ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月9日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。米イランの核合意をめぐって行われた間接協議について解説した。
イラン核合意をめぐる関係国会合~立て直しへ2専門部会
イラン核合意をめぐる関係国会合が4月6日、ウィーンで行われ、米国とイランがそれぞれ合意立て直しに向けて取るべき措置を検討する2つの専門部会の設置を決めた。米国とイランの間接協議を仲介した欧州連合(EU)欧州対外活動庁のモラ事務局次長は協議を加速させると表明した。
飯田)アメリカとイランの核合意をめぐり、ウィーンで間にEUを立てて間接協議をしたということですが。
宮家)当面両者が直接会うことはないでしょう、イランが嫌がっていますから。
飯田)これはどうなって行きますか?
元に戻すことは難しい
宮家)簡単に言うと、2015年にできた核合意があります、それが3年前のトランプさんのちゃぶ台返しで止まってしまった。それにイランが怒って、核開発やウラン濃縮を再開した。「馬を水飲み場に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」というイギリスのことわざがあります。要するに、2匹の仲の悪い馬がいて、とにかく水は飲まなくてはいけないけれど、一緒に飲むのがいやだから行かない。そこでヨーロッパ諸国が「わかった、それでは」と言ってシャトル外交をやった。こうしてやっと両国を水飲み場まで連れて来たわけです。しかし問題は、この水が「泥水」なのですよ。
飯田)決して飲みたくないと。
宮家)2015年のときは何とか飲んだのですけれどもね。しかし、よく考えてみたら、お互いにとって泥水だったのです。以前は両国とも苦しいギリギリのところで妥協したのですが、アメリカがあのような形で出て行ってしまうと、これはなかなか元に戻すのは難しいですよね。今回欧州諸国の努力は認めるし、交渉がうまく行ったらいいなとは思うのですが、扱うのは冷凍食品ではなく生鮮食料品ですから、2015年の古い生鮮食料品を「もう一度食え」と言われてもね、また、米国は他にも入れたい材料があると言い出しています。例えば、イランのミサイル開発を何とかしろと。
飯田)アメリカからしたら。
宮家)更にイランは中東各地にもいろいろとちょっかいを出しているではないですか。イエメンとか、イラクとか、レバノンとか、イランはやりたい放題ではないかと。それも全てやめろと米国は言っています。対するイランは、そんなこと2015年合意には入っていなかったではないかと反論する。
飯田)イランからすると。
イランの次期大統領が強硬派になれば10年前の関係に戻ってしまう
宮家)イランは合意をきちんと元に戻せということですよ。そうこうしているうちに、6月18日にはイランで大統領選挙がある。いまの状況では、ロウハニさんという、私は必ずしもそうとは思わないのですが、穏健派と言われる現職大統領は次の大統領選に出馬できません。イランは民主主義をやっているフリをしていても、基本的に誰が出馬するか、誰が立候補するかについては、最高指導者のハメネイさんが最終的に決めるのです。
つまり、アメリカとの塩梅が悪くて、穏健派の大統領ではどうもダメだということになれば、次期大統領にまた強硬派を持って来る可能性があるということ。昔アフマディネジャドさんという強硬派が、ハタミさんという穏健派大統領が成果を出せなかった後に大統領になったことがあります。穏健派の統治がうまく行かなくて、次は逆に強硬派の人が出て来た。今回もそのような強硬派の人が出て来るのを、手ぐすね引いて待っている人がいます。
例えば、イスラエルの強硬派はイランで再び強硬派が台頭したら、また厳しくやるぞと考えています。そうしたら、こちらもやるぞという人がワシントンにもいる。3国の強硬派はお互いの話は聞かない。だから強硬論で行こうとなり、結局は、強硬派同士が共存共栄になる、という構図なのです。
飯田)奇妙な利害の一致が出てしまうのですね。
根本的な問題は解決しない
宮家)そうです。ですから、そうなると、状況はまた10年くらい前に戻ってしまいます。「そうならないためにどうするか」ということが現在最大のポイントなので、ヨーロッパ諸国は今一生懸命頑張っているのです。核合意を元に戻す理由は十分あるのですけれども、なかなか元のさやには戻らないのではないかと心配しています。
飯田)なるほど。日本としてはここにアメリカが専念するのは困るところですが。
宮家)そうですね。しかし、アメリカとイランの政治的戦いは1979年のイスラム革命以来一貫して続いているのですから、根本的な問題が解決しないのも当然なのです。
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