中国や欧米諸国のやり方を見ながら、日本の立ち位置を見定めることが必要

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東京外国語大学教授で国際政治学者の篠田英朗が6月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・習近平国家主席の香港訪問について解説した。

東京・渋谷周辺で、「香港に自由を」などと訴えながら、黒い旗を掲げて練り歩く在日香港人や日本人のデモの参加者ら。中国共産党による人権弾圧などに抗議した=2022年6月12日、東京・渋谷 写真提供:産経新聞社

中国の習近平国家主席が香港を訪問

7月1日に香港で中国返還25年の式典が行われるのを前に、中国の習近平国家主席が6月30日に香港を訪問すると、香港の主要メディアが伝えた。習主席が中国本土外に出るのは2020年1月以来で、訪問を前に香港では厳戒態勢が取られている。

飯田)香港を中国本土の外と、もはや捉えていいのかという状況ですかね。

篠田)それはそうですよね。まだ国外に出るというケースにはなりませんが、確かに本土から出るということであればそうなのだと思います。

飯田)厳戒態勢を取るということですが、香港国家安全維持法の制定から2年が経ちます。

篠田)そのような政治的な思惑もあって、本土から出ると言いながら、「中国の一部だ」という認識を確立するためにも行かれるのだと思います。反面、ゼロコロナ政策をいつまで続けるのか、この雰囲気をどこまで続けるのかという情勢のなかでの訪問ということにもなります。

中国や欧米諸国のやり方を見ながら、日本の立ち位置を見定めることが必要

飯田)先日まで上海がロックダウンされていて、かなり市民からの不満が高まっていました。先日も北京の共産党トップが「5年続く」と発言し、これが大炎上して撤回されました。

篠田)「徹底してやれ」と言われたら、そのぐらいの計画がなければやったことにならないというのは、ある意味で正論とも言えます。しかし、やらなければいけない市民側に立ってみれば、「冗談はやめてくれ」ということになります。そのようななかで、中国の人たちも「先行きが見えない」と感じているのだと思います。

飯田)先行きが見えない。

篠田)日本に引き寄せてみると、犠牲はかなり出てしまいましたが、欧米諸国は自由主義の国として、「我々にとって自由は大切なものなのだ」という価値観をはっきり出す形で、現在、マスクもしない生活をしています。

飯田)そうですね。

篠田)我々はアジア的な感覚で、「そうは言ってもマスクぐらいしても気にしないから大丈夫」と、暑いなか皆さんマスクをしています。そこは人権を大切にしながら、マスクを着用するというアジア的な文化は受け入れればいいと思います。しかし、中国のようにはいかない。

飯田)中国のやり方は。

篠田)中国や欧米諸国のやり方を見ながら、自分の立ち位置をしっかり見定めていくということが、日本には必要なのではないでしょうか。

人権を守るために政府が緊急事態対応をしなければいけない場面もある ~国際的な立ち位置も意識した国家運営、憲法改正

飯田)自由、人権、法の支配というところで、私権をどのように制限するかという部分は真剣に考えないと、「日本は別の価値観なのか」と誤解されかねないですよね。

篠田)日本人なので、大日本帝国憲法で緊急事態条項があったような時代を参照したり、研究するという考え方も当然あるとは思います。国際法や諸国の憲法のなかにも、緊急事態の条項はあります。たとえば人権1つを取っても、緊急事態は人権法を持っていても行っていい。むしろ人権を守るために、政府が緊急事態対応をしなければいけない場面があります。

飯田)人権を守るために。

篠田)ただ、緊急事態だからといって、いきなり拷問したり奴隷のように人を扱うことは絶対に許されません。いまウクライナ情勢で問題になっていますが、「緊急事態であれば、こういうことは容認しなければいけないのではないか」という国際的な考え方はあります。

飯田)国際的な。

篠田)日本は大日本帝国憲法も参考にしながら、国際法の基準も参照していく。そして、NATOから価値の共同体のパートナーとして見ていただいている国であるという性格も維持するという、国際的な立ち位置も意識した国家運営、憲法改正の考え方も、もっとあっていいのではないでしょうか。

日本のアイデンティティをはっきりさせるためにも、「国際秩序の尊重」を強調していかなければいけない

飯田)人権や自衛権をどうするのかという話では、かつて国際連盟というものがあり、不戦条約などもありました。そして国際連合ができて、その規約もあり、日本国憲法はその流れのなかでつくられたものなのだと篠田さんはご著書のなかで書かれています。ここの部分も意識していかなければならない、むしろ大事なのだということでしょうか?

篠田)いま日本政府は、NATOの構成諸国などの同盟国と一緒に規範を大切にする、国際秩序を守っていくという立場をはっきりさせています。その背景には、アジアにおける安全保障の直近の情勢があります。

飯田)アジアの情勢が。

篠田)さらに言えば、歴史的な背景もあります。日本が「侵略もいいではないか」ということを言うと、単純に現状を受け止めるだけではなく、「自分の歴史を反省していないのか」という話になってしまいます。日本という国のアイデンティティをはっきりさせるためにも、国際秩序の尊重を強調していかなければいけない政府の立場がある。そのインプリケーションを、我々もしっかりと考えていかなければいけないのだと思います。

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