医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が2020年12月9日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。食べ物や唾液などが誤って気管に入ってしまうことから発症する誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こりにくくするための、トレーニング方法について解説した。
飯田浩司アナウンサー)誤嚥性肺炎で亡くなってしまうという方も、多くいらっしゃるのでしょうか?
森田)東京都健康安全研究センターによると、2019年に誤嚥性肺炎が原因でお亡くなりになった方は、4万人いると考えられています。さらに10年後には死亡者数がおよそ13万人、現在の3倍以上になるのではないかと考えられています。高齢化に伴って、誤嚥で肺炎を起こしやすくなるということだと思います。
あとは「隠れ誤嚥」といって、それほど自覚症状がないまま誤嚥が起きていることもあります。例えば、睡眠中に本人が知らないまま、唾液などが気管や肺に入り込んでしまうといったことがあり、特に年配の方に多くみられます。さらに、食後にすぐ寝るような行動が問題になることもあります。横になるときの体の向きを、右側を下にするか、左側を下にするか、それによっても危険度に差が出て来ます。新行さんは右と左、どちらが推奨されるかわかりますか?
新行市佳アナウンサー)右側が下のほうがいいのではないでしょうか?
森田)実は、右側を下にして寝ると、誤嚥の危険性が増すと考えられています。胃の形はカーブしているため、胃が食道より上になってしまうと、胃酸などが食道を逆流しやすくなるのです。もちろん、全員がそうしなければならないということではありませんよ。また、食べたあと横になるとむせやすい方は、体位に気をつけて横になることが必要です。誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物が間違って気管のほうへ入ってしまうことで起こるのですが、対策として舌や喉を鍛えるといいのです。そのトレーニング方法をご紹介したいと思います。
舌の体操なのですが、特に準備するものはいりません。やり方も簡単です。まず大きく口を開いて、舌を前に出したり引っ込めたりする。これを2~3回繰り返します。続いて、舌を出した状態で、左右に2回動かします。この舌の体操を行うことによって、喉の筋トレにもなりますので、飲み込む力を高めることができるとされています。さらに大切なのは、仮に誤嚥が生じたときにも、気管や肺に入る細菌などを少なくするため、きちんと歯磨きや舌磨きをしたりして、口腔ケアに気をつけるということですね。
飯田)実際やってみると、舌を前後左右させるのは結構疲れますね。
新行)舌の根元の部分がより疲れます。
森田)それがいいのです。その根本の部分が、気管と食道にものや空気をどのようにして通すのか区別しているのです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます