それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
映画俳優・高倉健さんが2014年に亡くなられて、2020年に7回忌、今年(2021年)は生誕90年を迎えました。25歳で俳優デビューして、58年間に遺した映画は205本。その一方、音楽の世界でも43曲を世に送り出しています。
実は、レコーディングしたけれど世に出ていない曲が2曲あって、ビクターエンタテインメントから3月24日に発売されるアルバム、『風に訊け -映画俳優・高倉健 歌の世界-』に未発表の2曲が収録されています。
このアルバムには、「網走番外地」や「唐獅子牡丹」などのヒット曲・代表曲を含め、厳選された9曲が収められています。ボーナストラックも充実していて、映画『ホタル』のために独学で練習したハーモニカや、映画『鉄道員(ぽっぽや)』のセリフなどがあります。また、こんな飾り気のない語りも……。
1996年、ニッポン放送「高倉健 旅の途中で…」。この第1回放送から抜粋した高倉さんのトークも収録されています。
歌い手としてのデビュー曲は、1958年(昭和33年)発売の「その灯を消すな」。27歳の甘い歌声です。代表曲と言えば、3枚目のシングル「網走番外地」。ところが、歌詞の内容が「刑務所を美化している」として放送禁止歌に……。
翌年、歌詞を書き換えて再発売すると、200万枚の大ヒットとなります。歌詞が異なる2曲を、このアルバムで聴くことができるのです。
任侠映画の主題歌「唐獅子牡丹」や「望郷子守唄」の他にも、映画『八甲田山』の撮影の合間にレコーディングした「朝顔の詩」は、1976年発売。阿木燿子さんと宇崎竜童さんの初期の作品で、高倉さんが「物語が目に浮かぶから好きだ」と言っていた曲です。
1979年発売の「男の忘れもの」は、作詞・作曲が、なかにし礼さん、中山大三郎さん、喜多条忠さんの共作という珍しい1枚。映画『居酒屋兆治』の主題歌「時代おくれの酒場」は、加藤登紀子さんが手がけた作品で、映画のなかでも夫婦役を演じています。
このアルバムでいちばんの注目が、未発表の2曲です。アルバムの1曲目は、1997年録音のオリジナル曲「対馬酒唄(つしまさかうた)」。2曲目に、カップリング曲でフランク永井さんのカバー曲「流れの雲に」を収録。どちらもビクターの倉庫で眠っていました。
「対馬酒唄」は、作詞・荒木とよひささん、作曲・徳久広司さん。当時、プロデューサーの飯田久彦さんは、最後の歌詞である「俺が死んだらよ、桜の下によ、骨ば埋めて、花見してよ」が気になったそうです。高倉さんに伺うと、「別にいいんじゃないですか」と気にしている様子はなかったとのこと。
曲に対しても、どうのこうのと言うわけでもなく……ただ、こだわったのはレコーディングで、高倉さんの方から「もう1回やりましょう」と何度も納得がいくまで時間をかけてつくり上げたそうです。
渾身の1曲だった「対馬酒唄」。ところが、高倉さんの意向で発売は見送りに……。その理由は誰にも明かさず、結果的にこの曲が最後にレコーディングした遺作となりました。
アルバムのタイトルは『風に訊け』……風のように高倉健さんの歌声が、聴く者の心を揺さぶります。
■『風に訊け -映画俳優・高倉健 歌の世界-』
発売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2021年3月24日
※初回限定盤CDボックス(特製ブックレット付 税込4620円)あり
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A011136/VIZL-1887.html
番組情報
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