黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(5月19日放送)に「株式会社ウエカツ水産」代表取締役の上田勝彦が出演。自身の活動の内容について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。5月16日(月)~5月20日(金)のゲストは「株式会社ウエカツ水産」代表取締役の上田勝彦。4日目は、これからの旬の魚と自身の活動の内容について---
黒木)いまごろの旬の魚は何ですか?
上田)普段は値段も高い真鯛が産卵間近になり、浅いところにやってくるのですが、そのために安くなります。産卵前の真鯛というのは、400~500グラムぐらいの小さい真鯛の方が美味しいのです。1キロ以上の大きいマダイは産卵にエネルギーが取られてしまうからです。また、飛び魚がそろそろ出てきますね。
黒木)真鯛はどのように食べるのがお好きですか?
上田)小さい真鯛なら塩を振って塩焼きですね。真鯛は万能選手で、生、焼く、煮る、蒸す、すべていけます。そこは適宜その日の好みに合わせて調理ができます。
黒木)そして飛び魚も。
上田)飛び魚という魚は、生きているものを齧っても美味しいのです。
黒木)そうなのですか!
上田)それぐらい味が「ガツン」とある筋肉質の魚です。
黒木)それは海でエネルギッシュに飛び回っているからですか?
上田)そうですね。まったく油が乗っていません。飛ばなければいけないので、余計な脂肪をつけられない。
黒木)だから、そのままかじれるぐらい味があるのですね。
上田)また、春らしさという意味では、サヨリもいいと思います。他にもコウイカ、関東ではスミイカと言うのでしょうか、このようなものもメキメキと育ってきています。ヤリイカが終われば今度はケンサキイカが出てきます。
黒木)あるときに料理屋さんから、「これを教えてください」というオファーが来たそうですね。
上田)これもまた縁のもので、このような仕事をしていると、「いい店を教えてくださいませんか」という依頼が来るのです。重要なのはスーパーでした。いま日本国民の8割ぐらいが食品をスーパーで買っているという状況なのですが、「スーパーの魚は美味しいの?」と聞いて、「美味しいよ」と答える人はいません。
黒木)そうかも知れませんね。
上田)もちろん、とても頑張っているスーパーもあります。重要なのは、来た魚の初買い、下処理の仕方、パックの仕方、あとは伝え方ですね。
黒木)伝え方ですか?
上田)魚はわかりにくいと思いませんか? 「東シナ海のアジです」と言われても、「東シナ海ってどこですか?」というような話になってしまう。
黒木)そうですね。
上田)スーパーからの依頼で下処理をきちんとできて、料理提案もでき、魚の魅力を伝えられる人を育成する。そういう売り場をつくるということで、何軒かスーパーの指導をさせていただいています。
黒木)あとはどのような活動が多いのですか?
上田)水産の世界というのは悩み事が多いのです。そのようなところに呼ばれれば出かけていき、まず事情を聞いて、教えられるものがあれば教えますが、そうでなければ一緒に考えます。それが長い付き合いになる場合もありますし、そこで解決する場合もあります。
黒木)なるほど。
上田)あとは地域です。1つの県や市や町、そのような単位で水産業を軸にして地域づくりをしたいと言われることがあります。道の駅などもそうですね。あのようなところで人を育て、お客さんに提供する魚をよくしていくというような仕事です。訳がわかりませんよね(笑)
黒木)1つひとつ納得するばかりなのですが、紅ズワイガニの話を伺ってもいいですか?
上田)昔は、紅ズワイガニは赤くて毒々しくて、水っぽいという評判が立っていて、売れませんでしたが、いまはそのようなことはありません。
黒木)それは上田さんがアドバイスなさったのですか?
上田)それまでの紅ズワイガニは、「茹でて食べる安い蟹」という庶民のものだったのですが、それだけでは価値は上がりません。
黒木)それだけでは。
上田)庶民のための楽しみは残しつつ、一方で、品質のいいものは、「上等な料理」に変えていかなければいけないと思ったのです。
黒木)上品な料理に。
上田)観光客が来たときに、茹でて食べるだけでなく、「いろいろな種類の料理を揃えておくこと」が必要だと思いました。
黒木)茹でるだけではなく。
上田)私はもともと資源管理が専門の仕事だったのです。資源管理というのは漁師の痩せ我慢なのです。本当はもっと獲りたいけれど我慢をする。獲らずに我慢するためには、値段を上げて支えなければいけない。そのためにも魅力のある蟹にしなければいけなかったのです。5年間はその仕事でした。
上田勝彦(うえだ・かつひこ)/ 株式会社ウエカツ水産 代表取締役
■1964年・島根県出雲市出身。
■幼少のころから魚に興味を持ち、釣りと魚の研究三昧の日々を送る。
■長崎大学水産学部在学中から「シイラ漁船」に乗り込み、漁師として活動。卒業後は漁師の道に進もうと考えるも、1991年水産庁入庁。
■瀬戸内海漁業調整事務所勤務、調査捕鯨業務、マグロ漁場開拓業務などの業務を経て、本庁に復帰し、水産物普及業務に邁進。
■2015年に退職し、「ウエカツ水産」を起業。「生産」「流通」「小売」「飲食」「家庭の食卓」を柱に、魚食文化普及に尽力。
■漁港で活け締め(神経締め)の技術指導、料理店やスーパーの厨房で魚の扱いを指南、YouTubeから家庭に向けて魚料理の仕組みを伝えるなど、さまざまな活動を実施。
■あらゆる現場に足を運び、漁業、水産、魚食に関わるすべての人に向き合い、「魚を食べる意味」を伝え続けている。
■著書に『旬を楽しむ魚の教科書』『ウエカツの目からウロコの魚料理』『ウエカツさん直伝! 子どもが食いつく 魚レシピとヒミツ』
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳