熱中症にならないためには~汗は完全にぬぐい取らず湿り気を残す
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医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が8月3日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。熱中症の仕組みや対策について解説した。
熱中症になるとなぜ眩暈や立ちくらみになるのか
飯田浩司アナウンサー)いままさに警戒すべき熱中症についてお話を伺います。熱中症の症状として、眩暈や立ちくらみなどが生じるということですが、なぜ眩暈や立ちくらみになるのですか?
森田)身体に熱がこもると、2つの仕組みが働くのです。まず第1の仕組みからご説明しますが、熱がこもると、皮膚の近くの血管を広げ、そこに血液を集めて、身体の外に熱を逃がすという仕組みが働きます。この仕組みが働くことによって、身体の血液が皮膚のすぐ下に集中してしまいますので、そのぶん脳への血液の流れが少なくなり、眩暈や立ちくらみが出るのではないかと考えられています。
身体に熱がこもると血液をたくさん流して冷却する~気温が体温を上回ると機能しない
森田)血管に熱い熱が伝わって来ますから、そこから外に熱を逃がそうとするために、皮膚の下に血液をたくさん流そうとする身体の仕組みなのです。
飯田)ある意味の水冷式ということですね。
森田)ラジエーターのような仕組みです。
もう1つの仕組みは汗によって身体を冷やす
飯田)最近本当に暑くなって来ていて、「異常気象だ」などと言われていますけれど、39度や40度のところもあるではないですか。そういう場合でもラジエーターの仕組みは使えるのですか?
森田)おっしゃる通りなのですが、その仕組みが働かないのです。私たちの体温は平均36度~37度です。いま気温が38度~39度のところなどいくらでもあるではないですか。そうするとラジエーターの仕組みは、気温が体温より高いときにはまったく働かないのです。
飯田)むしろ温められてしまいますからね。
森田)しかし、身体はそんなことも想定されているのか、もう1つの仕組みが働くのです。
新行市佳アナウンサー)どのような仕組みですか?
森田)2つ目の仕組みなのですけれども、身体に熱がこもると汗をかきますよね。汗が蒸発することで気化熱を奪い、身体の熱を逃してくれるのです。実はこの仕組みの方が、熱中症対策には力強いと考えられているので、こちらの仕組みであれば気温が40度だろうが、体温より高くなっても働くのです。
飯田)なるほど。
森田)ただ、汗が出ますと水分や塩分が奪われますから、きちんと補給しないと脱水になってしまい、熱中症の症状が進行してしまいます。
新行)汗を出して蒸発させることと、失われた水分と塩分を補うことは大切なのですね。
汗は完全にぬぐい取らず湿り気がある程度に拭く
森田)ですからまめな水分補給と、汗をかいたら水分と塩分を、とよく言われているのです。ちなみに汗の拭き方なのですけれども、お二人はどんな感じで汗を拭いていらっしゃいますか?
新行)ハンドタオルくらいのもので、だいたいパタパタと押さえて拭きます。あまりゴシゴシはしないかなという感じです。
飯田)私はとにかく力強く拭くという感じで、乾くまで拭きます。
森田)理論的には、汗の拭き方にしてもバスタオルなどでしっかり拭いてしまうよりも、少し湿り気がある程度に拭く方がよいと考えられています。
飯田)そうなのですか?
森田)2つ目の仕組みを思い出してください。少し湿り気がある程度に拭いて、団扇や風などで、皮膚から汗を蒸発させることによって気化熱を奪わせる。これが身体を冷やすにはちょうどいいのです。汗を完全に拭き取ってしまうと、そこから汗が蒸発できなくなってしまうので、熱がこもりやすいのです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます