東京都医師会副会長で「平成立石病院」理事長の猪口正孝氏が3月26日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。コロナ禍における、現在の医療現場の状況について解説した。
飯田浩司アナウンサー)コロナ第4波の可能性が高いとされるなか、医療提供体制は、現在も逼迫した状況が続いているのでしょうか?
猪口)コロナを診ている病棟に関しては、かなり落ち着いて来ています。しかし、5000床という数のベッドと、重症患者用として330床用意しているベッドは、そのまま維持しているのです。東京だけでなく日本全国なのですが、コロナ感染症が流行って患者さんが増えて来たからといって、その分のベッドを新しく5000床用意したわけではないのです。いままで通常医療のために使っていたベッドを切り取って、コロナ用にしているのです。東京の重症急性期を診て行く病床は、約4万8000床と言われていますが、そこから5000床を切り取っています。
飯田)「病床を5000床用意しました」という言葉が独り歩きすると、新たにつくったように聞こえますが、そうではないということですね。東京都の病院全体で、ベッド数はコロナ前後で増えているのでしょうか?
猪口)全然増えていません。
飯田)増えていないとなると、「新しく増やせばいいのではないか」という意見が評論家の方々から出て来ますけれども、ベッドを増やすだけでは意味がありませんよね。人を増やすということは、やはり難しいのでしょうか?
猪口)感染症の教育をするのは、とても大変なことです。感染症教育はすべての病院ができるというわけではなく、やはり高度急性期を診ることができる、大きめで機動力のある病院しかできないのです。
飯田)では、看護師やお医者さんの資格を持っているからといって、全員ができるわけではないのですね。
猪口)そうですね。やはり働いている方たちにも、人権もあれば、やりたいことやさまざまな感覚もあり、我々にも恐怖心があります。恐怖心がある皆さんに、精神論で「国難なのだから手伝って欲しい」と言うわけにはいかない。やはり本人の納得と教育、その両方がないと、無理に働いてもらうわけにはいかないですよね。
飯田)社会全体のサポートも必要ですよね。
猪口)それはぜひ、本当にお願いしたいです。
飯田)最前線で働いてくださっている方々が、どれだけの覚悟でやっているかということですよね。
猪口)本当にそうです。ほとんどの病院が、1年前の武漢株のときから一緒に頑張っていますけれども、決死の覚悟でしたよね。最近はかなり病気についてわかって来ましたけれど、あの当時は本当に命がけで治療にあたっていました。「どうなってしまうかわからない」と、そういうつもりでみんな闘っていましたね。
飯田)第4波が来る可能性も高いと言われていますが、我々にできることは、手洗い、マスク、密になる場所は避ける、何かあったらすぐに消毒する、といったところでしょうか?
猪口)そうですね。人が多く集まるところは落とし穴も増えて来ます。それぞれが100%、清潔な状態を管理しているわけではありません。人の流れが増えると感染も増えるのは事実なので、人が人にうつすという原点と、個人の徹底だけでなく社会的な雰囲気づくりも大事なことだと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます