解説した。
飯田浩司アナウンサー)今回は、ワクチンの接種計画について伺っていきます。段々と具体的になってきたように感じるのですが、元々この計画というのは、どこが作るものなのでしょうか?
角田)実施主体は基礎自治体である区市町村で、それを東京都や国が支援するという形です。
飯田)区市町村にお医者さんが所属しているわけではないと思いますが、やはり地域の医師会というものが、かなり重要なファクターになってくるのでしょうか?
角田)地域の医師会が、実際に医師や看護師などの実働部隊を持っていますので、きちんと連携しながら動いている形になります。
飯田)報道を見ていると、接種場所についていろいろなアイディアが出ていて、元々は大会場のような場所で集団接種を行うといったことが言われていましたけれども、現在では、職場あるいは掛かりつけのお医者さんで行うといった案もあります。その辺りを、どうご覧になっていますか?
角田)ワクチンというと、やはり一番初めに候補に上がるのはファイザー社製のワクチンですが、これはマイナス75度という超低温で保管しなければならないのです。しかも、ロットが大きく一度に1170人分ずつ届くため、それを考えるとどうしても集団接種で行うしかなく、そういった案が最初に出ていました。ですが、やはり集団接種というのはいろいろな弊害もあり、私たちがあまりやったことがない方法というのもあります。一番いいのは、普段掛かっている掛かりつけのお医者さんで、インフルエンザのワクチンと同じように接種できること。その体制が一番いいと考えています。ただ、それぞれの地域の実情に応じて組み立ててくださいと僕らは話しています。
飯田)集団接種や掛かりつけのお医者さんで接種するなどの方法のなかで、現場のお医者さんの立場から見て、一番ベターな方法というのはありますか?
角田)接種するワクチンというのは、最終的には高齢者3600万人に打つもので、しかも2回打たなければいけないワクチンなのです。やはりそうなると、今まで打っていたインフルエンザのワクチンと同じように、普段から自分の病状をよくわかっていただいていて、且つ信頼関係ができている掛かりつけ医に打ってもらうほうが一番安心ですし、私たちも慣れている方法だと思います。
飯田)ワクチンをきちんと配送するというノウハウが確立すればいいと思うのですが、その辺りは、インフルエンザのワクチンなど既存のノウハウを流用できるものなのでしょうか?
角田)アストラゼネカ社製のワクチンは、普通のインフルエンザのワクチンと同じような扱いで大丈夫なのですが、やはり一番問題なのはファイザー社製のものです。ですが、それもしっかりとした方法と戦略を立てることができれば、それぞれの地区で十分できると思っています。
飯田)3週間かけて2回打つということになると、誰がどのワクチンを得たのかというデータをきちんと把握しておく必要がありますよね。その把握の仕方で、いろいろなシステムが乱立するのではないかといったことも報道されていますが、その辺りは現場から見るとどうでしょうか?
角田)ワクチンは3種類出ますが、違うワクチンを打つことはできないので、同じワクチンを2回打たなければなりません。そうすると、最初に打ったワクチンと同じものを2回目も打つことになります。そのためには、同じ医療機関で打って、間違いのないようにしていかなければなりません。この地域にはこのワクチンという形で、ワクチンの流通自体が地域ごとに1種類のワクチンになる予定なので、そういう面でも間違いが起こらないような工夫はあります。
飯田)これからいよいよ本格的に始動という形になりますけれども、今の問題点として挙がっているところ、あるいは心配されているところというのはありますでしょうか?
角田)初めての試みで、しかもなるべく早く打たなければならないということがあると、それぞれの現場での打つ準備がなかなか整わないので、国の計画した通りに進めるのは難しいかもしれません。少し遅れてしまうのではないかと思っています。それとやはり新しいワクチンなので、打った後のいろいろな症状などをきめ細かく観察しなければなりませんし、そのデータは全国で共有し、しっかりと確認しなければならないと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます