芸術を外で楽しめる!『丸の内ストリートギャラリー』の魅力を一挙紹介

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日比谷駅から東京駅を結ぶ、丸の内のメインストリート「丸の内仲通り」。石畳と街路樹が美しく、有名ブランドの路面店やハイセンスなカフェ、洗練されたオフィスビルや商業施設が連ねるこの通りに、近代彫刻の巨匠の作品や、世界で活躍する現代アーティストの作品を展示する『丸の内ストリートギャラリー』(主催:三菱地所株式会社)をご存じだろうか? 1200メートルほどの距離で、歩くと15分くらいと、散歩にピッタリのこの丸の内仲通りに、13作品が展示されている。東京駅、有楽町駅、日比谷駅、二重橋前〈丸の内〉駅、大手町駅といったどの駅からも、ほど近い所に彫刻が飾られているので、散歩に来るのはもちろん、食事や買い物のついでに、近くに勤める人は息抜きに、ぜひお勧めしたいスポットだ。

有楽町駅を最寄り駅とするニッポン放送にとっても、『丸の内ストリートギャラリー』といえばご近所の名所。ニッポン放送・東島衣里アナウンサーが、展示監修する公益財団法人彫刻の森芸術文化財団の坂本浩章さん、関かかりさんに、メイン作品13体の見どころを聞いた。

【1】無題
加藤 泉 2018年制作(本小松石・着彩)

坂本:加藤さんは世界で活躍をしている作家さんの一人。プリミティブな印象の特徴的な人物の作品を数多く発表されています。この作品は、積み重ねた石に絵を描いています。絵とも彫刻ともいえる単純でありながら、独特な雰囲気を醸し出していますよね。

東島:確かに、岩肌をそのまま生かしているような……。

坂本:普通、彫刻家は石を掘って形を作っていきますが、加藤さんは石切場に行って「この石とこの石と……」という風に選び、それを組み合わせただけなんです。

東島:それ以上の加工をせず?

坂本:はい。石そのものが持っている表情を生かしながら、作品に表情を作り変えていったものです。あと、石自体に描くのも珍しいですね。

東島:こんなビル群の中にあるのに、作品が馴染むのは何故なんでしょう?

坂本:建築物は直線的で、どちらかというと無機質なところがあります。ですが、彫刻とかアートというものは線を引いて作ったものではないので、有機的なんです。だから、直線的な町に、有機的なものが動きを与えてくれるのだと思います。街のアクセントになっていますよね。

東島:確かに、目を引きます。

坂本:きちんと何メートル間隔に街灯を置くとか、この町に合うような色にするとか、それもデザインとしてはいいんですが、逆にアートはそういうことを全く意識せず、自由に表現します。だから何となく、見てホッとすると思うんです。

【2】われは南瓜
草間 彌生 2013年制作(黒御影石)

坂本:みなさんも良くご存じの作家さんですよね。草間さんといえば、かぼちゃと水玉。

東島:これも、かぼちゃですね。

坂本:よく、草間さんはかぼちゃを作りますが、あのかぼちゃはご自身を描いていると言われています。そして、それを水玉で飾ることによって、周りの空間、全ての空間が一体化すると、そんなことも言われています。そして、実は石で作った作品はこれが初めてなんです。

東島:そうなんですか!?

坂本:ご自身で石を掘って作ったのではなく、スケッチしたものを職人さんに作ってもらっているんですが、石で表現された作品はこれが初めてです。草間さんはいつも「愛はとこしえ」「愛は永遠」というメッセージを作品に込めているんですが、今回、石で作ったことによって、ほぼ半永久的にこの作品が残ります。草間さんの愛がずっと、永久的に語り継がれて送られ続けて、草間さんとそれを見る人たちが永遠に繋がっていくという、そういう思いもこの作品に込められています。草間さんというと、絵を見ることが多いと思うんですが、彫刻なのでぐるっと見渡せるのも貴重ですよね。

東島:そんな貴重な作品がここにあるというのが、すごいですね! 意外と知られていないですよね?

坂本:そうですね。草間さんの作品はカラフルなイメージがあるので、これをパッと見た時に草間さんだと気付かない人が多いようです。でも、草間さんの作品の全ての要素がこの作品に詰まっているので、とても貴重な、集大成のような作品だと思っています。

坂本:みなさんも、ここに顔を入れ込むように写真を撮っていますが、それは、作品の中に入っている、溶け込んでいるということです。さっきも言いましたが、水玉というのがすべてのモノを同化、一体化させる、物体には分け隔たりがないということが感じられますよね。

【3】コズミック・アーチ '89
鹿田 淳史 1989年制作(ブロンズプレート)

坂本:鹿田さんは建築を詳しく学んだ作家さんで、この作品も数式でいろいろと図形を作って計算して作られたものです。

東島:直線と曲線がきれいですね。

坂本:この作品はとても大きいので、見上げて作品を見るじゃないですか? そうすると、こんなに大きいビルがあるんだ!? って気付かされるんです。

東島:確かに! ここまで見上げることってないですよね。

坂本:作品を通して、この空間や周りの建物の大きさまで感じられますよね。

東島:日頃、いかに自分の視野が狭いかってことですね。

坂本:そして、作品の中に映り込んだビルもとてもきれいで、かっこいいですよね。丸の内仲通りは建築も凝っているので、それを見るのも楽しい所ですから、アートを通して、建築を楽しむのもお勧めです。

【4】つくしんぼう
桑田 卓郎 2018年制作(磁土・釉薬・顔料・金)

東島:遠くから見ても、すごく気になる作品ですね! これはどうやって作られたのでしょう?

関:現代アート的な要素が強いように見えますが、陶芸の伝統的な技法を使って制作されています。これは磁器でできていて、金色の点々になっているところは「点滴」という伝統的な技で金の油を塗って焼いています。

東島:これ、一個一個に金を塗ったんですか?

関:そうなんですよ、気が遠くなりそうですよね(笑)

東島:遠くから見ても、近くでじっくり見ても面白いですね。

関:この作品、日中も綺麗なんですが、夜になってライトアップされるとまた違った見え方をします。作家さんご本人も「まさか、夜にこんなに作品がキラキラ見えるとは思っていませんでした!」って驚いていました。とても人気の作品です。

【5】SPIRAL.UQ
木戸 修 2017年制作(ステンレス)

坂本:これは緻密な計算から生まれてきた作品で、すべて数式で作っていって、つながりの部分の計算をして、紙で模型を作り、それから作品に起こしていくという、かなり重労働な作品です。そして、これは全部一筆書きなんです。

東島:辿って見てみると、本当ですね、一筆書きですね。

坂本:ステンレスの板を継ぎ合わせて作っているんですが、ぜんぜん継ぎ目が分からないですよね? 溶接をして、そこからさらに磨きをかけて分からないようにしています。

坂本:私たちは作品を鑑賞する立場ですけど、こういう鏡面の作品というのは、作品からいわせると、作品が景色を写り込んで、作品が周りを鑑賞している、という意味合いにもとれます。

東島:私たちが、作品に見られているんですね。

坂本:作品の中に景色を取り込んでいて、それすらも作品にさせてしまっています。

東島:確かに、作品にこの街並みも映っているし、空も映っていますね。

坂本:そうなんです。だから、365日24時間、作品の表情もどんどん変わっていくんです。屋外アートならではの魅力ですよね。しかも、この作品は多角的な面になっているので、様々な角度で景色を取り込み、正面から見ても、いろんな角度の景色が映り込んでいます。イルミネーションの時期はライトが全部映り込むので、とてもきれいですよ。

【6】Bird 2014-03B
三沢 厚彦 2018年制作(ブロンズ・着彩)

坂本:丸の内ストリートギャラリーには、鳥、ライオン、クマの作品がありますが、3つとも三沢厚彦さんの作品です。多くの作家さんが絵や写真を見て生き物を描きますが、三沢さんは何かを見たりせず、あくまでも自分の中にある動物のイメージを具現化しています。ただ、このフェニックス、不死鳥というのは実在の生き物ではないですが。

坂本:例えば、クマに遭遇してビックリした時のイメージとか、そういうイメージをご自身の中で、作品化したということで、作品名もクマとかではなく「Animal」と名付けています。

東島:広いですね。

坂本:具体的に、これが何かを言わないんです。

東島:何と捉えてもいいということでしょうかね。

坂本:この作品については大きく分類して「Bird」と名付けています。

【7】Animal 2016-01B
三沢 厚彦 2018年制作(ブロンズ・着彩)

坂本:これも三沢さんの作品です。やはり、ライオンそのものを形にしたわけではなく、作家さんの中にあるライオン像。実際のしっぽはこんなには太くないですよね。

東島:白色というのも作家さんの中でのイメージなんでしょうかね。

坂本:三沢さんの話を聞いていると、彼の作り方ってとても日本人的だなと感じていて、昔の浮世絵、特に写楽(江戸時代の浮世絵師)などがそうですが、体のバランスが全部違いますよね。手が小さくて、顔がすごく大きかったり。何で浮世絵があんな風に描かれているのかというと、あれはブロマイドなので、役者さんの顔だけがみんなの印象に残ればいいんです。だから、見せたいところだけをクローズアップして、手の大きさだとか体のバランスは崩れてもかまわないわけです。

東島:見せたいところだけを強調しているんですね。

坂本:一方でヨーロッパの方々は、どちらかというと形に忠実に作る様式だったので、浮世絵を初めて見たときに「これは何だ?」「何でこんなにバランスが違うんだ?」と思ったらしいです。

東島:引きで見たらライオンだなと思っていましたけど、こうやって正面から見ると、確かに、しっぽとか胴のサイズ感が面白いですね。

【8】Hard Boiled Daydream (Sculpture/Spook) #1
金氏 徹平 2018年制作(ステンレス・塩化ビニル系樹脂・塗料)

関:土管や木、砂、石……いろいろとありますが、これ、何のイメージか分かります?

東島:うーん……。

関:漫画の背景にあるものなんです。

東島:確かに、決して主役で出てくるものではないですね。

関:今言った素材、木、砂、石は彫刻で使われている素材なんですよね。そういった素材を彼なりに現代彫刻として、素材の絵を使って表現しています。もともと、この作品のシリーズは漫画の背景などを平面や立体的に組み合わせていますが、この作品では漫画をあえて引き延ばすことで、感覚や目の視点の合わせ方をぐらつかせるという、そういう操作をさせているんですよ。

関:これは立体物ですが、写真で撮ると平面的に見えるんです。だまし絵のような、コラージュのような。

東島:合成写真みたいですね! 平面だけど立体。ぐるっと回ってみると、角度によっても見え方がぜんぜん違って面白いですね。

【9】the Garden(屋根裏の庭)
國府 理 2011年制作(鉄、土、植物、植物の種子、その他)

坂本:この方は若くして亡くなられてしまったのですが、ご存命だったら今の日本現代アートを引っ張っている作家さんの一人だったのではないかと。そんな國府さんが残された作品をぜひ紹介したいと思い、展示しました。作品は見ての通り、ここの土地を抜き取ったように感じますよね。土を入れてコケだけを植えて、それ以外はまったく何もしていないのに、いろいろ花が咲いたり芽が出たりするんですよ。

東島:自然にできたんですね!

坂本:この、丸の内の環境でできた自然の世界なんですよね。ここに花が咲いたりして種ができると、鳥が来てそれを食べます。鳥は食べるとフンをする習性があるので、その鳥が別のところで食べた種がここに落とされて。小さな鳥というのは行動範囲が大体決まっているので、この辺りの植生を運んで来る。だから本当に、自然とこのエリアの環境がここに集まってくると、そういう仕組みになっています。こうやって見ると、小さな葉っぱから生命力を感じますよね。

東島:小さな葉っぱがかわいいですね。地面にあったら見落としてしまいますけど、こうして目の高さにあるから気付けますよね。

坂本:実はこの土も、この辺りの土を入れていて、ここじゃないと成立しない作品です。先ほど紹介したステンレスの作品【5】『SPIRAL.UQ』では、作品の中に景色を取り込んでいましたが、これはアートの中に環境を取り込んでいます。

【10】風の椅子
長谷 京治 1995年制作(ブロンズ)

坂本:基本的にこの作家さんはイタリアに在住していて、イタリアやヨーロッパの神話といったものをテーマにしている方です。上にあるあの金の卵が、座面にうまくはまるようにできているんですよ。

東島:ああっ、本当ですね! ここからくり抜かれたみたいですね。一体どういうテーマなんでしょうね?

坂本:長谷さんの彫刻は『イタリアの現代彫刻の形式的な芸術性のなかに、日本の伝統が垣間見えます。まるで詩を詠うように繊細で官能的であり、非常に洗練されたブロンズのフォルムには緻密な細かい細工が施され、深く落ち着いた風景の存在と叙情的な印象を与えます』と言われています。つまり、日本的な感覚が入っている、ということですね。

【11】石のとびら
水井 康雄 1969年制作(ブルゴーニュ産 石灰岩)

東島:これは……表現が難しそうですね。

坂本:そうですね、私もこの説明は難しいです(笑)

坂本:作品解説としては『ほんのり紅がさしたブルゴーニュ産の白い石の扉が、いまにも開いて、石の奥底から響いてくる神秘の声を聞かせてくれそうです。デリケートなカービングによって端正な形姿を取らされた石が、石でありながら冷たくなくむしろ暖かく息づいているように感じませんか』といわれています。

東島:確かに、神秘的な感じがします。

坂本:この作品も造形的にきれいで、石の割れ目から光が溢れてきて、鍾乳洞に入ったようなイメージがありますよね。これは夜がおすすめです。ライトアップをしてみて、凄くいい作品だな! と私たちも改めて感動しました。形がよりきれいに見えて、温かさを感じられると思います。

【12】ローマの公園
淀井 敏夫 1976年制作(ブロンズ)

坂本:淀井さんは2001年に文化勲章を受章していて、日本の有名な彫刻家の一人です。この作品は、実際にローマのボルゲーゼ公園で老女と若い娘がベンチに腰かけて語り合っていた光景をもとに制作されました。

東島:ここまで具体的な場面がある作品は今までなかったと思うんですが、作り手の方はそういう風景が見えたんだな、って追体験ができて面白いですね。

坂本:印象に残った景色を、何か形にして残そうということで、この方は彫刻家だから彫刻で残したと。物を作るというのは、この景色を残したい、描きたいとか、そういった衝動から始まるんです。その衝動を一番簡単に表現できるのが写真です。最近はみなさん、バシバシ写真を撮っていますが、景色を残したいと思った時の感覚、衝動が、ものづくりの第一歩といわれています。

東島:技術はもちろん手が届かないですが、私にもそういう衝動はありますね。

坂本:「美術は分からない」「アートは分からない」という人がよくいますが、みなさん、毎日写真を撮るじゃないですか? 実はみんなアーティストで、アートが分からない人は誰もいないんですよ。

【13】Animal 2017-01-B2
三沢 厚彦 2017年-2019年制作(ブロンズ・着彩)

坂本:【6】【7】の作品と同じ作家さん、三沢さんの作品です。先ほども紹介した通り、彼の頭の中のクマで、自身の記憶と実物を目で捉えたときのフィルターが合わさって作られた造形です。

東島:クマですけど、これは自分の知っているクマなのか? という感じがしますね。

坂本:クマがこんな手のポーズしませんしね。

関:クマは威嚇する時に立ち上がるそうですが、このクマは威嚇はしていないそうです。

東島:確かに威嚇はされていないような、でも、心は開いていない感じですね。

坂本:背の高い像なので、見上げた時にバランスよく見える形にしたかったそうで、だからちょっと頭の方が大きく作られています。なので、あまり大きく見えないんですよね。大きいけど、そんなに大きく見えないという、不思議な感覚になる作品です。

■『丸の内ストリートギャラリー』の魅力とは

坂本:街の中に彫刻を置くという仕事を、私はもう何年も、全国でやってきましたが、丸の内以上に自由に彫刻をおける空間は無いんですよね。この街は三菱地所さんという会社が管理しているので、公用地ですが私有地みたいな。セキュリティもものすごくいいから、作品も非常に自由に置けて、こういう場所は日本全国探してもたぶん無いです。

以前、ブラジルの放送局に取材を受けたことがあって、その人たちが「何で盗まれないんだ!?」と驚いていました。これだけのハイクオリティな空間の中で、素晴らしい作品が見られる貴重な場所だと思っています。

■改めて、じっくりアートと向き合ってみて

東島:丸8年間、私はこの丸の内仲通りを通ってきましたが、想像以上に知らないことが多く、勿体なかったなと思いました。こういった彫刻があることを、知らない人には知ってほしいし、この辺りで働く人も、なかなか忙しい人が多いとは思いますが、少し足を止めて楽しんでみてほしいですね。

坂本さんが話してくださった、芸術を収めたいという動機、それは自分も体験したことがあるので、アートってそんなに遠いものではないんだなと知れました。作品も街も、自分のその時の気持ちで見え方が変わったり、変わらずに見えるものもあったり、そういうのも面白かったです。

『丸の内ストリートギャラリー』は屋外展示のため、いつでも、自分の好きなタイミングでの鑑賞が可能。夜はライトアップされるので、暗い街中に作品がほんのり明るく浮かび上がる様子も幻想的だ。丸の内を散策しながら、アートを身近に体感してみてはいかがだろうか。


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