岡山と連携しながら守る、四国の伝統駅弁の味
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「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
ご当地の味が詰まった駅弁。かつては駅近くの調理場から、特急列車の発着に合わせて売店へ搬入する光景もよく見られました。でも、いまでは一部をのぞき1県数社が一般的。他の会社と協力して生産を行って、駅弁のブランドを守るケースもしばしば見られます。高松駅の伝統駅弁「あなご飯」もその1つ。今回は岡山駅弁・三好野本店密着のスピンオフ企画、四国の伝統駅弁に注目します。
岡山~高松間を約1時間で結ぶ快速「マリンライナー」。早朝深夜の一部列車をのぞき、高松寄り3両がJR四国5000系電車、岡山寄り2両がJR西日本223系電車で運行されています。1号車の2階建て車両は、2階がグリーン席、1階は普通車指定席。新幹線などからの乗り継ぎ時間が短いときは、着席が保証される重宝な存在です。また、グリーン席の1番ABCDは、運転席直後の前面展望が楽しめる席となっています。
岡山~高松間は新幹線開業後、岡山~宇野間の快速、宇野~高松間は宇高連絡船で結ばれていました。JR発足直前には新型の213系電車が投入され、毎時1本の快速「備讃ライナー」として運行されました。昭和63(1988)年4月の瀬戸大橋開業によって、この快速が「マリンライナー」となりました。213系電車は、平成15(2003)年でマリンライナーからは退き、現在はワンマン運転対応などが施されて、岡山地区で活躍しています。
(参考)交通公社の時刻表(1987年3月号)ほか
快速「マリンライナー」は現在、高松4:35発の列車から、岡山深夜0:12発の列車まで、概ね毎時2本・日中はほぼ30分間隔で運行されています。鉄道で県境を越える区間は極端に運行本数が減るところも多いなか、「マリンライナー」の乗客は普段着の方が多く、朝夕は通勤・通学で瀬戸大橋を渡っていく人も多く見られました。瀬戸大橋線開業から30年以上、岡山・香川エリアは、すっかり1つの生活圏になっているように感じます。
高松駅の名物駅弁として知られる「あなご飯」(1000円)は、高松駅弁のブランドを受け継いだステーションクリエイト東四国の企画・販売で、製造は岡山の三好野本店が担当しています。JR四国とJR西日本の車両が連結して運行される「マリンライナー」と同様、高松の味を岡山と協力しながら守っている格好。その意味でも「駅弁は時代を映す鏡」と言えるかも知れません。
【おしながき】
・いりこだし入り味付けごはん
・焼きあなご
・刻みあなご煮
・筑前煮
・漬け物(さくら漬け)
・しょうゆ豆
四国らしさを感じさせるのは、何と言っても、讃岐うどんでおなじみの「いりこだし」が入った味付けごはん。この上に、こだわりのタレで香ばしく焼き上げた焼穴子と、じっくり煮込んだ煮穴子が載っています。付け合わせの注目は、香川県の郷土料理「しょうゆ豆」。昔は各家庭で素焼きの瓦で香ばしく煎ったそら豆を、醤油や砂糖でつくったタレに漬け込んで作っていたと言います。見た目より硬めの食感と、そのあとに広がる旨味がクセになりますね。
(参考)香川県ホームページほか
ちなみに、愛媛・松山の名物「醤油めし」も岡山・三好野本店が味を守っている駅弁です。三好野本店によると、かつて製造していた鈴木弁当店とは、百貨店の催事などで委託製造を請け負っていたり、愛媛で開かれた国体の際など、もともとのつながりが強かったそう。このため、鈴木弁当店がお店を閉じられた際も、レシピの継承など、比較的スムーズに、生産の移行ができたと言います。
宇野線の岡山~茶屋町間は、毎時2往復の快速「マリンライナー」に加え、予讃線特急「しおかぜ」、土讃線特急「南風」等が頻繁に行き交います。岡山まで新幹線のEX予約、またはe5489を利用して高松周辺へ行く場合は、岡山駅限定発売の「せとうち岡山・香川パス」(2850円・3日間有効)が便利。岡山~高松の往復でも元が取れてしまいます。いい時期になったら、瀬戸内の風を感じてのんびりと旅をしたいですね。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/