松茸のいい香りに秋を実感! 明知鉄道の「きのこ列車」に乗ってみた!

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

「駅弁膝栗毛」では、全国の駅弁と合わせて、「レストラン列車」の旅もご紹介しています。いまでは、全国のローカル線はもちろん、大手私鉄、JRまで、さまざまな「食」をテーマとした列車が運行されています。そんなレストラン列車の先駆けとなった第3セクターの鉄道が、岐阜県にあります。今回は、のどかな車窓を楽しみながら、松茸のいい香りに包まれて、秋の味覚を満喫しました。

明知鉄道アケチ10形気動車・急行「大正ロマン号」、明知鉄道明知線・飯沼~東野間

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秋空の下を駆け抜けていくのは、岐阜県を走る明知鉄道の急行列車「大正ロマン号」。明知鉄道は、旧・国鉄明知線を引き継いだ第3セクターの鉄道で、中央本線の恵那駅と明智駅の間、25kmあまりを結んでいます。恵那発の急行「大正ロマン号」には、名物の「グルメ食堂車」が連結されていて、時刻表にも「食堂車連結」のマークが入っています。列車は1両が普通車、残りが食堂車で、予約状況に応じて、最大3両が増結されます。

恵那駅で発車を待つ「きのこ列車」

恵那駅で発車を待つ「きのこ列車」

明知鉄道では35年前の昭和62(1987)年から、列車内で食事を楽しめる「グルメ列車」を運行してきました。10年あまり前からは、定期列車「大正ロマン号」に食堂車を連結した「グルメ食堂車」となり、列車内で地のものを使った旬の味が満喫できることから、人気を博しています。9月から11月の間はきのこづくし料理が楽しめる「きのこ列車」として運行。旅行代金も今年(2022年)は5000円と、リーズナブルな価格設定も魅力です(なお、通常は5500円、列車は月曜運休)。

明知鉄道恵那駅の改札口

明知鉄道恵那駅の改札口

「グルメ食堂車」は、乗車日の5日前までの予約が必要。7名以上予約が入った段階で運行が決定し、当日は、明知鉄道恵那駅の改札口で受付します。この際に明知鉄道の1日フリー切符を手渡され、改札前の壁に貼り出された座席表で座席を確認、列車入線を待ちます。なお、急行「大正ロマン号」(グルメ食堂車)の乗車には、名古屋11時発の特急「しなの9号」(多治見で快速乗り換え)が便利な列車となります。

「きのこ列車」車内

「きのこ列車」車内

明知鉄道の「グルメ食堂車」には、普段から明知鉄道を走っている車両が使われます。いわゆるロングシートの座席にテーブルが設けられ、乗車時にはすでに配膳されています。座席の間にパーティションが設置され、窓も数ヵ所開けられて、感染症対策もしっかりと行われています。列車が動き出すと、明知鉄道の添乗員の方が、料理の解説をはじめ、沿線の見どころなども紹介してくれて、旅気分が盛り上がっていきます。

きのこ列車の料理

きのこ列車の料理

【おしながき】
一、前菜盛り
鮎甘露煮
ボイル海老 栗甘露煮
枝豆 花蓮根
きんぴら
一、ロージ茸の生姜和え
あみ茸のみぞれ和え
香茸の旨煮
桜占地(さくらじめじ)と法蓮草の和え物
一、松茸の天婦羅 舞茸の天婦羅
いが栗揚げ しし唐
抹茶塩 レモン
一、松茸ご飯
松茸の土瓶蒸し
香の物
一、デザート

きのこ列車の料理

きのこ列車の料理

ふたを開けると、天ぷら、煮物、和え物ときのこづくしの料理が現れました。器と合わせて、彩りもよく、食欲がそそられます。松茸、舞茸、しめじといった定番きのこもさることながら、この日のイチオシ料理は、真ん中で黒く輝いていた「ロージ茸の生姜和え」。ロージ茸は、時として松茸よりも高価とされるきのこなのだそう。このような珍しい味覚が楽しめる場合もあることから、「きのこ列車」のリピーターになっているお客様もいらっしゃるとか!?

車内で盛り付けるあったかいきのこ御飯

車内で盛り付けるあったかいきのこ御飯

保温のジャーが持ち込まれた車内では、料理店のスタッフの方が自ら乗り込んできのこ御飯が温かい状態で提供されます。「きのこ列車」の料理は沿線の数社で担当していて、この日は、明智ゴルフ場のレストランが手掛けた料理が提供されました。松茸ご飯ということもあって、盛り付けが始まるや否や、車内には松茸のいい香りがフワ~ッと広がって、とても幸せな気持ちになってきました!

松茸の土瓶蒸し

松茸の土瓶蒸し

さらに汁物として、松茸の土瓶蒸しも温かい状態で配膳されていきます。こちらも、ふたを開けると松茸のいい香りが広がって、1両まるごと、松茸の香りに包まれているかのよう。車窓にはのどかな里山と稲刈りが進む田園地帯が広がり、ニッポンの秋が1つの列車にギュッと凝縮されています。明知鉄道のグルメ食堂車のなかでも、「きのこ列車」の人気がとくに高いのも十分に納得です。

明知鉄道・明智駅

明知鉄道・明智駅

恵那駅を12時25分に発車した急行「大正ロマン号」は13時19分、終着の明智駅に到着しました。なお、各駅に停まる明知鉄道の普通列車は、約50分で全線を走破。これに対し「大正ロマン号」は所要時間54分。急行なのに「急いで行かない」のが特徴です。もちろんこれは、「グルメ食堂車」を連結しているため、途中でゆっくりと走っているから。車窓からわずかに見える岩村の古い街並みを見てもらうため、徐行運転も行われます。

明知鉄道アケチ10形気動車・急行「大正ロマン号」、明知鉄道明知線・東野~飯沼間

明知鉄道アケチ10形気動車・急行「大正ロマン号」、明知鉄道明知線・東野~飯沼間

明知鉄道岩村駅近くの古い街並みは、数年前、朝のドラマでのロケ地として話題になりました。また、終着・明智の近くには「日本大正村」があります。さらに明智駅の構内では、気動車運転体験やSL乗車体験・運転体験をはじめ、鉄道の魅力を伝える取り組みも、積極的に行われています。鉄道開業150年のこの秋は、ニッポンの秋と鉄道の魅力を、満喫する旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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