バイデン政権が石油備蓄を放出する「もう1つの理由」

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国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙氏が4月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。戦略石油備蓄から日量100万バレルを今後6ヵ月間放出するという米ホワイトハウスの発表について解説した。

バイデン政権が石油備蓄を放出する「もう1つの理由」

米南部オクラホマ州ポンカシティの石油精製施設=(共同) 写真提供:共同通信社

アメリカが過去最大の石油備蓄を放出へ

アメリカのホワイトハウスは3月31日、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰対策として、戦略石油備蓄から日量100万バレルを今後6ヵ月間放出すると発表した。総量は過去最大の1億8000万バレル規模に達する。市場への供給量を一段と増やし、原油高に歯止めをかける狙いがあると見られている。

飯田)ガソリン価格などが上がり、アメリカでは物価全体も上がってきていますが、その対策ということですか?

神保)アメリカ経済の目下最大の課題はインフレ対策で、インフレを牽引しているのがエネルギー価格の高騰です。ウクライナ危機が追い打ちをかけて、原油、天然ガスの価格が国際的に上がると、インフレ圧力を止めることができません。ここで伝家の宝刀である備蓄を放出して価格を安定させ、インフレ圧力を抑止することが大切です。そろそろしっかりと見通しをつけないと、中間選挙に響いてきますね。

市場を安定させて中間選挙に臨みたいバイデン政権

飯田)6ヵ月間放出し続けるというのは、中間選挙狙いということですか?

神保)それまでに市場を安定させ、投資家の影響を最小限にして、中間選挙に臨むということが大事です。ここでウクライナへの対応が支持されず、経済も悪くするということになると、民主党が議席を減らして、大統領選へ悪い影響を及ぼす可能性もあります。仮にトランプ復活というような流れができてしまうと、皮肉ですが北大西洋条約機構(NATO)を壊すのはプーチンさんではなく、トランプ元大統領になりかねない。そんな歴史の流れを導くのは民主党にとってはあり得ないことなので、この6ヵ月間の経済安定は非常に重要だと思います。

飯田)一時1バレル=100ドルを切ってきましたが、米国産標準油種(WTI)の指標では、1バレル=101.30ドルとなりました。なかなか狙い通りにはいかないということですか?

神保)当然、アメリカだけでなく産油国全体の動きが価格に影響しますので、どこまで協調してエネルギー価格を安定させられるかどうかが腕の見せどころだと思います。

シェールガスの産油国でもあるアメリカだが

飯田)一方でアメリカは、シェールガスやシェールオイルの産油国でもあるはずです。バイデン政権がその解禁に踏み切るのは難しいのですか?

神保)詳しくないのですが、シェールガスの開発は価格が高騰していることが前提で加速するらしいので、いまがチャンスだとは思います。ただ、当然、掘削技術と生産技術を確立するにはタイムラグが生まれるので、体力はあっても、それが価格安定につながっていくかというところは、長期的な見方が必要だと思います。

飯田)民主党のなかには、環境を重視してシェールガスやシェールオイルに後ろ向きな人たちもたくさんいますよね。

神保)ESG推進派やリニューアブルエナジーを推進したい人たちと、エネルギー価格の安定では方向性が一致しないというジレンマがあると思います。

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