国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が4月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「米中の対立から一定の距離を保つべきだ」という仏マクロン大統領の発言について解説した。
フランスのマクロン大統領による台湾情勢についての発言が、ヨーロッパメディアで波紋
4月に中国を訪問し、習近平国家主席と会談したフランスのマクロン大統領は、仏経済紙「レゼコー」などのインタビューのなかで、台湾情勢に関して米中の対立から一定の距離を保つべきだと主張。この発言をめぐりヨーロッパ有力メディアが批判的に報じるなど、波紋を広げている。
飯田)ヨーロッパだけでなく、アメリカでもウォール・ストリート・ジャーナルなどがかなり批判的に報じています。日本国内でも「この発言はどうなのだ?」と言われていますが、マクロンさんは台湾の現状維持を望む考えを強調したと、訪問先であるオランダの記者会見で発言したということです。
マクロン氏「台湾の現状維持を望む考えを強調した」 ~対中結束にマイナスな発言
神保)中国が強くなっているので、台湾情勢の現状維持はそのままでは達成できないのです。気を許していると制空権・制海権を奪われ、着上陸能力を取ってしまう。そんなトレンドのなかで現状維持を行うためには、もっと頑張って台湾の防衛を強化し、アメリカと世界のコミットメントを増やすことが大事です。
飯田)現状を維持するためには。
神保)マクロン氏の言う現状維持は、「緊張緩和をしろ」と言っているように聞こえます。いまの対中結束という点においてはマイナスでしかありません。
フランスはなぜ米中対立から距離を取ることによって「戦略的自律性が生まれる」と考えるのか
神保)特にいまは、対露政策を先進7ヵ国(G7)で強調し、その教訓をメッセージとして中国に伝える必要があります。半導体を含め、ロシアにいろいろなものを売っている中国に対し、「武器を輸出してロシアを支えるようなことはしないでくれ」というメッセージを伝えながら、中国と付き合っていくことが大事だったわけです。
飯田)そうですね。
神保)今回のマクロン氏の訪中では、エアバスの巨大な取引などもあり、SNSやフランス政府のキャンペーンを見ても、「中国と仲がいいのだぞ」と強調するような映像がたくさん出ています。
飯田)ハグをしたり。
神保)「これでいいのだろうか」と思います。マクロン氏は「戦略的自律性の発揮だ」と言っているのですが、フランスはなぜ米中対立から距離を取ることによって、戦略的自律性が生まれると考えているのでしょうか。そのロジックが理解できません。
飯田)同行した欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、習近平氏とも応酬があったと伝えられていますが、対照的ですね。
神保)ヨーロッパのいまの安全も、アメリカがウクライナに対して間接支援を行い、状況を制御することで生まれているのであれば、そこに着目して対中政策を関連付けることが大事だと思います。
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