二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強が9月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢の今後について解説した。
ロシアへの経済制裁だけでは戦争は止められない ~ウクライナへの武器供与によって反転攻勢が進んで交渉につながる
飯田)ロシアによるウクライナ侵略で経済制裁が行われていますが、どうなのでしょうか?
合六)確実にロシア経済に対するダメージはあるだろうけれど、それ以上にロシア国民が耐えられているという現実もあると思います。
飯田)実際には。
合六)そもそも制裁の目的は継戦能力を維持させないためであり、必ずしもロシア国民の生活を悪くするためではないと言われています。ですから、目的と照らし合わせて制裁がうまくいっているかどうかを評価する必要があるのですが、実際、制裁によって戦争を止めることはできていません。
飯田)続いています。
合六)歴史的に見ても、経済的手段だけで戦争を止められた事例はほとんどありません。そう考えると、経済制裁以外のこと。既に行われていますが、武器供与でウクライナを支援し、できるだけ早く反転攻勢が進んで「交渉につなげることができれば」という考え方なのだと思います。
ウクライナ、ロシアそれぞれが持つクリミアの重要性
飯田)反転攻勢で言うと、クリミア半島のセバストポリ港に対し、ウクライナ側が攻撃を仕掛けたと言われています。一部報道では、揚陸艦と潜水艦を修理不能なほど損傷させたということです。
合六)ウクライナとしては、現段階ではクリミアを含む領土奪還を最終的な目標にしているわけです。
飯田)ウクライナとしては。
合六)ただ、いますぐにクリミアへ突っ込んで行き、領土を奪還するのは難しいと思いますし、南部での反転攻勢を強めていますけれど、そもそもクリミア手前のアゾフ海まで今年中に到達するかどうかも厳しいと言われています。
飯田)アゾフ海まで行けるかどうかも。
合六)だからと言って、クリミアに対して何もしないわけにはいかないのです。クリミアは、ロシア軍がこの戦争を続ける上での補給拠点にもなっていますし、さらに言うと、ロシア海軍がウクライナ本土にめがけて攻撃する拠点にもなるのです。
飯田)クリミアが。
合六)逆にウクライナ側からすると、ロシアがここを持っていても意味がない、むしろ「安全ではないのだ」と常に示し続ける必要があります。ですから、例えば去年(2022年)の8月から単発的ではあるものの、クリミアに対して攻撃している。特に空軍基地に対して攻撃を仕掛けているのだと思います。
アメリカの長距離ミサイル「ATACMS」やドイツの「タウルス」の供与が反転攻勢をサポートする上でも必要に
合六)今回も修理中の船を狙って、ロシアの戦力にダメージを与えています。今回使われたのは、イギリス製の巡航ミサイル「ストームシャドー」ではないかと言われています。
飯田)イギリス製の巡航ミサイル。
合六)これは西側から供与された、射程が比較的長いミサイルなのですが、いまちょうど議論が再浮上しているのが、アメリカがこれまで供与を拒み続けてきた「地対地陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」という長射程ミサイルです。
飯田)地対地陸軍戦術ミサイルシステム。
合六)アメリカとしては、これがロシア領内に使われると「戦争がエスカレーションするのではないか」という懸念から、供与を拒んできた経緯があるのですが、ここ数日の報道によると(供与)決定が近いのではないかとも言われています。
飯田)供与するかも知れない。
合六)もし供与されるとなると、今度はドイツが同じようなミサイルの「タウルス」を供与するかも知れない。政権のなかでも現在、議論が行われているようです。まさに戦車のときのように、「アメリカが供与すればドイツも供与する」ということになる可能性もあります。
飯田)アメリカが供与すれば。
合六)そうなると「エスカレーションの懸念とは何だったのか」という話になりますが、ストームシャドーの有効性は確実に確認されているので、ATACMSやタウルスなどのミサイル供与は、来年(2024年)の反転攻勢をサポートする上でも必要になってくるのだと思います。
2024年に向けて、「西側の武器供与がどこまで進むか」が今後の注目点
飯田)結局、新しい兵器の供与を決定しても、ものが送られるだけでは意味がないのですか?
合六)やはり訓練も必要です。特に戦闘機については、いまから訓練が行われるというような段階であり、おそらく来年の春に投入されることになると思います。
飯田)戦闘機は。
合六)ウクライナ側の反転攻勢が始まって、まもなく3ヵ月が経過します。動きが遅いのではないかという批判もありますが、前提として、西側の戦車などを供与するタイミングが遅かったということもあります。
飯田)供与されるのが遅かった。
合六)決定も遅かったことを考えると、来年を睨んで、いまのうちから決定しなければいけません。来年がどうなるかは、いまに掛かっています。その意味では、いま行っている反転攻勢がどこまで進むのかという問題と同時に、来年に向けて西側の供与がどこまで進むかが今後の注目点になると思います。
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