老舗の技が光る、一ノ関駅の“あぶり焼き”駅弁とは?
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「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
東北新幹線「やまびこ」と、一部の「はやぶさ」が停まる一ノ関駅は、一関温泉郷をはじめ、平泉、三陸の玄関口です。一関温泉郷には、天候に恵まれると、美しい景色が楽しめる温泉もあります。そんな一ノ関駅で販売されている牛肉駅弁を、久しぶりにいただきました。
昭和57(1982)年の東北新幹線開業時から活躍する「やまびこ」号。新幹線開業以前は、上野~盛岡間で運行されていた特急列車の愛称でした。昔の時刻表をめくってみると、東北特急では仙台発着の「ひばり」の本数が多く、盛岡発着の「やまびこ」はサポート役。新幹線開業で主役に躍り出ましたが、時代は巡っていまは再び、最速列車「はやぶさ」のサポート役です。でも、一ノ関をはじめ仙台~盛岡間の利用者には欠かせない存在です。
かつて、梅雨の晴れ間に、一ノ関駅から須川温泉を訪ねたことがあります。岩手、秋田、宮城の3県にまたがる栗駒山にあって、標高は1126m。毎分6000リットルとも云われる豊富な湯量に恵まれた温泉で、岩手側に須川高原温泉、秋田側に栗駒山荘があります。天候に恵まれると、岩手・秋田県境からは正面に出羽富士・鳥海山を望めます。今年(2023年)は6/17~10/31の間、一関駅前~須川温泉間の路線バス(1日2往復)が運行されます。
市の名前は「一関」、駅の名前は「一ノ関」と、「ノ」が入ることでおなじみのJR一ノ関駅。他にも、例えば、神戸の地名・私鉄各線は「三宮」、JRの駅名は「三ノ宮」となっており、国鉄の歴史を感じさせてくれる駅名です。一ノ関駅には、岩手県で唯一の駅弁マークが入った駅弁屋さん・斎藤松月堂があります。久しぶりに、「いわてあぶり焼き和牛弁当」(1200円)をいただきました。いまは、一ノ関駅はもちろん、盛岡駅での販売もあります。
【おしながき】
・白飯(岩手県産ひとめぼれ)
・岩手県産黒毛和牛のあぶり焼き ししとう 白ごま
・煮物(玉こんにゃく、椎茸、人参)
・ガリ
サッと湯通しされ、特製のたれにまぶされた岩手県産黒毛和牛が、あぶり焼きにされて、岩手県産ひとめぼれのご飯の上に、ぎっしりと載った「いわてあぶり焼き和牛弁当」。脂を程よく落とし、肉の旨味は活かした状態で焼き上げられている点に老舗の技を感じます。「金格ハンバーグと牛あぶり焼き弁当」や5月末にも限定販売された「東北美少女BOX」などにも入っている和牛あぶり焼きですが、時にはたっぷりといただくのもいいですね。
東北本線の普通列車が、一面に広がる田んぼを横に見ながら、軽快に走ります。今年も東北地方の田植えが進んで、水が張られた田んぼが多くなってきました。「駅弁」で最も大事なお米が育まれていきます。桜をはじめ、季節の進み方が早く感じる2023年ですが、軽トラなどで水田を見回る農家さんの姿に、この夏も天候に恵まれて、実りの秋を迎えて欲しいと願うばかりです。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/