松本・浅間温泉でひと息入れて、月見気分で駅弁旅!
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「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
国宝・松本城がそびえる信州・松本は、郊外に温泉地がある「温泉のまち」でもあります。なかでも、浅間温泉は1000年以上の歴史を誇り、松本城のお殿様も愛した、由緒ある温泉です。少し熱めのアルカリ性単純温泉で、旅の疲れを癒したら、帰りの旅路でいただきたい、松本城のお殿様ゆかりの駅弁と合わせてご紹介いたしましょう。
新宿からの特急「あずさ」が、諏訪湖の畔を駆け抜けていきます。この辺りに降る雨は、諏訪湖から天竜川に流れて遠州灘に注ぎます。次の岡谷の先にある塩尻に降る雨は、奈良井川、犀川を経て千曲川に合流。信濃川となって日本海へと注ぎます。中央本線・岡谷~みどり湖間にある「塩嶺トンネル」は、中央分水嶺を越える約6kmのトンネルです。昭和58(1983)年に開業、辰野回りだった「あずさ」の大幅な時間短縮を実現しました。
多くの「あずさ」の終着・松本の駅前から路線バスで20分あまり、市内の「浅間温泉」へ足を運んでみました。浅間温泉は開湯1300年とも云われる歴史ある温泉。江戸時代は松本城のお殿様も通ったと言います。浅間温泉は日帰り入浴が充実しているのも特徴。なかでも、「ホットプラザ浅間」は、営業時間(10:00~24:00)が長めで、最寄りのバス停もあって、旅行者には使いやすい施設です。
ホットプラザ浅間の前には無料の足湯もあり、気軽に温泉を楽しめるようになっています。注がれているお湯は、アルカリ性の単純温泉ですが、ポカポカした感覚がいつまでも続き、よく温まります。大正13(1924)年~昭和39(1964)年までの40年間、浅間温泉へは松本駅前から路面電車が出ていました。いま、その面影が感じられる場所は、ほとんどありませんが、温泉でぬくぬくしながら、古の景色を思い浮かべてみるのも良さそうです。
松本城のお殿様も愛した温泉を楽しんだら、殿様ゆかりの松本駅弁をいただきたいもの。松本駅弁・イイダヤ軒の「月見五味(ごもく)めし」(900円)は、随一のロングセラーです。この駅弁は、松本城主・石川数正が、鳥や山菜といった狩猟の獲物を武者料理して、松本城の月見櫓で宴を催し、月を眺めながら城下の繁栄を願ったという言い伝えに由来。いまはボックスタイプのパッケージに、プラスチック製の丼型容器が入っています。
【おしながき】
・茶飯
・錦糸玉子
・豚肉煮
・ゆで海老
・ワカサギの甘露煮
・ゆで玉子
・山菜
・ゼンマイ煮
・竹の子煮
・山ごぼう
・リンゴのしそ巻
・紅しょうが
うっすらと月夜の松本城がデザインされたふたを開けると、“月見”五味めしにふさわしく、満月をイメージしたゆで玉子が目を引きます。茶飯の上にワカサギや山菜をはじめとした信州の山の幸がたっぷりと盛り付けられていて、信州・松本へ来たなぁという旅ごころが、くすぐられる感じがします。信州の旅の締めくくりに、上り列車の窓から月夜を眺めながら、いただくのも良さそうです。
今年(2022年)の中秋の名月は、少し早めの9月10日。信州で「名月の里」と言えば、日本三大車窓の1つにも数えられている篠ノ井線・姨捨駅の周辺です。特急「しなの」は、絶景の姨捨駅を高速で通過してしまいますが、それでも夜間を走る列車は、車窓に広がる善光寺平の美しい夜景を存分に楽しめます。さあ、今年は雨に降られずに、まん丸のお月様が見られるでしょうか?
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/