お互いの「好きなもの」を尊重するために~「喫煙所」の有用性
公開: 更新:
2023年のゴールデンウィークは、4年ぶりに行動制限がなく、最大9連休と曜日配列にも恵まれたことで、全国の観光地は多くの人で賑わった。東京から各地へ向かう新幹線は、ピーク時間帯の列車を中心に指定席は軒並み満席となり、東海道新幹線の利用者はコロナ禍前を上回った。一方、高速道路も、連休後半を中心に関越自動車道、中央自動車道で最大50km前後の渋滞を記録した。連休明けには、新型コロナウィルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行し、今後も徐々に全国の観光地は本来の姿を取り戻していくものと思われる。
GW特番で提起された「喫煙所」の有用性
ニッポン放送では、連休中のお出かけを応援する番組として、5月4日(みどりの日)の正午から特別番組「まだ間に合う!ゴールデンウィーク」(パーソナリティ・荘口彰久アナ、アシスタント・箱崎みどりアナ(ニッポン放送)、ゲスト・星裕水(トラベルライター))を放送した。この番組のなかで、興味深いやり取りがあったので採録しておきたい。
荘口:私の知り合いは、タバコをよく吸うので、レストランへ行く時も、旅をする時にはその道中や目的地で、ちゃんとタバコを吸える場所があるかどうか、調べてから出かけると言っていました。それというのも、行き当たりばったりで出かけてしまうと、いざ出かけてから、(一服する場所がないと気づいて)アッ!となってしまい、それがストレスになってしまうというんです。昔は飛行機や列車の座席にも灰皿が付いていたものですが、今はすっかり「全席禁煙」ですよね。
星:乗り物関係は、すっかり「全席禁煙」が基本となりました。ただ、東海道・山陽新幹線には、喫煙ルームが設置されている車両(16両編成の場合、普通車3・15号車、グリーン車10号車)もあります。とくにインターネット予約では、シートマップを見ながら、喫煙ルームに近い座席を選ぶことが出来るようになっています。みどりの窓口等でも喫煙ルームに近い席の希望を伝えれば、発券してもらえます。
荘口:鉄道駅もそうですし、高速道路のサービスエリア・パーキングエリア、そして道の駅にも、今はきれいな喫煙所が増えていますね。ルールを守った喫煙をしてもらえれば、その分、お父さんもイライラしなくて済むんです。
箱崎:お出かけする時は、どうしても子供の都合で動いてしまいがちですが、大人のリフレッシュも大切なことですね!
星さん:最近は、鉄道駅、道の駅、サービスエリア・パーキングエリア、空港はもちろん、テーマパークなどでも分煙されています。お出かけになる前に施設のホームページ等で、どこに喫煙所があるのかを確認されてから、お出かけになると安心かなと思います。
(ニッポン放送・5/4放送「まだ間に合う!ゴールデンウィーク」より採録)
30年ほど前までは、東京駅や上野駅から出ていく在来線の中距離列車の車両にも、窓の下に金属製の灰皿があった。東海道本線では、東京~平塚間が禁煙区間とされ、平塚を過ぎると車内に煙が立ち込めたものである。しかし、昨今の健康意識の高まりなどが相まって、公共の場は禁煙、愛煙家の皆さんは喫煙所で・・・という「分煙」が当たり前の世の中となった。さらに令和2(2020)年4月の改正健康増進法の全面施行により、鉄道以外の施設でも原則屋内禁煙となった。
下北沢駅前に登場した「投票型喫煙所」とは?
そのなかで、より大きな役割を果たすと考えられるのが、公共の場における「喫煙所」の存在だ。東京・下北沢駅前には、この4月、一風変わった喫煙所が登場した。その名も「投票型喫煙所」だ。例えば、「下北沢といえば?」という問いに対して、A:カレー、B:古着という選択肢がある。それぞれスケルトンタイプの灰皿となっており、自分が思う、選択肢へ吸殻を入れていくという仕組みだ。
「ASK THE TOBACCO」と呼ばれる、この投票型喫煙所を設置しているのは、全国で無料の公衆喫煙所の運営などを行っている株式会社コソド。2022年5月、ポイ捨てや受動喫煙を減らすため、投票型喫煙所を渋谷のセンター街に設置(実証実験を兼ねていたため、現在は一時撤去)したのを皮切りに、横浜駅西口、長野県松本市(一時撤去)、下北沢駅前、竹橋駅近隣のコインパーキングなどに設置しているという。元々は、イギリス・ロンドンで投票型灰皿が企画展開され、ごみの削減効果があったという情報をもとに、日本仕様にしたものだそうだ。利用者からは「やらされているというより、参加している感じが楽しい」「ついつい友達と投票内容を話しながらゴミ捨てしている」といった声が寄せられており、実際、渋谷では9割、横浜では8割のタバコのポイ捨ての削減効果があったという。
たばこを吸う自由もあれば、吸わない自由もある。お互いの自由を守るためには、特に喫煙者が非喫煙者に受動喫煙させないという、強く自らを律する心が求められる。その思いやりの心を促すためにも、公共の場における喫煙所の存在は、大いに意義のあるものではなかろうか。喫煙者も非喫煙者もお互いに好きなものを尊重できる、おおらかで自由な社会をこれからも守りたい。