あけの語りびと

『青春アミーゴ』作曲者のShusuiが、山下達郎にもらった「きっかけの言葉」

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

『青春アミーゴ』作曲者のShusuiが、山下達郎にもらった「きっかけの言葉」

Shusuiさん

12月の時期になると、必ず聴こえてくるのが山下達郎さんの『クリスマス・イブ』。今回ご紹介するのは、音楽プロデューサーだった父親に連れられて、子どものころから達郎さんのコンサートやレコーディングスタジオに行っていたという、ちょっと羨ましい環境で育った方のお話です。

幼稚園のころは達郎さんのコンサートが退屈で、夜8時が近づくと大好きなテレビ番組が見たくて我慢できなかったそうです。「ドリフが始まっちゃうよ、テレビ付けてよ。ドリフ見たいよ!」と、楽屋で駄々をこねてスタッフを困らせたというエピソードもお持ちです。

現在は作詞・作曲家であり、音楽プロデューサーのShusuiさん(46歳)。ポップユニット「canna(カンナ)」でも活動されています。とても明るくフレンドリーな方ですが、実は「網膜色素変性症」という視覚障害を持っています。

「僕は生まれつき目が悪いから、これが当たり前だと思って育ちました。不自由はありますけれど、別に何も意識せず生きてきたんですよ」

『青春アミーゴ』作曲者のShusuiが、山下達郎にもらった「きっかけの言葉」

「育音触れ合いライブ」でのShusuiさん

6歳から両親の勧めでクラシックピアノを習い始めますが、ピアノ教師がスパルタだったことで、音楽が嫌いになってしまいます。紫外線から目を守るために大きめのサングラスをしていますが、小学校に入るとそれが目立ち、だんだんいじめを受けるようになります。

「中学のときがひどかったんですよ。上履きを隠されたり、画鋲を入れられたりして、不登校にもなりましたね。そんな僕に家庭教師の先生が『聴いてみる?』と勧めてくれたのが、ビートルズの『ヘルプ!』だったのです。雷が落ちたような衝撃でした」

高校に入学すると、「一緒に音楽をやろうよ」と誘ってきた同級生から、「俺はジョン・レノンだよ。ギターと歌。周ちゃんはポールでしょ? だからベースをやってよ」と言われました。お茶の水の楽器店でいちばん安いベースギターとアンプを買い、バンド活動に明け暮れる日々を送ります。

高校を卒業後、ベースギターを持ってイギリスへ留学。「将来はツアーミュージシャンか、スタジオミュージシャンで食べていきたい」と考えていた19歳のころ、父親が勉強のためにと、山下達郎さんのレコーディングに連れていってくれました。そこで、思わぬことが起こります。

『青春アミーゴ』作曲者のShusuiが、山下達郎にもらった「きっかけの言葉」

「ホワイトハンドコーラスNIPPON」の皆さん

顔馴染みの山下達郎さんから「周ちゃんは将来、何になりたいの?」と聞かれ、迷いもなく「ベーシストになろうと思っています!」と答えます。すると、「ベーシストで食えると思う? 食えないよ。だから曲を書きなよ」と言われたそうです。

それまで1曲もつくったことがなかったShusuiさんでしたが、達郎さんの一言がきっかけで、曲づくりを始めます。

ポップユニット「canna(カンナ)」を結成した谷中たかしさんと、「とにかく100曲を目指して曲をつくろう。99曲が駄作と言われても、きっと1曲は認められるはず……」と考え、がむしゃらに曲をつくります。すると、人気アイドルの新曲コンペで2人の楽曲が勝ち残っていきました。

KinKi Kids、SMAP、嵐、AKB、乃木坂などに新曲を提供し、Shusuiさんの代表曲となったのが『青春アミーゴ』(修二と彰)です。

『青春アミーゴ』作曲者のShusuiが、山下達郎にもらった「きっかけの言葉」

「ホワイトハンドコーラスNIPPON」の子どもたちとShusuiさん(左は曽根由希江さん)

10代でバンド活動、20代でアーティスト活動。そして30代になると、新たな活動の場が見つかります。それは意外にもボランティアでした。

「以前、娘が通う幼稚園のママ友と話す機会がありまして、『育児や家事に追われると音楽をゆっくり楽しめない』と言うんですよ。軽い気持ちで、幼稚園でピアノを披露したら、子どもも大人も大喜びでめちゃくちゃウケたんです。『あれ? ライブハウスと違って、新しい世界だぞ』と思い、育児と音楽を融合したボランティア活動を思いつきました」

「育音(Iku ON)」というプロジェクトを始めたShusuiさんは、最初に物語を音楽と一緒に楽しめるCD付きの絵本を制作しました。それが徐々に広まって、障害者施設や児童養護施設からも依頼を受けるようになります。弾き語りや紙芝居をしたり、ゲームをしたり……そんな「育音(Iku ON)触れ合いライブ」を続けてきました。

『青春アミーゴ』作曲者のShusuiが、山下達郎にもらった「きっかけの言葉」

体全体で音楽を表現する「ホワイトハンドコーラスNIPPON」の子どもたち

去年(2021年)、「育音」活動をするなかで「ホワイトハンドコーラスNIPPON」という、障害の有無にかかわらず子どもたちが垣根を超えて歌を楽しむ合唱隊の存在を知ります。

手の表現で歌う「サイン隊」と、合唱で歌う「声隊」で結成されていて、子どもたちが体全体で音楽を楽しんでいる姿に、Shusuiさんは「感動とともに新鮮な気持ちになった」と言います。

「オリジナル曲がないのでつくって欲しい」と子どもたちにお願いされ、音楽仲間のシンガーソングライター・曽根由希江さんに詞を依頼します。こうして完成したのが『ドリームランド』という曲です。

「僕は障害者として生まれてきましたが、音楽と出会ったことで、多くの経験をすることができました。達郎さんと出会えたのも音楽のおかげです。これからも音楽家として、音楽で恩返しをしていきたいですね」

子どもたちの笑顔が溢れるドリームランド。それはShusuiさんが目指す、まさに夢の国なのかも知れません。

『青春アミーゴ』作曲者のShusuiが、山下達郎にもらった「きっかけの言葉」

2021年 光文社『ちゅらうみのサンゴ』

■『ちゅらうみのサンゴ』(「育音(Iku ON)SongSプロジェクト」の最新絵本)

出版:光文社
原案:Shusui/絵:佐々木一聡/文:RUI
(3姉妹と一匹の猫が美しい海を蘇らせるために冒険の旅へ出かける物語。新曲4曲と読み聞かせナレーション音源付き)

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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