岸田総理は「ばら撒きが適切ではない」という国民の目線を受け止めるべき

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国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が10月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理の「防衛増税と所得減税は矛盾しない」という発言について解説した。

岸田総理は「ばら撒きが適切ではない」という国民の目線を受け止めるべき

衆院予算委で答弁のため挙手する岸田文雄首相=2023年10月27日午前、衆院第1委員室 写真提供:産経新聞社

岸田総理「防衛増税と所得減税は矛盾しない」

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岸田総理大臣)防衛力の強化と経済を来年につなげていく好循環を完成させる。こうした経済政策と防衛力の強化はそれぞれ重要な課題であり、賃金・物価等に最大限配慮した上で実施等の時期を決めるなど、この両者は矛盾するものではない。

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飯田)日本の防衛費に関してですが、岸田総理は一方で、所得税減税を行おうとしています。「2つは矛盾しない」と昨日(10月30日)の予算委員会で説明しました。「物価・賃金に配慮しながら実施の時期を決める」としていますが、ここがリンクするのはどうなのでしょうか?

65%が「減税を素直に喜べない」 ~「減税案が一時的で選挙対策でしかない」ということを見抜いている国民

神保)評判が悪いですよね。週明けの日経の世論調査によると、65%が「減税を素直に喜べない」「適切でない」という意見のようです。「減税はいいことではないか」という価値観からすると信じがたい世論ですが、国民は「減税案が一時的であり選挙対策でしかない」と見抜いているわけです。

防衛に関する安全の問題は国民が等しく享受する問題であるから、安定的で広く公平な負担が望ましい

神保)一方で、防衛力強化と異次元の少子化対策に関し、安定財源をどうすればいいのかという問題を散々議論してきた。私自身も財政審などで、防衛に関する安全については国民が等しく享受する問題であるから、安定的で広く公平な負担が望ましいという議論をしたばかりです。

飯田)そうですよね。

神保)当然「国債で対応できるではないか」という議論の人たちからは厳しく批判されたりもしました。しかし、この5年間だけでなく、長期的な問題です。安定的で広く負担することが望ましいという方向について、多くの国民がしぶしぶでも「そろそろ覚悟を固めるべきか」という時期に、「税収が増えたから還元する」というのは「何を言っているのか」という状況のように思います。

65%がばら撒きに対して「適切ではない」という国民の目線を総理も受け止めるべき

飯田)国民全体の安全保障に対する「他人事ではない。自分ごととして考えなければ」という危機感は、戦後70~80年にして初めてに近いのではないかと思います。空気がかなりウクライナ戦争から変わった気がします。

神保)しかもコロナ禍の給付金はまさにレスキューであり、厳しい状況を乗り切るためのものでした。でも、景気対策や将来への投資をするのであれば、7万円などの還元よりも、「将来の投資に使えるような形で税金を使って欲しい」というのが国民の発想ではないかと思います。これは国民の態度としては見事だと思っていて、65%がばら撒きに対して「適切ではない」と言っているわけです。国民の目線を総理もしっかり受け止めるべきではないかと思います。

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