青森の人気駅弁「海鮮小わっぱ」の製造に密着してみた!
公開: 更新:
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
東京よりちょっぴり季節遅めの北東北。5~6月にかけての初夏、梅雨入り前の青森は、新緑がまぶしくて、何度訪れても、気持ちがリフレッシュされ、新たな発見があるものです。折しも、津軽地方では観光キャンペーンも開催中。5月27日からは、奥羽本線(弘前~青森間)で「Suica」が使えるようになります。そんな青森は海鮮食材の宝庫。いまは数ある海鮮駅弁のなかでも、コンパクトにまとまった駅弁が人気を集めています。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第42弾・幸福の寿し本舗編(第1回/全6回)
新青森駅を発車した東北新幹線「はやぶさ」号が、青森市街と陸奥湾をあとに、東京へ向けてぐんぐんスピードを上げていきます。乗客と共にいっぱい乗せているのは、青森の旅の思い出か。あるいは、これから向かう仙台・東京への夢や希望か。新幹線は人の数だけ、さまざまな思いを運ぶ列車です。それぞれの思いを持った人が、動き出した列車と共に包みを開け、束の間の幸福な気持ちに包んでくれるのが……そう、「駅弁」です。
平成22(2010)年の東北新幹線全線開業以降、新青森駅の駅弁を手掛けているのが、「幸福の寿し本舗」です。幸福の寿し本舗は、青森ではおなじみの製パン業者・工藤パンの子会社で、製造工場は工藤パン第二工場と同じ敷地内にあります。場所は津軽線の新油川信号場沿いにあり、工場からも本州と北海道を結ぶ貨物列車が望めます。駅弁膝栗毛恒例「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第42弾は、幸福の寿し本舗に伺いました。
幸福の寿し本舗が製造する駅弁のなかで、随一の人気を誇るのが、「海鮮小わっぱ」(1200円)です。もともとは、日本レストランエンタプライズ(NRE、当時、現・JR東日本クロスステーション)が製造していた駅弁の1つで、幸福の寿し本舗がそのレシピを受け継いで製造を行っており、平成27(2015)年には、「駅弁味の陣」で3位に入賞を果たしました。新青森駅の駅弁売場をのぞいてみると、ひと足早く“完売”になっていることも多いですね。
今回は、工場のなかで「海鮮小わっぱ」の盛り付けを見せていただきました。幸福の寿し本舗が「海鮮小わっぱ」を手掛けるようになって、独自の進化を遂げたのが「お米」です。幸福の寿し本舗では、平成30(2018)年春から、全ての駅弁で青森県産米「青天の霹靂」を使用しています。機械によって適量に調整された白飯は、少し小ぶりのわっぱ型容器に1つ1つ手作業で詰められていきます。
詰められた白飯の上にはまず、うに・かに・いくらが手際よく載せられていきます。続いて、わかめ・茎わかめが載せられ、最後につぶ貝が真ん中にちょこんと載って、あっという間に盛り付けは完了。
手際のよさはもちろん、盛り付けられたときの彩りのよさは、「海鮮小わっぱ」ならでは。長年、日本食堂以来、さまざまな駅弁を開発してきたNRE(当時)の伝統と、大量生産のノウハウがある幸福の寿し本舗、それぞれの良さが活きていると感じました。
盛り付けが終わると、透明のふたがされ、お手拭き、醤油、割り箸が挿入されていきます。そして、青森県産米「青天の霹靂」のロゴマークが入ったスリーブ式の包装が施されて、「海鮮小わっぱ」の完成です。これらは、新青森駅などの駅弁売場に運ばれていく一方、一部の弁当は“新幹線で旅”をして、東京駅の「駅弁屋 祭 グランスタ東京」に並びます。“小わっぱ”の程よいボリューム感は、首都圏の旅行者にも人気です。
【おしながき】
・白飯(青森県産・青天の霹靂使用)
・蒸しうに
・かに
・いくら
・つぶ貝
・わかめ
・茎わかめ
うに・いくら・かに・わかめのバランスいい色彩がまぶしく、磯の香りがふんわりと感じられ、青森の青い海が思い浮かびます。“小わっぱ”だけに、ご飯は適量で、海鮮食材が余ってしまいそうなくらいのたっぷり感。青森の飲食店や温泉宿の食事は海鮮が多いですが、海鮮料理をいっぱいいただいた後でも、これならきっと大丈夫そう。新幹線で青森の旅の余韻に浸りながら、あるいは観光列車で青森の海を眺めていただきたいものです。
現在、青森県津軽地方では、6月30日までの予定で、観光キャンペーン「ツガルツナガル」が行われています。合わせて6月1日~15日には、乗車日21日前までの購入で、「はやぶさ」号指定席が最大50%割引となる「新幹線eチケット」(チケットレスサービス)も設定されています。新幹線でお得にビュンと青森へ行ったら、のんびりローカル列車へ。駅弁が似合う車窓がいっぱいある、青森の鉄道旅です。
この記事の画像(全11枚)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/