アメリカ、AI管理へ大統領令 一方で「規制ありき」ではない日本

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国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が10月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米バイデン大統領が出したAI管理に向けた大統領令について解説した。

アメリカ、AI管理へ大統領令 一方で「規制ありき」ではない日本

※画像はイメージです

アメリカ、AI管理へ大統領令

飯田)アメリカでAI管理へ向け、大統領令が出されました。国家や経済の安全保障、公衆衛生に関わる高度AIの開発企業に対して、安全試験結果の提出を義務付ける。安全保障とイノベーションのバッティングというところですか?

神保)内容が非常に包括的です。これで大統領令を出せてしまうというアメリカの規制措置の凄さを感じました。もう1つは、ヨーロッパが先駆けていますが、AIと人権の問題は生物学で言うところのクローン技術、クローン人間の規制という生命倫理に近いような形の倫理規定です。

飯田)そういう認識なのですね。

EUでは子どもへ有害な影響を及ぼした場合、数千億円の課徴金が課せられる ~AIのルールづくりの主導権を取ろうとしているアメリカ

神保)EUでは、例えばAIの誘導によって子どもに有害な影響を与えた場合、最も重いものだと数千億円レベルの課徴金を課せられます。

飯田)数千億円。

神保)アメリカでも安全性、透明性、医療の安全などに関する規定を行う。その一方で、AIをより産業に活用していこうという促進措置が取られていますが、アクセルとブレーキで言うと、かなりブレーキを強く踏んでいるような状態です。それだけAIのルールづくりに関して、主導権を取ろうとしているのではないでしょうか。

規制を強くすれば開発が縛られ、倫理的なハードルの低い国が有利になる可能性も

飯田)各国その部分でイニシアチブを取ることが安全保障に直接つながってくる。そうなると、倫理的なものを乗り越えるハードルの低い国が有利になってしまうところもありますか?

神保)それも十分考えられます。規制を強くすればするほど、自らの開発は縛られますが、規制のない国の開発は野放図に進んでいくわけですから。また、「AI技術の進んだ軍隊と戦場で戦った場合、どうなるのか?」なども真剣に考えないといけません。

飯田)そうですよね。

神保)今回の指針でも国防に関して、相手のAI利用に対する研究は十分に盛り込まれていますので、軍事に関してはかなり警戒が強いと思います。ただし、社会とAIとの関係においては、「規制を厳しくしていこう」という方向です。

イノベーティブなところは伸ばし、「規制ありき」ではない日本

神保)その点、日本は「AI学習天国」と言われています。日本はこれまで、さまざまな規制を掛けすぎて産業改革やイノベーションが遅れたという認識が強く、「最初からAIを規制するのはおかしいのではないか」という議論があります。岸田総理も「きちんとルールをつくらなければならない」と言っていますが、「一歩遅れて少し状況を見ようかな」というのが、いまの日本の方針のような気がします。

飯田)確かに「次のイノベーションかも知れない」と言われて、みんながChatGPTを使っていますね。

神保)学習用のソフトウェア開発は一歩遅れている状態です。社会利用のソフトウェア活用も含めて、まずはイノベーティブなところを伸ばし、そのあと規制を考えていこうと。「規制ありきではない」というのが日本の世界的な特徴かも知れません。

飯田)昔であれば欧米が規制せず、積極的に進めている感じがしましたが。

神保)ドローンのときは「危ないから飛ばすな」という感じだったではないですか。しかし、AIは意外とそうではない。そこに私は可能性を感じています。ただし人道上、人権の問題は間違いなく出てくるので、その辺りをどう規制していくのかが議論の焦点になると思います。

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