新駅も生まれた「田沢湖線」でいただく駅弁といえば?

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

いわて黒豚とんかつ弁当

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岩手・盛岡市内の田沢湖線に2023年春、新しい駅が開業しました。普通列車だけが停まる無人駅ですが、駅前には巨大な商業施設がそびえていて、地元の皆さんの利用が見込まれています。クルマ社会と言われて久しい日本の地方都市ですが、新駅の開業や交通系ICカードの利用エリア拡大など、ローカル線を“活かす”取り組みもあります。

E6系新幹線電車「こまち」、田沢湖線・小岩井~雫石間

E6系新幹線電車「こまち」、田沢湖線・小岩井~雫石間

盛岡まで、東北新幹線を最高時速320kmで駆け抜けてきた「こまち」号が、田沢湖線の田園風景のなかをゆっくりと駆け抜けていきます。田沢湖線の前身となった岩手県側の橋場線(はしばせん)は、昨年(2022年)、開業100年を迎えました。一方、秋田県側の前身・生保内線(おぼないせん)は今年(2023年)が開業100年となります。共に最初は軽便鉄道法によって作られた線路ですが、いまは新幹線車両が走る路線となりました。

701系電車・普通列車、田沢湖線・盛岡~前潟間

701系電車・普通列車、田沢湖線・盛岡~前潟間

概ね毎時1本が走る「こまち」の合間をぬって、田沢湖線にも普通列車が走っています。全線を直通する列車は、1日わずか3往復。日中は2~3時間空く時間帯もありますが、夕方の盛岡~雫石間には、概ね毎時1本の普通列車が運行されています。通勤車両と同じロングシートの車両が多い東北のローカル線にあって、田沢湖線の車両にはボックスシートもあり、タイミングが合えば、ちょっとした旅気分が楽しめるかも知れません。

前潟駅

前潟駅

この田沢湖線・盛岡~大釜間には、今年(2023年)春、新たな駅・前潟(まえがた)駅が開業しました。盛岡駅からは4分、普通列車のみが停まります。待合室と階段、スロープだけの駅舎に4両対応ホームのコンパクトな無人駅ですが、5月27日から、盛岡周辺(東北本線・北上~盛岡間、釜石線・花巻~新花巻間、田沢湖線・盛岡~雫石間)も、「Suica」が利用できるようになったことで、前潟駅にも簡易改札機が設けられました。

前潟駅前

前潟駅前

前潟駅前には巨大なイオンモールがあります。2000年代以降、地元の皆さんがイオンモール、行政と共に粘り強く運動に取り組み、開業にこぎつけました。今回は週末の夕方に訪れましたが、商業施設前の国道などは、駐車場に入る車で渋滞が発生していました。盛岡駅からは、週末を中心に無料シャトルバスも運行されているなかでの新しい鉄道駅。車社会に慣れた皆さんにも、鉄道の有用性を感じてもらえる工夫に期待したいものです。

いわて黒豚とんかつ弁当

いわて黒豚とんかつ弁当

東北新幹線と東北本線、IGRいわて銀河鉄道と花輪線、田沢湖線、山田線の各列車が発着する盛岡駅ですが、残念ながらいまは盛岡市を拠点に駅弁を製造する業者はなく、一ノ関、八戸、新青森、秋田の各駅を拠点とする業者が製造した駅弁が並んでいます。そのなかの1つ、「いわて黒豚とんかつ弁当」(1150円)は、秋田駅弁・関根屋の製造。秋田新幹線(田沢湖線)を通じてつながる、岩手と秋田のお弁当として作られています。

いわて黒豚とんかつ弁当

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【おしながき】
・白飯(秋田県産あきたこまち) 梅干し ごま
・龍泉洞黒豚のとんかつ ソース 辛子
・ひじき煮 人参 油揚げ
・ポテトサラダ
・玉子焼き
・大根の漬物

いわて黒豚とんかつ弁当

いわて黒豚とんかつ弁当

岩手と秋田をつなぐ駅弁ということで、秋田からはあきたこまちの白飯、岩手からは龍泉洞黒豚のとんかつがメインを張っています。とんかつの豚肉は冷めてもやわらかく、お好みで追いソースもできます。岩手県岩泉町の養豚農家さんが生産している「龍泉洞黒豚」のエピソードが記されたしおりを見ながらいただくと、より一層、美味しさが増すことでしょう。秋田で生産する駅弁であっても、しっかり岩手に寄り添って作っているのがいいですね。

E6系新幹線電車「こまち」、田沢湖線・前潟~大釜間

E6系新幹線電車「こまち」、田沢湖線・前潟~大釜間

田沢湖線に入った「こまち」が、水が張られた田んぼのなかを秋田へ向かいます。盛岡、青森と共に秋田エリア(奥羽本線・和田~追分間、羽越本線・新屋~秋田間、男鹿線・追分~男鹿間)も、5月27日からSuicaが使えるようになりました。各県エリアをまたいだ利用はできませんが、新幹線などを挟めば、県庁所在地周辺へはスマホ1つでサクサク移動することも可能。少し時代の歯車が回った感じがする2023年・北東北の初夏です。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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