【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第985回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、3月26日公開の『騙し絵の牙』と『ノマドランド』をご紹介します。
映画館で観たい!『騙し絵の牙』~仁義なき騙し合いバトルから目が離せない!
俳優・大泉洋を主人公に“当て書き”し、2018年本屋大賞にランクインするなど、話題・評判ともに世間の注目を集めた塩田武士による『騙し絵の牙』。
前代未聞のベストセラー小説が、ついに実写映画化となりました。
『騙し絵の牙』のあらすじ
かねてから深刻な不況に陥っている出版業界。大手出版社「薫風社」では創業一族の社長が急逝し、次期社長の座を巡って権力争いが勃発していた。
専務の東松龍司は大改革を推し進め、その影響で、雑誌は次々と廃刊のピンチに陥ってしまう。会社のお荷物雑誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水輝もまた、無理難題を押し付けられて窮地に立たされていた。
だが、この一見すると飄々とした男は、笑顔の裏にとんでもない“牙”を秘めていて……。
『騙し絵の牙』のみどころ
クセモノ揃いの上層部や作家、同僚たちの陰謀が渦巻くなか、新人編集者・高野を巻き込んで生き残りを賭ける異端編集長の奮闘を描き出した本作。
主人公の速水輝を演じるのは、もちろん大泉洋。原作者の塩田武士氏によると、大泉洋の出演する映像作品や資料だけでなく、本人との実際の会話などから彼の人物像を徹底分析。それを忠実に作品に落とし込んだとのこと。
しかし大泉洋本人は、“当て書き”されたキャラクターとは言え、バラエティ番組などで見せている"いつもの自分"を封印。しっかりと“速水輝”というキャラクターを構築しており、彼の卓越した演技巧者ぶりには目を見張るものがあります。
その速水の策略に巻きこまれて行く新人編集者・高野役には、大泉洋との映画共演は今作が初となる松岡茉優。重役としての立場を利用し雑誌廃刊を匂わせて、大改革を裏で進める東松役に佐藤浩市。
さらに、宮沢氷魚、池田エライザ、中村倫也、佐野史郎、木村佳乃、和田聰宏、坪倉由幸、斎藤工、塚本晋也、リリー・フランキー、小林聡美、國村隼などオールスターキャストが集結。彼らの得体のしれない“クセモノぶり”に注目ですよ。
どんでん返しの連続で、“牙”を向ける矛先がどんどん変化するなか、登場人物たちの印象まで変わり続ける。一連の騒動に観客をも巻き込んで行くような展開で、最後の最後まで目が離せない痛快エンターテインメント。
果たして最後に笑うのは、誰?
コチラも映画館で観たい!『ノマドランド』~第93回アカデミー賞最有力候補作
第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞をはじめ主要6部門にノミネートされている『ノマドランド』。アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービーです。
主演を務めたのは『スリー・ビルボード』で2度目のオスカーを手にし、本作でも主演女優賞にノミネートされているフランシス・マクドーマンド。
リーマンショックの影響で家を失い、季節労働の仕事を渡り歩きながら車上で暮らす60代の女性・ファーンを演じた彼女は、ノマドの生き様をリアルに体現するために、自らノマドの労働に身を投じて役づくりをしたとか。マクドーマンドがノマドとしてリアルに息づいている姿からは、力強さと崇高ささえ感じられます。
誇りを持って自由を生きるファーンの旅路に、あなたは何を思いますか?
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『騙し絵の牙』
2021年3月26日から全国ロードショー
出演:大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、斎藤工、中村倫也、佐野史郎、リリー・フランキー、塚本晋也、國村隼、木村佳乃、小林聡美、佐藤浩市
原作:塩田武士「騙し絵の牙」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督:吉田大八
脚本:楠野一郎、吉田大八
音楽:LITE
企画・配給:松竹
(C)2021「騙し絵の牙」製作委員会
公式サイト https://movies.shochiku.co.jp/damashienokiba/
『ノマドランド』
2021年3月26日(金)から全国ロードショー
出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、リンダ・メイ ほか
監督・製作・脚色・編集:クロエ・ジャオ
原作:「ノマド:漂流する高齢労働者たち」(ジェシカ・ブルーダー著/春秋社刊)
原題:Nomadland
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.
公式サイト https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/