駅弁を一層美味しく味わうなら、「掛け紙」をじっくり見よう!

By -  公開:  更新:

【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

鉄道150年を記念して、全国の駅弁各社31社が“復刻”をテーマとした駅弁を販売しているこの秋。名古屋駅の駅弁売場では以前から通年で「復刻弁当」が販売されています。そのレトロな掛け紙は、昔を知る人には懐かしく、若い世代は新鮮な印象を受けるもの。今回は乗り換えの途中で、久しぶりに手に取りました。

383系電車・特急「しなの」、中央本線・武並~恵那間

383系電車・特急「しなの」、中央本線・武並~恵那間

名古屋~長野間を約3時間で結ぶ特急「しなの」号が、中央本線を勢いよく駆け抜けていきます。「しなの」といえば、車体を傾けることでカーブでもスピードを維持して走ることができる、振り子式の電車でおなじみです。「しなの」に振り子式電車が投入されたのは、昭和48(1973)年のこと。現在の車両は、平成7(1995)年に営業運転を開始しました。振り子装置の改良や自己操舵機構によって、カーブの乗り心地が大幅に改善されました。

復刻弁当

復刻弁当

「しなの」の始発駅・名古屋駅の松浦商店「復刻弁当」(790円)は、レトロな掛け紙が施された、昭和の幕の内弁当をベースとする駅弁。いまは、85年前の昭和12(1937)年に使われた名古屋汎太平洋平和博覧会記念の掛け紙が復刻されています。描かれている名古屋城も、当時は江戸時代からの「国宝」。その横を軍用機と思しき飛行機が飛んでいく様子に時代を感じられます。博覧会の閉幕後、程なく日中戦争が勃発。8年後には、名古屋城も焼け落ちてしまったことを考えると、少々切ない気持ちになります。

【おしながき】
・白飯 小梅の梅干し
・焼き鯖
・蒲鉾
・玉子巻き
・煮物(ごぼう・竹の子・椎茸・鶏肉ほか)
・白身魚フライ
・牛肉の炒め煮
・日高昆布の佃煮
・くり豆
・さくら漬け

復刻弁当

復刻弁当

串焼きの焼き鯖・蒲鉾・玉子焼きのいわゆる“三種の神器”に、松浦商店自慢の煮物が入った基本に忠実な幕の内弁当。弁当の構成は現代風にアレンジされていますが、3桁の価格帯なのに、しっかりお腹にたまるお値打ちな駅弁です。昭和12年に駅弁を食べ、博覧会を見た世代の方はいま、ほとんどいらっしゃらないかと思いますが、当時の掛け紙を読み込めば、85年前にタイムトリップもできるのが素晴らしいところ。普通の幕の内にも、「時代の味」を加えてくれるのが、駅弁の掛け紙なのです。

211系電車・快速列車、中央本線・新守山~大曽根間

211系電車・快速列車、中央本線・新守山~大曽根間

名古屋駅の「復刻弁当」も、鉄道開業150年に合わせ、日本鉄道構内営業中央会加盟の31社が参加する“復刻”をテーマにした駅弁企画に参加していて、期間・数量限定で、記念のミニファイルが封入されています。東海地区では、1980年代半ばから活躍してきた車両が世代交代の真っ最中。車両の顔も、駅弁の掛け紙同様、「時代」を感じさせます。鉄道150年、日常の鉄道風景のなかに「時代」を感じると、鉄道旅はもっと楽しくなります。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

Page top