東京都医師会理事で「ささき眼科」院長の佐々木聡氏が2月2日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。周辺から徐々に見えなくなって行く「網膜色素変性症」について解説した。
網膜色素変性症 ~光を感じる細胞が壊れ、周辺から見えなくなって行く
飯田浩司アナウンサー)「網膜色素変性症」という病気についてですが、どのような病気なのでしょうか?
佐々木)目の内側の眼底には、網膜という光を感じる膜があります。その膜は視細胞という光を感じる細胞でできているのですが、視細胞そのものが壊れて、光を感じなくなってしまう病気です。
新行市佳アナウンサー)なぜ壊れてしまうのですか?
佐々木)半数は何らかの遺伝的な要因で、半数は「孤発例」と言って遺伝的な要因がはっきりせずに起こるものです。いずれにせよ、視細胞の光を感じる遺伝子のところに異常があって発症すると考えられています。
新行)自覚症状はあるのですか?
佐々木)周りの光をよく感じる細胞からやられて行くことが多いので、1つは夜盲、鳥目の症状があります。暗いところで光が見えにくくなる。それから周辺が見えにくくなりますので、視野の狭窄が起きる場合もあります。進行すると、真ん中にある錐体細胞という細胞もやられるので、中心の視力も見えにくくなって行きます。
完治させる治療法は見つかっていない
飯田)治療法はあるのですか?
佐々木)残念ながら完全に病気を治すような治療法は、いまのところ見つかっていません。病気の進行を遅らせるために内服治療を行います。「アダプチノール」という薬や、ビタミンAなどの循環改善薬を服用していただくのですけれども、治療の効果は限定的なものです。
飯田)進行を遅らせる。
佐々木)少しでも遅らせるという感じですね。
さまざまな治療法が研究されている
飯田)新しい治療法の研究は進んでいるのでしょうか?
佐々木)網膜神経保護治療や遺伝子治療、網膜幹細胞移植、人工網膜など。あとは皆さまご存知のiPS細胞など、さまざまな研究がされています。
飯田)iPS細胞なども。
佐々木)実用化されるには、もう少し時間がかかると言われております。
IT機器によって低視力でも仕事を続けることができる
新行)網膜色素変性症でありながら、仕事をしている方もたくさんいらっしゃると思います。進行性の症状に対し、どういう付き合い方で仕事をしているのか、例があれば教えてください。
佐々木)網膜色素変性症そのものが、人によって進行の仕方に大きな違いがあります。発症の早い方は残念ながら、早いうちに視覚障害が強くなります。逆に網膜色素変性症とわかっていても一生、ほとんど影響が出ない方もいます。残念ながら早いうちに網膜色素変性症を発症した方で、いろいろな事例があるのですけれども、編集の仕事をされている方のお話があります。
新行)編集者の方。
佐々木)この方は編集の仕事をされていますので、たくさんの文字を見なければいけないのですが、パソコンの色を低視力用に変えて作業なさっています。文字を大きくしたり、コントラストをいじったりするのです。
新行)白黒反転にしたりとか。
佐々木)そうです。入力もキーボードではなく、音声入力を使うこともできます。そのように、IT機器を活用して仕事を続けられるという例がございました。
飯田)ある程度テクノロジーによってサポートできるということは、昔に比べれば選択肢が出て来たのかも知れませんね。
佐々木)低視力の方を支える技術は期待できると思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます