天国と地獄? 北陸新幹線金沢開業からコロナ禍の7年を、老舗駅弁店の8代目はどう見たのか? ~金沢駅弁・大友楼

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

北陸新幹線の開業で大きく沸いた平成27(2015)年の金沢。その5年後、東京オリンピックの開催とともに、世界各国からやって来た多くの観光客で潤うはずでした。しかし実際は、ご存知のように新型コロナウイルスのパンデミックによって、その目論見は大きく外れることとなりました。まるで天国と地獄のような、新幹線開業ブームの熱狂と外出自粛の静寂。そして来たる敦賀延伸。金沢の老舗駅弁屋さんは、どのように感じているのでしょうか?

画像を見る(全10枚) 大友楼・大友佐悟常務取締役

「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第33弾・大友楼編(第4回/全6回)

3月14日で金沢開業から7年を迎えた北陸新幹線。かつて、越後湯沢~金沢間を走っていた在来線特急の愛称から昇格した「はくたか」は、上越妙高以西の各駅に停まる列車として、ほぼ毎時1本運行されており、日中の列車の中心となっています。「はくたか」でも、東京~金沢間の所要時間は約3時間。自由席も連結されていて、比較的気軽に乗車できる列車です。

W7系新幹線電車「はくたか」、北陸新幹線・新高岡~金沢間

明治時代から、金沢の駅弁を手掛けているのが「株式会社大友楼」。加賀藩御膳方にルーツを持ち、いまも、金沢のまちの中心部で料亭を営業していることでも有名です。その8代目・大友佐悟(おおとも・さとる)常務取締役のインタビュー、今回は、北陸新幹線金沢開業からコロナ禍まで、この7年あまりを振り返っていただきました。

大友楼あんと店には、国鉄8620形蒸気機関車のプレートがあって、鉄道構内営業者の誇りを感じさせる

●予想をはるかに超えた北陸新幹線の開業効果!

―平成27(2015)年の北陸新幹線金沢開業では、どんな変化がありましたか?

大友:新幹線効果は、予想をはるかに超えていました。当時は弊社でも、身内を含めて、動ける人間は全て(駅弁の製造)現場に入ったほどです。金沢が新幹線の終着となり、首都圏方面から多くのお客様がいらっしゃって、金沢市にとっても、かなりの経済効果がありました。また、上り新幹線のグランクラスにおける食事を提供(2020年まで)したことで、弊社のブランド力も拡大したと自負しています。

―新幹線の開業に当たって、どのような準備をされましたか?

大友:駅構内の金沢百番街「あんと」が整備されることになり、大友楼「あんと店」を出店いたしました。料亭のイメージを打ち出しながら、高級感を持たせるため、一歩入り込んでお買い求めいただく対面式のお店としました。ただ、新幹線効果も薄れてきたいまでは、一歩、お店にお入りになるのを躊躇されるお客様も見受けられます。ご購入のしやすさと、料亭のイメージをどう両立させるかは、今後の課題だと思っています。

減便が続いた在来線特急(683系電車・特急「サンダーバード」、北陸本線・加賀笠間~美川間)

●会社を挙げて乗り越えているコロナ禍

―新幹線効果が薄れてきたところでのコロナ禍、ご苦労も多かったでしょうね?

大友:本当に悔しい気持ちでいっぱいです。社員、パートさん、アルバイトさん、みんなに苦労をかけました。働いてもらいたくても、仕事がない状態が続きましたので。2020年5月の大型連休では、金沢市内の飲食店が集まり、パチンコ店の広い駐車場をお借りして、ドライブスルーの弁当販売を行ったり、料亭でも1000円の「料亭弁当」を作って店の前に長机を出して私も声を出して販売するなど、少しでも売り上げ確保につなげました。

―コロナ禍で「見直し」をされた点はありますか?

大友:生産工程の見直しや原材料の見直しなど、これまで日常に忙殺されて、なかなか手を付けることができていなかったことに取り掛かりました。いちばん変えたのは「人」ですね。これまで駅弁店と言いますと、とにかく夜中から作り出して……というのが一般的でしたが、シフト替えなどで、必ずしも夜中に出勤しなくても、健康的な生活時間帯で作業することで、より少ない人数でも、気持ちよく働いていただけるような形を作っていきました。

E7系新幹線電車・回送列車、北陸本線・松任駅付近

●北陸新幹線・敦賀開業まで2年、新作弁当も開発!

―2年後には北陸新幹線が敦賀へ延伸されます。金沢の「まちの力」を考えますと、私はいわゆる“途中駅”にはならないと思っていますが、いかがでしょうか?

大友:まだどのような人の流れになるか不透明なところはありますが、延伸しても引き続き、首都圏や関西地方から、金沢へぜひお越しいただけたらと思います。そして金沢駅に下り立っていただいたお客様には、金沢らしい美味しくて、安心・安全なお弁当をご提供したいです。私たちは「金沢らしさ」を前面に押し出していくことが強みだと思っていますし、お客様が望まれることでもあると思います。

―そのなかで、新作も開発されたそうですね?

大友:約半年前から「ちょい弁当」(864円)という弁当を発売しました。「ちょっと」という意味とお客様に「Choice」いただけるという意味を掛けた弁当として開発しています。当初は、お客様の好みに合わせて3つの食材を選んでいただけるようにするつもりでしたが、コロナ禍ですので、さまざまなおかずの組み合わせを、予め1つの折にした上で、従来の駅弁と比べて、比較的お求めいただきやすい価格帯で販売しています。

ちょい弁当(焼肉丼)

大友楼「あんと店」をはじめ、金沢駅ホーム売店などでも販売されている「ちょい弁当」。画像の「焼肉丼」の他に、「鶏甘酢あん海鮮チリソース」や「青椒肉絲えびブロッコリーマヨネーズ和え」といった中華風の味付けの弁当も販売されていて、さまざまな味をチョイスすることができます。それでいて、価格帯は3桁に抑えられており、北陸新幹線や特急「サンダーバード」「しらさぎ」などに短距離で“チョイ”乗りするときにも重宝しそうです。

ちょい弁当(焼肉丼)

【おしながき】
・白飯 大葉
・焼肉(牛肉、玉ねぎ、ピーマン、レッドピーマン)
・厚焼き玉子
・ほうれんそうのおひたし 人参添え

ちょい弁当(焼肉丼)

「ちょい弁当」(焼肉丼)は、石川県産コシヒカリの白いご飯の上に大葉が敷かれていて、その上に、丁寧に焼き上げられた牛焼肉と玉ねぎ、ピーマンなどの野菜が載っています。これに玉子焼きとほうれん草のおひたしに人参が添えられていて、お値打ち価格帯でも、しっかり手間がかけられているのが嬉しいところ。もちろん焼肉は冷めても美味しく、そして柔らかく仕上げられており、料亭の味と駅弁屋さんの技が感じられます。

521系電車・普通列車、IRいしかわ鉄道・津幡~倶利伽羅間

北陸新幹線の開業に伴い、北陸本線の金沢以東は、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道の第3セクター各社に移管されました。かつて、在来線特急が行き交った線路も、2~4両の普通列車と貨物列車が主役です。北陸新幹線を「新幹線eチケット」で乗車すると、北陸本線や各支線と3セク各社の路線が、2日間乗り放題になる「北陸周遊乗車券」(2580円)の販売もありますので、上手に活用したいものです。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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