手術することなく近視矯正できる「オルソケラトロジー」
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東京都医師会理事で「ささき眼科」院長の佐々木聡氏が7月21日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。ハードレンズの危険性と新たな「オルソケラトロジー」というナイトレンズについて解説した。
長年のハードレンズ使用によって起こる「眼瞼下垂」 ~まぶたが下がってくる
飯田浩司アナウンサー)コンタクトレンズについてですが、目の健康などを考えると、ソフトレンズよりもハードレンズの方がいいのかなと思うのですが。
佐々木)少なくとも感染性角膜炎に関しては、ハードレンズの方が安全性は高いです。ただ、ハードレンズは1つ厄介な問題があります。ハードレンズを長年、何十年も使っている方のなかには、「眼瞼下垂」というまぶたが下がってくる病気を発症する方がいらっしゃるのです。
飯田)目が開きづらくなるということですか?
佐々木)開きづらくなりますね。人間、誰でも長く生きていれば、まぶたの筋肉が落ちてまぶたが下がってきます。「年を取ったら目が小さくなった」とおっしゃる方が多いと思うのですが、あれはまぶたが下がっているからです。それが強く起こるのが、ハードコンタクト使用による眼瞼下垂です。
飯田)普通にしていても目が閉じてしまうのですか?
佐々木)一生懸命開こうとしても、眼瞼挙筋というまぶたを上げる筋肉がたるんでしまうので、筋肉が引っ張れなくなってしまうのです。だから開けられなくなってしまう。
飯田)そうなると、まったく見えなくなってしまうということですか?
佐々木)まずは見た目の問題です。いつも眠そうな目をしているように見える。瞳が隠れるほど開けられなくなれば、治療の対象になります。
ハードレンズそのものがまぶたの組織を変性させてしまう
新行市佳アナウンサー)治療はどう行うのですか?
佐々木)薬物療法はないので、形成手術になります。
飯田)ハードコンタクトだと、それがより垂れてしまう。
佐々木)そうですね。昔はハードレンズを外すときにまぶたを引っ張ったのです。上下のまぶたにテンションをかけてパチッと外すのですが、それがよくないのだと考えられていました。しかし、いろいろな研究で、実はハードレンズそのものがまぶたの組織を変性させてしまい、それが原因で起きることがわかりました。
飯田)装着していることがリスクになると。
佐々木)ですから長期間使っている方には、「発症する前に、そろそろハードレンズはやめた方がいい」とアドバイスします。
オルソケラトロジーの治療 ~特殊なコンタクトレンズを寝ている間に装着することで視力を矯正する
飯田)コンタクトレンズを使った最新治療などはありますか?
佐々木)「オルソケラトロジー」という方法があります。「オルソケ」と略されるもので、特殊なハードコンタクトレンズを使います。昼間に装着するのではなく、夜寝ている間に装用するのです。「ナイトレンズ」とも言われます。
飯田)寝ている間ということは、見るためのレンズではないということですか?
佐々木)夜寝ている間に、角膜を変形させるのです。
新行)変形させられるのですね。
佐々木)そのために特殊に設計されたコンタクトレンズです。寝ている間は酸素が少ないので、酸素透過性の高いものを装用し、寝ている間に角膜を変形させる。朝起きてレンズを外すと、よく見えるようになっているのです。
飯田)目がよくなっている。
佐々木)そうです。
レンズの装着を中止すれば角膜は元の状態に戻る
飯田)「近視は1回なってしまったら、もうよくならないのだから進行させるな」とよく言われたものですが。
佐々木)近視が治るというわけではなく、コンタクトレンズを入れたときのように屈折の状態を変えているだけなので、昼間は見えていますけれども、時間が経つと角膜が元の状態に戻ります。その日の夜には、またレンズを装着しなければなりません。
飯田)夜にまた。
佐々木)まだ現時点だと、お子さんに対しては慎重投与ということになっていますけれども、これから研究が進めば、近視抑制のために普及していく可能性はあります。
飯田)海外の事例などを見ると、ある程度、近視抑制には効果があるということが出ていますよね。
佐々木)はっきりと出ています。オルソケラトロジーと「低濃度アトロピン」という目薬の併用によって、より効果が高まるということが研究でわかっています。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます