「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長・魚谷浩~「支援」という言葉に疑問を感じ始めたボランティア4年目

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長の魚谷浩が出演。東日本大震災の際、宮城で取り組んだボランティア活動について語った。

「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長・魚谷浩~「支援」という言葉に疑問を感じ始めたボランティア4年目

魚谷浩

黒木)今週のゲストは東京・中野にある「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長の魚谷浩さんです。東日本大震災のときにボランティアで宮城に行かれて、ご自分の独立はいつでもできるから、まずはボランティアをして行こうと。支援に終わりが見えないというお話でしたが。

魚谷)そうですね。私は生まれが兵庫県神戸市で、1995年の阪神淡路大震災のときには東灘区というところに住んでいました。まずまずの激震地でしたが、当時の様子ははっきりと覚えています。その当時の様子を自分のなかで持ったまま、東日本大震災の被災地に行き、何か役に立てればと思ったのですが、まったく状況が違ったのです。とても1~2ヵ月で終わるようなボランティア作業ではないなと。津波による被害は、ただ泥をかいたら終わりではなく、そのあとの建物のケアや人とのコミュニケーションの取り方、すべてにおいて終わりが見えませんでした。

黒木)そのあとはどうなさいました?

魚谷)自分の夢はいつでもできると思い、独立のプランは後回しにして、とにかくいまできることを1つ1つやって行くという、長期的支援に自分のなかで切り替えることにしました。最初は2週間の予定だったのですが、1年はいれるなと自分のなかで思ったので、1年間ボランティア活動に専念して、何か東北の方々のためになることができるのではないかと、残るという決断だけをしたら、受け入れてもらっていたボランティア団体から、秋口に現地の責任者を預かることになったのです。そうすると人との距離感もより近くなり、親身なところに入ることができました。2011年の春から夏にかけては、私のなかでも気持ちが二転三転した時期でした。

黒木)終わりが見えないなかで、ここに長くいようと決めるほど衝撃的であったということでしょうか?

魚谷)そうですね。言ってしまえば、そのころボランティアに所属はしていましたがフリーターで、フリーターができる最大限のことは、おそらく可能な限りその場に残り、自分の体力が続くまで何か活動を続けることが先決かなという判断に至りました。ある種、責任感の芽生えがありましたね。

黒木)その2週間が1年になり、実は4年間いらしたということですが。

魚谷)その4年間も一瞬で終わってしまったように感じるほど、とても濃い4年間でした。最初の1年は支援団体としてさまざまなニーズに対応するという役割でしたが、だんだんと長くいるにつれて、「支援」という言葉に疑問を感じ始めたのです。本当に必要なのは「その町の人になって、真剣に町のつくり方に取り込むことなのではないか」と思いました。そして、2012年9月にその団体から脱退し、石巻市民の目線で町の未来を考えて行こうということで、石巻でもさらに町から離れた牡鹿半島にある蛤浜という小さな漁村の浜の持続化を目指して、2年半ほど取り組んでいました。

黒木)蛤浜?

魚谷)名前が可愛いですよね。石巻の牡鹿半島にある30くらいの集落で、各集落のことを「浜」と言うのですが、その浜のなかでもとても小さな浜で、持続可能な漁村のあり方を考えるとその当時は難しかった漁村です。それをいろいろなアイデアを盛り込みながら、何としてもその浜を未来に残したいなと思い、団体をつくって2年ほど取り組んでいました。

「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長・魚谷浩~「支援」という言葉に疑問を感じ始めたボランティア4年目

魚谷浩

魚谷浩(うおたに・ひろし)/「宮城漁師酒場 魚谷屋」店長

■1979年・兵庫県神戸市生まれ。
■小さなころから料理に興味があり、幼少時から母親の手伝いでキッチンに立っていた。
■学生時代は香川県で過ごし、アルバイトをきっかけに飲食を仕事にして行こうと決意。以来、マネジメントも学びながら食の仕事に従事。
■2011年の独立を目標に10年間勤めていた飲食企業を退社。同時期に東日本大震災が起こり、独立を延期しボランティアに参加。
■震災復興で訪れた宮城の漁師町で多くの人々の気持ちと触れ合い、宮城の魅力を発信しながら宮城のみんなと一緒に元気になれる店を開こうと発起。
■2015年、地方のPRを兼ねた飲食店を開業するため東京に移住。
■2016年6月、これまでに出会った仲間とともに『宮城漁師酒場 魚谷屋』を開業。
■現在「宮城漁師酒場 魚谷屋」店主を務める。

<宮城漁師酒場 魚谷屋>
■東京都中野区に2016年開業。豪快さとスタイリッシュさを兼ね備えた漁師酒場。
■クラウドファンディングで支援を募集し、開店に至った。
■生産者の思いをダイレクトに伝える漁師直営の居酒屋で、グランドメニューがなく、その時期の最高に自信を持っておすすめできる食材だけを、漁師がプライドをかけて直送。毎月変わるメニューが人気。月に1度、漁師が来店し、漁師と語ることもできる。

<フィッシャーマン・ジャパン>
■「漁業をカッコよく」をコンセプトに集まった東北の若手漁師集団。一般社団法人。
■魚谷屋は、この一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンを母体とした株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングが運営。

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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