「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
「手前味噌」という言葉があります。いまは自慢の意味で使われますが、その昔、味噌は自家製で自分が造った味噌を互いに自慢し合ったことからできた言葉と、辞書にあります。いまも味噌蔵が健在の地域にお住まいの皆さんにとって、その味噌は、地元の味として誇らしく感じることでしょう。2022年秋、仙台の名物駅弁「網焼き牛たん弁当」に登場した味噌味にも、宮城・岩出山の歴史ある味噌が使われています。
古川駅を通過した東北新幹線「はやぶさ」号が、時速320kmで宮城から岩手へ向かって北上していきます。全車指定席で、多くは仙台~盛岡間はノンストップで運行されている「はやぶさ」ですが、一部、仙台以北で各駅停車となる列車もあります。このため、仙台~盛岡間の途中駅に停まる「はやぶさ」に限って、自由席特急券で普通車指定席の空席を利用できる便宜が図られています。
東京から「はやぶさ」で約1時間50分の東北新幹線・古川駅は、陸羽東線との接続駅。陸羽東線は、東北本線・小牛田(こごた)と奥羽本線・新庄の間を結ぶローカル線です。沿線には鳴子温泉郷があり、とくに鳴子御殿湯、鳴子温泉駅周辺は温泉街が広がって、のんびり連泊しながら湯治気分を満喫したいエリアです。また、途中の岩出山は、かつて伊達政宗公も居城を置いて力を蓄え、仙台へと進出していった歴史あるまちです。
そんな政宗公ゆかりの岩出山の味噌と、仙台の名物駅弁「網焼き牛たん弁当」がコラボレーションして生まれたのが、「古川駅 網焼き牛たん弁当(味噌)」(1480円)です。これは鉄道開業150年を記念して、駅弁を作るこばやしとJR古川駅の社員の方が協力し、網焼き牛たん弁当を味噌味にアレンジして開発されたと言います。パッケージには、陸羽東線で巡るおすすめスポット(鳴子峡、鳴子温泉郷、有備館)の案内も印刷されています。
【おしながき】
・麦飯
・牛たん味噌焼き
・花人参煮
・味噌南蛮漬
・七味唐辛子
塩味に慣れていた「網焼き牛たん弁当」ですが、味噌も香りがよく、食欲をそそられます。大崎市の岩出山地域は、宮城有数の発酵食品の産地だったそう。その食文化を活かし、牛たんは岩出山の創業400年の老舗「麹屋 石田商店」の味噌を使用して焼き上げたと言います。また、味噌南蛮漬けにも岩出山の「よっちゃん農場」の炭焼き南蛮味噌を使用。加熱式の紐を引き抜けば、芳醇な味噌の風味が香り、宮城らしい牛たんが楽しめます。
仙台と岩出山や鳴子温泉郷をはじめとした陸羽東線沿線を、週末中心に乗り換えなしで結んでいるのが、快速「湯けむり」です。現在は茶色い2両編成の気動車で運行。これは、鉄道開業当時の客車が「110形蒸気機関車」に牽引されていたことにちなんで、快速「湯けむり」に使用される「キハ110系」に、当時のデザインをイメージしたラッピングを施したと言います。「古川駅 網焼き牛たん弁当(味噌)」の紙蓋にも、写真が使われています。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/