「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
篠ノ井線の松本と、北陸新幹線の糸魚川の間、105kmあまりを結んでいるJR大糸線。長野県大町市の「大」と、新潟県糸魚川市の「糸」から、「大糸線」と命名されています。今年(2022年)8月15日には、全線開通から65年を迎え、記念列車も運行されました。大糸線は、夏は登山の観光客、冬はスキーで訪れる人が多く、見どころも多い観光路線。繁忙期には、特急列車も増発されます。
今年も稲が実りだした長野・大町市の郊外を駆け抜けていく、新宿行の特急「あずさ」号。「あずさ」の定期列車が大糸線・南小谷に直通するようになって、今年で40年を迎えます。信濃大町・白馬へは、平成9(1997)年の北陸新幹線長野開業以降、オリンピック道路経由の特急バスが運行されていますが、東京から乗り換えなしで移動できる「あずさ」は、大きな荷物を抱えた山登りの皆さんには、重宝な存在ではないかと思われます。
大糸線の松本~白馬間には、国鉄時代から、繁忙期を中心に名古屋からの特急「しなの」も乗り入れています。名古屋~白馬間は、概ね3時間半の所要時間。長野発着の「しなの」は、6~10両の比較的長めの編成に対し、大糸線直通の「しなの」は、短い4両編成。オレンジ色の帯を巻いたステンレス車両が、安曇野を軽快に走り抜けていきます。次は9月下旬の連休ごろに、お目にかかることができそうです。
「あずさ」や「しなの」が駆け抜ける大糸線が走る安曇野は、信州有数の米どころにして、わさび田やりんご畑も広がるエリアです。そんな安曇野の幸を詰め込んだ駅弁の1つに、松本駅弁・イイダヤ軒の「安曇野釜めし」(900円)があります。いまもズッシリと重みのある陶器製の釜が使われていて、掛け紙を紐で結んだ装丁が郷愁をそそります。掛け紙にも北アルプスの山並みと共に松本城や道祖神、美術館が描かれていますね。
【おしながき】
・炊き込みご飯
・合鴨
・野沢菜炒め
・しめじ煮
・椎茸煮
・いんげん
・高野豆腐
・うずらの卵
・山ごぼう
・栗の甘露煮
釜めしのふたを開けると、信州の山の幸がいっぱい! 信州らしく野沢菜炒めをベースに、しめじや椎茸といったきのこもたっぷり入っていて、山ごぼうや高野豆腐といった具材は、“オトナの釜めし”といった雰囲気を感じさせます。派手さはあまりなくても、地元らしさを、大事にしている雰囲気が伝わってくる駅弁は、手に取るだけでホッとして、何となく心が温かい気持ちになるものです。
新宿や名古屋からの特急列車が乗り入れる大糸線ですが、南小谷から糸魚川までは、非電化区間で単行の気動車が1日7往復運行されるJR西日本の路線となっています。近年は厳しい状況が伝えられていますが、糸魚川では北陸新幹線と接続しており、東京~南小谷間は糸魚川回りのほうが速いこともあります。鉄道はたとえ本数は多くなくても、列車同士、列車・バスの乗り継ぎがいいことが利用される第一条件。鉄道と二次交通を含めた“トータルの使いやすさ”を考慮した地域の交通に関する議論をして欲しいものです。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/