欧米や中東で感染が拡大する「サル痘」とはどういう病気なのか
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東京都医師会副会長で感染症担当、「角田外科消化器科医院」院長の角田徹氏が5月30日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。「サル痘」について解説した。
「天然痘」に近い症状が出る「サル痘」 ~1~10%の死亡率
飯田浩司アナウンサー)ここに来て大きな話題となっている「サル痘」について伺います。どういう病気なのですか?
角田)1980年に世界保健機関(WHO)が世界からなくなったと根源宣言をした「天然痘(痘そう)」という病気があるのですが、それと似たような症状を示します。熱が出て、皮膚に水ぶくれや膿の塊のようなものができる病気です。
飯田)サル痘は死に至るような怖い病気ですか?
角田)まだはっきりとわかっていないのですが、天然痘の場合は、50%近くが亡くなるというデータがあります。「サル痘」は1~10%くらいの死亡率ではないかと言われています。
カニクイザルから人間に感染
飯田)いまのところは欧米を中心に流行しているのですか?
角田)見つかっているのはアフリカから欧米が中心のようです。
飯田)この病気は昔からあったのですか?
角田)サル痘自体の報告はあったようですが、あまり問題になるほどの数ではありませんでした。アフリカで局地的に起こっていたぐらいだと思います。
飯田)もともとは風土病のような感じだったのですか?
角田)そうですね。カニクイザルというサルを中心に発症して、それが人間に感染したようです。
治療方法はない ~感染が見つかった場合は保健所に報告
飯田)どのような治療方法があるのですか?
角田)残念ながら治療方法はありません。ただ、感染してから4日目くらいまでに天然痘のワクチンを打つと、かなり有効だと言われています。でも、いま天然痘ワクチンはほとんど手に入らないのです。日本では1976年以降、打たれていませんから。あとは普通の対症療法として、脱水にならないように点滴を打つなど、そういう治療がメインになります。
飯田)そうすると、もし日本に入ってきたら、警戒しなければならないですか?
角田)主に接触感染や、コロナ感染症と同じ飛沫感染で広がると言われていますから、ある程度、感染が拡大する可能性はありますね。もし日本で見つかった場合には、すぐ保健所に報告する必要があります。4類感染症になっていますから、全数報告対象です。しっかりと隔離して治療しなければならない病気だと思います。
飯田)ある程度きちんと対処していけば大丈夫ということですか?
角田)そうですね。天然痘に比べれば、はるかに重症化率は低いと思います。ただ、感染が広がることは避けなくてはいけませんから、万が一、症例報告があれば気を付ける必要があります。
1980年に根絶宣言が出された天然痘
飯田)天然痘は1980年に根絶宣言が出たということですが、仮にいま天然痘の患者が出たとしたら、お医者さんたちは症状などを見てわかるものなのですか?
角田)天然痘は私も見たことがありません。教科書を読むと、熱が出てから下がり、もう1回熱が出るときに全身に特徴的な水ぶくれが出るので、皮膚の所見は典型的だと思います。いまの医師は実際に天然痘に罹った患者さんをほとんど見たことがないので、そういう意味では、教科書上の病気になってしまいましたね。
飯田)撲滅した病気であっても、教科書では習うのですね。
角田)それは習います。一応、ウイルスはアメリカやロシアの「BSL-4(バイオ・セーフティー・レベル4)施設」で、将来のために保管されています。逆にバイオテロなどには本当に気を付けなければいけないですね。
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